本間宗究「ちきゅうブッタ斬り」(36)
- 2013年 1月 21日
- 評論・紹介・意見
- ハイパーインフレ安倍政権日銀本間宗究
日銀法の改正
今回の選挙で大勝した自民党は、安倍総裁を中心にして「日銀法の改正」を行おうとしているようだが、この目的としては、「日銀に対して、さらなる金融緩和を要請するため」という点が指摘されているようである。つまり、「日本の失われた20年」という言葉のとおりに、「バブル崩壊以降、日本経済が成長しなかったのは、日銀の金融政策に問題がある」という理解のもとに、「法律を改正して、日銀が更なる金融緩和を行えば、問題はすべて解決する」とも考えられているのである。
しかし、「過去20年間」に起きたことは、「財政政策」と「金融政策」の全てを行使しながらも、「日本経済が立ち直ることはなかった」という状況だったのである。そして、この理由としては、「ほとんどの資金が国債に流れ、民間部門はゼロ金利と円高により、窮地に陥った」という点が指摘できるのだが、これから、自民党が行おうとしていることは、「典型的なインフレ政策」とも言え、今後は、反対に、「前代未聞の規模で、大インフレが起きる可能性」が高くなっているのである。
つまり、「約130年前」に、歴史上、初めて創設された「中央銀行」である「日本銀行」の歴史を辿ると、実は、「赤字国債の発行」そのものが「法律違反の状態」だったのである。具体的には、「1965年」に、初めて「特例公債法案」が成立し、「本来は違法である赤字国債の発行が認められた」という状況だったのだが、今後は、「更なる法律改正」により、より一層の「無法状態」へと突入していくことが想定されるのである。
別の言葉では、「中央銀行を創設して、国家の金融政策を管理する」という行為自体が、実は、「100年ほどの歴史しか持たない、人類の偉大な実験だった」という可能性のことである。しかも、「1971年のニクソンショック」以降は、「市場による信用創造」が大量に行われ、結果として、「メガバンクに資金が集中し、世界の金融市場がコントロールされた」というような異常事態にもなっているのである。
このように、現在の自民党が目論んでいることは、もともと違法な手段である「赤字国債の発行」に加えて、名目上は合法的な「建設国債」を発行し、「実体経済を成長させる」ということである。しかし、この時の「盲点」としては、すでに大量発行された「赤字国債」に関して「信用失墜による価格の暴落」が起きることである。そして、この時には、今まで隠されてきた「さまざまな問題」が露呈するものと思われるが、このことを無理やり実行させるのが、「安倍首相の役割」とも言えるようである。(2012.12.25)
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衆議院選挙が意味するもの
12月16日の衆議院選挙は「自民党の大勝」という結果に終わったが、この点については、マスコミの報道のとおりに、「必ずしも民意を反映するものではない」とも言えるようである。つまり、「低い投票率」により「組織票を持っている自民党や公明党に有利に働いた」ということや、「第三局の乱立」により「浮動票が、予想よりも効果を発揮しなかった」という点が指摘されているのだが、このことは、「国民が政治に対する信頼感を失った」という状況を意味するとともに、「次回の参議院選挙が、より大きな注目点になった」とも考えられるようである。
具体的には、「圧倒的多数」を握った「自公連立政権」が、「これから、どのような政権運営をするのか?」に、大きな注目が集まるとともに、これからの景気回復に対して、今まで以上の要求が出てくることが考えられるのである。つまり、大胆な「ポピュリズム(大衆迎合政策)」が実施されるものと思われるが、具体的には、「国土強靭化計画」により「10年間で200兆円もの資金が必要とされる」というような政策のことである。
そして、この点については、「今回の選挙による民意であり、国民は景気の浮揚を望んでいる」というような説明がなされ、現在では、「誰も、この意見に反対できないようなムードが醸成されつつある」とも言えるのである。つまり、「国民が、長期間の景気低迷にうんざりし、景気が良くなるならば、どのような手段でも受け入れる」という態度に変化しているようだが、実は、このようなムードの時に、本当の金融大混乱である「ハイパーインフレ」が起きやすくなるとも言えるのである。
別の言葉では、「日本」のみならず、「欧米」においても、全ての政策が行き詰まりを見せているために、今後は、「安倍首相が、危機突破内閣という名のもとに野放図な政策を実行する」というような状況が想定されるのである。そして、具体策としては、「財源を無視した大胆な公共投資」や「日銀による大量の国債買い付け」などが考えられるのだが、現在の「日銀のバランスシート」を考えると、このことは、「あまりにも無謀な行為」とも言えるようである。
つまり、現在では、「日銀」の同意のもとに「典型的なインフレ政策」が実行されようとしているのだが、現在の「株高」や「円安」は、インフレの第二段階である「ギャロッピング・インフレ」の始まりとも考えられるのである。そして、今後は、「約6か月後に、ハイパーインフレに移行することが危惧される段階」とも言えるのである。(2012.12.25)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/ja/column.html を許可を得て転載。
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