国籍と無国籍
- 2013年 4月 10日
- 交流の広場
- 山端伸英
小生は通算27年メキシコに本拠を置いている。とはいえメキシコから北米への移住を考えたり何度かスペインに出かけて仕事を探したりしている。
現大統領がメキシコ州知事のころサン・サルバドル・アテンコの農民運動を弾圧しているのだが、その際に取材に当たっていたチリその他の取材陣を連邦政府は国外追放している。メキシコ憲法では外国人が政治に関与することを禁じているので、小生が政治学の講義をするたびに、ヒネた学生から突っつかれることもあったが、一度大学当局から脅され、日本大使館にも相談したが相手にしてくれず、館員を怒鳴りながら、一方では追放止めの行為としてメキシコ国籍をとった。大使館は10か月くらい経ってから重い腰を上げたが、逆に大学側から「大学はそんな人権侵害はしない」と煙に巻かれて帰ってきた。これが警視庁所属の領事であるのだから小生並みに「国籍」を軽んじているといえばいえよう。
ところが、しばらく経って日本大使館は国外投票の会場で小生の投票権を拒絶し、その場で「国籍離脱届」に強制的にサインさせようとした。小生は、あの時点でまったく腰抜けだった大使館側が、小生一人を相手にしてはかなり居丈高なのに驚いた。
なるほど国籍をとってからは政治的発言をとやかく言われないのでそれだけ楽だが、公務員などの職には就けない。10年以上、国を離れると私財を含めてすべて権利を失う。要するに完全な国籍ではない。
それを理由に僕自身の「民族意識」の元のほうから「国籍離脱」を迫られるとは、大きなお世話というか、親切きわまるというか、人権意識が田中義一内閣(前世紀初頭)なみというべきか。。
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