本間宗究の「ちきゅうブッタ斬り」(44)
- 2013年 6月 8日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究金融
弱気から強気への転換点
昨年の11月14日から、現在の強気相場が始まったのだが、過去のパターンから言えることは、「弱気が強気に転じるためには、約6か月の期間が必要だった」ということである。つまり、「下げ相場」において「空売りで利益を得た投資家」は、なかなか強気に転換することができず、「約半年の期間を経て、ようやく強気に転ずることが多かった」ということである。具体的には、「1992年」や「1995年」、そして、「1998年」の転換時に起きたことが、「空売りで成功した投資家」は、「上昇過程においても、過去の残像に囚われ、売り残高を積み上げることが多かった」ということである。
そして、このような人々が、「相場の強さ」に気付き、「弱気」から「強気」に転換したのが「底値から約半年後」というタイミングだったのだが、今回も、同様の状況が考えられるようである。つまり、「ヘッジファンド」などを運用している人々は、今回の株価上昇についていけず、依然として、「ロング・ショート」と呼ばれるような、「売りと買いとのポジションを同時に持つ」という手法を採用しているものと思われるからである。
このように、半年前までは、誰も「日本株の上昇」を信用せず、多くの投資家が、「利益を指すことよりも、損失を出さない」という方法を模索していたのである。つまり、「オルタナティブ投資のバブル期」とも言えるような状況だったのだが、「相場の醍醐味」としては、「20年以上も下げ続けてきた日本株が、いったん上昇に転じると、これほどまでの強気相場が示現する」ということであり、また、「今後も、より一層の上昇相場が期待できる」ということである。
そして、今後の注目点としては、「約7兆円以上も存在する貸株残高が、これから、どのような結果を迎えるのか?」ということだが、かりに、この部分が、「機関投資家による空売り」だとすると、底値から6か月後の「5月相場」が、大きな注目点になるものと考えている。つまり、「1兆円の買いで、日経平均が1000円程度上昇する」という経験則からは、今後、大きな株価上昇が見込まれるからである。
しかも、今回は、「グレートローテーション」と呼ばれる「世界的な、債券から株式への循環」の他に、私が想定する「最も大きな上昇要因」として、「現代の通貨や政府に対する失望感」が存在するようだが、この時には、「多くの資金が、一斉に、実物資産に殺到する」という状況が想定され、実際には、「株価上昇による資産効果」ではなく、「世界的な換物運動」とでも呼ぶべき状況が想定されるようである。(2013.5.8)
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金融市場における大政奉還
NHKの大河ドラマ「八重の桜」を興味深く拝見しているが、この時に感じさせられることは、「歴史の転換期においては、実に、劇的な変化が起きる」ということである。しかも、この時に、「その時代を生きる人々」にとっては、常に、意識面での「慣性の法則」が存在することも見て取れるのだが、具体的には、「今日は昨日の延長上にあり、また、明日も今日の延長上に存在する」というような考えのことであり、実際には、「既存の幕藩体制が崩壊することなどは有り得ない」という、一種の「思い込み」や「希望的観測」のことである。
しかし、歴史には、往々にして、「きわめて残酷な面」も存在し、実際に起きたことは、ご存じのとおりに、「約260年間」も続いた「幕藩体制」が、「ほぼ一夜にして崩壊した」ということだったのである。そして、この理由としては、「さまざまな矛盾が積み重なった結果として、既存のシステムや体制が維持できなくなった」ということだが、このような大変革は、「歴史上からは、頻繁に起きていること」とも言えるのである。
そして、現在では、「200年以上」も継続した「資本主義体制」に関して、大きな変革の時期を迎えようとしているのだが、現時点で、このことに気付いている人は、ほとんど皆無とも言えるようである。具体的には、「資本」という「お金」が、「主義」という「最も重要な価値」へと変化し、その結果として、現在では、「史上最大のマネー大膨張」が起きているのである。
しかも、今回は、日本一国だけの問題だった「明治維新」とは違い、「世界の金融システム」が崩壊を始めている状況でもあり、この最後の局面で起きていることが、「国債を守る陣営」と「金を信用する陣営」との間での「せめぎ合い」とも言えるのである。つまり、「既存の体制を維持しようとする人々」と「新たな体制を構築しようとする人々」との間で「争い」が起きているのだが、この時の注目点が、「いつ、先進国の金利が上昇を始め、国債価格の暴落に繋がるのか?」ということである。
別の言葉では、資本主義社会の最終段階で発生した「信用本位制」が崩壊する条件としては、「国民が、政府や通貨に対する信頼感を喪失し、再び、貴金属や株式、あるいは、土地などの実物資産へ回帰する」ということが指摘できるのだが、今回の「世界的なゴールドラッシュ」が意味することは、間もなく、「金融システムにおける大政奉還」が起きるということでもあるようだ。(2013.5.7)
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金のバックファイア
4月12日から15日にかけて起きた「金価格の急落」については、現在、実情が明らかになり始めているが、基本的には、「キプロスの財産税」が、問題の発端だったようである。つまり、「自分の預金などに、新たな税金がかけられ、資産価値が、大きく損なわれる恐れがある」と危惧した個人投資家が、ヨーロッパにおいて、「3月から、大量に金や銀の現物を買い始めた」という状況でもあったのである。
そして、結果としては、「金」や「銀」の在庫が急減し、「ABNアムロ銀行などは、金の現物受け渡しを中止する」という発表までしたのだが、問題は、「世界の先進国」や、「英米のメガバンク」を中心にした「国債を守る陣営」だった。つまり、彼らが行ってきたことは、「ゼロ金利政策」などの「歴史的な超低金利政策」を実行しながら、同時に、「LIBORの不正操作」までも行う事により、「世界の金利を、不当に低く抑え、デフレ的な現象を演出すること」でもあったからである。
また、この時に必要なことは、「貴金属の価格を抑え、世界の資金が実物資産へ向かわないようにする」ということであり、最近では、「金利の不当操作」に続いて、「金価格の不当操作」までもが噂されているような状況でもあったのである。そのために、今回は、「前代未聞の規模で、金価格の売り叩き」が行われたようだが、結果としては、「金のバックファイア(逆噴射)」を引き起こした可能性が存在するのである。
つまり、「金の価格が、二日間で、約230ドルも暴落した」という事実を見たことにより、「世界中の個人投資家が、一斉に、金や銀の現物を買い始めた」という状況のことである。別の言葉では、「ゴールドラッシュ」とも言える様相を呈し始めてきたのだが、このことは、「世界中の人々が、ようやく、現在の金融大戦争を認識し始めた」ということであり、具体的には、「国債を守る陣営」と「金を信用する陣営」との間で、「過去10年ほどの期間、きわめて熾烈な戦いが起きていた」ということである。
このように、「国債を守る陣営」が考えてきたことは、「金価格の上昇」は「国債価格の暴落」に繋がる可能性があるということであり、そのために、「人為的に、金の価格を抑えてきた」とも推測されているのである。しかし、今回は、「世界中の個人投資家が、金を信用する陣営に参戦した」という状況でもあり、今後は、はっきりとした形で、「金融大戦争の終結」が見えてくるものと考えているが、実際に、最も呑気だった日本人までもが、急速に「金の現物」を買い始めたとも報道されているのである。(2013.4.29)
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デマンドプルとコストプッシュ
現在では、いろいろな商品が値上がりを始めているが、経済学の教科書では、この時に、大別して二つのパターンが存在すると言われている。具体的には、「コストプッシュ」と「デマンドプル」と呼ばれるものだが、「コストプッシュ」というのは、「燃料」や「賃金」などの価格上昇により、最終製品の価格に転嫁せざるを得ない状況のことである。そして、「デマンドプル」というのは、ある商品に大きな需要が発生し、供給が追い付かないために、価格が上昇するパターンのことである。
そして、このことを、現在の具体例に当てはめながら、「需要」と「供給」の曲線が、どのように変化しているのかを考えると、「これからの世の中で、どのような事が起きるのか?」が見えてくるものと考えている。つまり、現在、「イカ漁の休業」により、「イカの価格が上昇するのではないか?」と危惧されているのだが、このことは、典型的な「コストプッシュ」を表しており、実際に起きることは、「供給曲線が左側へ移動する」という「供給の減少」であり、結果として、「価格が上昇するパターン」のことである。
また、「金の価格」については、今後、典型的な「デマンドプル」の状態が予想されるようである。具体的には、「1979年の金バブル」の時と同様に、「供給に制限のある商品」は「供給曲線が、ある一定の水準で、ほぼ垂直に上昇する」という状況下で、「世界中の個人投資家が、金に対する需要を強める状況」のことである。つまり、「ないものねだり」のような状態になることが想定されるのだが、この時に起きることは、「わずかな需要の増加でも、価格が垂直な供給曲線を駆け上がる」ということである。
このように、これからの投資において重要なことは、「世界に、どれだけの資金が存在するのか?」を理解し、また、「その資金が、今後、どの商品に向かい、新たな需要を発生させるのか?」を考えることである。そして、「金融商品」のように、「コンピューターの中で、人為的に創り出せる商品」と「長い時間をかけて、自然が作り出した商品」とを区別する必要性があるものと考えている。
具体的には、「過去数十年間に、大量に生み出された金融商品」は、「根本の信用」が崩れ去った時には、「あっという間に、その価値を失う」ということであり、また、「1971年のニクソンショックまでは、約6000年間、金が本当の通貨だった」ということだが、今回の「金のブラックマンデー」は、世界中の人々に、「通貨の歴史」を考えさせるきっかけになった可能性があるようだ。(2013.4.28)
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黒田日銀総裁の思惑
黒田新総裁が就任して、ほぼ一か月が経過したが、「この間に、日銀のバランスシートが、どのように変化したのか?」を見ると、黒田新総裁の思惑が見えてくるようだ。具体的には、「マネタリーベース」の増加方法として、「当座預金残高の急増」が実施されているのだが、4月17日付の日経新聞では、「残高が69兆円にまで達する勢い」とも報道されているのである。つまり、就任時の「約44兆円」から、一挙に、「25兆円」も増やしているのだが、一方で、「日銀券の発行残高」については、「ほとんど変化なし」という状況も見て取れるのである。
このように、現時点では、「民間銀行が保有する国債」を大量に買い付け、同時に、「その資金を、当座預金の増加で吸い上げる」という手法を模索しているようだ。そして、このことは、「日銀のバランスシートの大膨張」であり、また、「民間銀行」においては、「国債の保有残高」が「日銀の当座預金」へ変化することを意味している。つまり、「日銀が、民間銀行に対して、より大きな影響力を持つ」ということだが、問題は、「この手法が、どこまで継続可能なのか?」ということである。
別の言葉では、「金融緩和」という名のもとに、実質上は、「民間銀行の資金を、中央銀行に移行させている」ということだが、この時に起きることは、民間銀行の収益源である「国債売買益の急減」とも言えるのである。つまり、今までは、「世界的な国債の買い支え」を基にして、「価格の上昇過程で、利益を上げてきた」という状況だったのだが、今後は、収益源に問題が出てくることが予想されるのである。
また、より大きな問題点としては、「約1000兆円」も存在する「国債の残高」に関して、「価格下落のリスク」が見え始めた時に、「日銀が、どこまで買付可能なのか?」ということである。つまり、「円安の進行」や「輸入物価の上昇」などにより、「金利の上昇圧力」が顕在化した時に、「どこまで、現在の低金利が持続可能なのか?」ということだが、これから想定されることは、「金利の上昇」や「国債価格の下落」が起きた時に、「日銀が、大量に国債を買い付ける」ということだと考えている。
より具体的には、「当座預金残高」を増やすのではなく、「紙幣の増刷」を加速させることにより、「既存の国債を、すべて買い取る」という状況も予想されるのだが、最も基本的な問題は、「税収が約42兆円、歳出が約92兆円」というように、「年間で、約50兆円もの税収不足を、どのようにして補うのか?」ということである。(2013.4.17)
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金市場におけるブラックマンデー
4月15日(月)に起きた「金価格の暴落」については、たいへん驚かされたが、一方で、「国債を守る陣営」の焦りも、十分に見て取れるようだ。つまり、「このままでは、世界的なハイパーインフレに見舞われる」、そのために、「金価格を下げることにより、デフレを演出する」という思惑が存在した可能性があるからだ。その結果として、「金価格が、二日間で、230ドルも暴落する」という事態に見舞われたのだが、特に、「4月15日」の動きは、「金市場におけるブラックマンデー」とも言える状況でもあったようだ。
そして、この時に思い出されたのが、「1987年10月」に起きた、世界的な「株式のブラックマンデー」だったが、この時に起きたことは、「アメリカ株が、一日で、508ドル(22.6%の下落)も暴落した」ということだった。そして、当時は、「世界の終わりではないか?」というほどの悲観論が出る状況でもあったのだが、一方で、「このまま推移したら、数日後には、どこまで下げるのか?」という冷静な意見も出始めたのだった。
つまり、「男性的な下げは短期間で終了する」という相場の鉄則が思いだされることにより、「暴落は短期間で終了し、その後に、本格的なバブル相場がスタートした」という状況でもあったのである。具体的には、「日本株」を中心にして、「個人投資家が参戦し、史上最大のバブル相場が形成された」ということだが、実は、このキッカケとなったのが、「1987年のブラックマンデー」だったとも考えられるのである。
そのために、今回の「金市場のブラックマンデー」についても、「同様の事態が想定されるのではないか?」と考えているが、現時点の「金(ゴールド)の市場規模」を、「世界の金融資産」と比較すると、おおよそ「700兆円」対「10京円」という、驚くべき比率になっている。つまり、本来は、「金(ゴールド)」を基本にして、さまざまな「金融商品」が創られたのだが、現在では、「本末転倒の極み」とでも呼ぶべき状態になっているのである。
そして、今後は、多くの個人投資家が、この点に気付き始め、「金」に対する興味を、より一層、持ち始めることが想定されるが、このような状況下で、今回の「金価格の暴落」が起きたことには、大きな意味が存在するようだ。つまり、今回も、「1987年の日本株」と同様に、「これから、本格的な金(ゴールド)のバブル相場が発生する」という可能性が高くなっているようだが、この時に、「黒田日銀総裁」の金融政策を合わせて考えると、これからの数か月間は、本当の意味での「金融混乱期」が起きるようである。(2013.4.16)
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異次元の金融緩和
4月4日の「日銀政策決定会合」では、全員一致で「異次元の金融緩和」が決定されたと報道されている。そして、マスコミでも、多くの専門家が、「円安」や「株高」を称賛しているようだが、発表の内容を吟味すると、これほど恐ろしい金融政策も存在しないようだ。つまり、実際には、「国家の借金を棒引きにする」という「古典的なインフレ政策」が実施され始めたものと考えているのだが、「マネタリーベース」などの、一般には分かりにくい言葉を使うことにより、国民が煙にまかれている可能性も存在するようである。
具体的には、「マネタリーベース=日本銀行券発行高+貨幣流通高+日銀当座預金」という説明がなされており、今回は、「今後の2年間で、マネタリーベースの残高を2倍にする」と言われているのである。そして、この時に考えなければいけない点は、「当座預金」が、「民間銀行からの短期借入資金」を意味しているために、これから起きることは、「日銀券の発行残高が急増する」ということだと考えている。
つまり、「金利が付かず、償還期限の存在しない日銀券」を大量発行することにより、「金利が付いて、償還期限の存在する国債」を買い付けるということだが、このことは、典型的な「マネタイゼーション(国債の現金化)」と呼ばれるものであり、「どのような国家も、最後の手段として実施する方法」とも言えるのである。そのために、これから「黒田新総裁」が、「実際に、どれほどの紙幣発行を行うのか?」が、最も大きな注目点だと考えているが、当面は、「大幅な円安」と「輸入物価の急上昇」に気を付ける必要があるものと考えている。
そして、その次に考えなければいけないことは、「サイバー空間から現実へ」という「今年のキーワード」のとおりに、「デジタルマネーは、コンピューター・ネットワークの中でしか力を発揮しない」という点である。つまり、「紙幣の大増刷」や「高額紙幣の発行」が顕著になった時には、「金融商品の決済」において、大きな問題が発生することが予想されるのである。
具体的には、「紙幣は、コンピューター・ネットワークの中を流れることができない」ということであり、その結果として、「デリバティブ」や「国債」などの決済を「どのようにして行うのか?」ということである。つまり、結論としては、「日本初のハイパーインフレが、8月から9月頃に発生する可能性が高くなった」ということだが、当面は、「ギャロッピング・インフレ」が加速し、一時的な景気回復が見込まれるようである。(2013.4.7)
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為替のソロスチャート
今から20年近く前の1996年に、私がアイデアを提供し、大和総研のエコノミストがデータ検証をすることにより、新たな為替の理論を創ることができた。具体的には、「信用乗数(マネーサプライ÷マネタリーベース)」を、二国間で比較することにより、90%以上の確率で為替の予想が付いたのだった。そして、その数年後に、ジョージ・ソロス氏がこの理論を理解することにより、現在の「ソロスチャート」と呼ばれるものができたものと考えている。
しかし、この時に大切なことは、「マネタリーベース」を比較するのではなく、「信用乗数」を比べることでもあるのだが、「ソロスチャート」には、この点に関して、大きな誤解が存在するようだ。つまり、基本的な考え方としては、「信用力のある国には資金が流れ、通貨が高くなる」ということであり、この「信用力」の判定方法としては、「信用乗数」を比較することが重要な点とも言えるのである。別の言葉では、「中央銀行が出す資金」である「マネタリーベース」を比較するのではなく、「マネーサプライ」という「民間銀行が、どれほど信用創造を行っているのか?」という数字を判断することである。
そして、「信用乗数が高い国ほど、国家の信用力があり、また、為替が強くなる」ということが、この理論が意味することだったのだが、残念ながら、「2002年ころから、為替デリバティブの大膨張により、正確な数字が取れなくなった」というのが、実際の状況でもあった。しかも、過去数年間は、「世界の金融市場が、一部のメガバンクによって、不当に操作されていた可能性」も存在するために、より一層、為替の予測が難しくなっていたのだが、現在では、急速に、「金融のコントロール」が効かなくなってきたようである。
そのために、再度、「マネタリーベース」が注目を浴びてきたものと考えているが、この時に重要な点は、やはり、「通貨制度」や「金融システム」の「原点」に戻り、「過去100年間に、どれほどの変化が起きてきたのか?」を理解することである。つまり、現在の通貨制度は、1971年の「ニクソンショック」をきっかけにして、大きく変貌したということだが、この点が理解できない場合には、「単に、著名人の意見を鵜呑みにしがちになる」ということが起きやすくなるのである。別の言葉では、「世界の金融市場で、どのような事が起きているのかを、歴史を繙(ひもと)きながら、自分の頭で考える」ということだが、残念ながら、「マニュアル的な思考法」に慣らされた現在の日本人には、この点が、難しくなっているようである。(2013.4.7)
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世界的な信用崩壊
「キプロスの金融混乱」に端を発した「信用崩壊の波」は、今後、世界に波及していくことが想定されるが、この時に参考になるのが、「1997年の信用収縮」だと考えている。具体的には、「タイから始まった信用収縮の波が、次ぎから次へと連鎖反応を起こし、最後には、アメリカのLTCM事件にまで行き着いた」という状況のことだが、この時に起きたことは、「民間銀行の破綻」であり、「国家」そのものは、現在に比べると、「盤石の状態」でもあったのである。
つまり、「民間銀行で発生した不良債権を、全面的に国家が引き受けた」という状況でもあり、その結果として、「民間銀行は、一時的に、危機を脱した」とも考えられたのである。しかし、現在では、「最後の砦」とも言える「先進国の全て」が大量の国債を抱え「資金繰りに行き詰る」という前代未聞の事態に見舞われているのだが、驚いたことに、「ほとんどの人は、いまだに、危機感を抱いていない状態」とも言えるのである。
具体的には、「国債価格が値上がりをしているから、国家の資金繰りは安泰だ」、あるいは、「中央銀行が国債を買い付ければ、国債価格の暴落は起きない」というような考えが市場を支配し、実際に、「日本国債」を中心にして、異常な「バブル状態」が発生しているのである。別の言葉では、「国債価格が暴落すると、預金や年金、あるいは、保険など、全ての金融資産が、大きな被害を受ける」という点を、心の中で認識しながらも、「そのようなことが起きたら大変なことになる」、だから、「そのようなことが起きるはずがない」という「根拠のない楽観論」に頼っている状況とも言えるようである。
つまり、「1990年」や「2000年」の時に起きた「バブル崩壊」の時と、ほとんど同じ心理状態になっているものと考えられるが、今回の「キプロスの財産税」は、その楽観論を、一挙に打ち砕く効果があったようである。具体的には、「政府は、最後の段階で、財産税までも徴収する」という事実を、世界中の人々が認識したからだが、本当に怖いのは、「消費税」や「財産税」などの「目に見える税金」ではなく、「紙幣の大増刷」により、「国民の知らないうちに、資産が没収される」という「インフレ税」だと考えている。
そのために、今後の注目点としては、「スペインやイタリアなどで、取り付け騒ぎが起きるのか?」ということであるとともに、「日米の国債価格が大天井を付けた後に、どのような事が起きるのか?」ということだが、実際には、「日米英を中心にして、大々的な紙幣の増刷が始まる」という事態が想定されるようである。(2013.3.29)
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グレートローテーション
最近、海外では、「グレートローテーション(大転換、大循環)」という言葉が使われ始め、「世界の資金は、債券から株式へ大きく移動し始めている」と考えられているようだ。つまり、現在の「世界的な株高」を説明する理由として、ようやく、「世界の資金」が、どれだけ存在し、また、「どの資産が、これから値上がりするのか?」を考え始めたようだが、この時の注意点としては、「過去100年間に、どのような方法で、どれほどの信用創造が行われたのか?」を考える必要性があるものと考えている。
あるいは、「なぜ、現在、先進国で超低金利の状態になっているのか?」、また、「なぜ、日米欧の国債価格が、史上最高値圏に位置するのか?」という点に対して、歴史的な考察をしない限り、「現状認識」ができないばかりでなく、「今後の予想」も難しくなるものと考えている。別の言葉では、「財政破綻に瀕している先進国にとって、なぜ、ゼロ金利政策が可能だったのか?」という点を考慮することだが、この理由としては、今までに繰り返して申し上げた通りに、先進国が連携して、「国債の買い支え」、あるいは、「国債の持ち合い」が行われていたことが指摘できるようだ。
特に、過去10年ほどは、「2004年から2008年」までの期間に「約5京円ものデリバティブの大膨張」が起き、その後、「2009年から2013年」までは、「中央銀行がバランスシートを大膨張させて、国債を買い付ける」という、いわゆる「リフレーション政策」が実行されてきたのである。しかも、この間に行われてきたことは、「日本国債」を中心にして、「国債を買い、円高にし、かつ、株式や金を売り叩く」という「プログラム売買」が大量に行われてきたのだが、現在では、「スカイネットの崩壊」という言葉のとおりに、「プログラム売買の巻き戻し」が起き始めた状態とも言えるのである。
そのために、これから想定されることは、本当の意味での「グレートローテーション」だと思われるが、具体的には、「フィアットマネー(政府の発行する法定不換紙幣)」を基本にした「現在の金融商品」から、「貴金属」や「株式」、あるいは、「土地」などへの「実物資産」へと、資金が大量に移動を始めるということである。
別の言葉では、典型的な「ギャロッピング・インフレ」のことだが、この時に起きることは、「実物資産の価格急騰」であり、また、「国債価格の暴落」でもあるようだ。つまり、現在、最も割高に位置し、最も危機的な状況にある「日本国債」の価格が暴落を始めた時に、金融混乱の本質が、全て理解されるものと考えている。(2013.3.27)
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キプロスの金融混乱
日本時間の3月18日に、突如として明らかになった「キプロスの金融混乱」は、今後の世界情勢を考える上で、きわめて大きな意味を持っているようだ。つまり、「100億ユーロ(130億ドル)をキプロスに支援する代わりに、10万ユーロ超の額の預金に、ある一定の課徴金を課す」という内容だからだが、このことは、「銀行預金者に負担を求める」という、一連のユーロ圏加盟国支援策としては「前例のない措置」とも言えるのである。
別の言葉では、現在の「信用バブル」や「預金神話」を崩壊させる「キッカケの事件」になる可能性が高まっているのだが、このことは、「第一次世界大戦」が、「サラエボ事件」という「オーストリアの皇太子が一発の銃弾によって殺害された」事件を契機に開戦したことと、似たような意味を持っているようだ。つまり、「ユーロ加盟国」の中でも、影響力がほとんどないと思われていた「キプロス」の金融混乱により、「ユーロ」のみならず、「ドル」や「円」までもが、大きな影響を受ける可能性が存在するのである。
具体的には、現在の通貨制度とも言える「信用本位制」が、この事件をキッカケにして、完全崩壊する可能性が出てきたのだが、実際には、「キプロス問題」の裏側には、「ロシア」が存在するとも言われている。つまり、「タックスヘイブン」や「マネーローンダリング」などで、いろいろな「噂」が存在した「キプロス」の資金は、主に「ロシアの富裕層」が出資していたとも言われているのだが、今回の問題点は、「一部とはいえ、その預金が価値を失う」という事態が想定されていることである。
このように、今回の事件は、単純に、キプロス一国の問題ではなく、実際には、現在の「通貨制度」や「金融システム全体」を揺るがすほどの大問題になる可能性が存在するものと考えている。つまり、現在の「通貨」は、「フィアットマネー(政府が発行する不換紙幣)」となっており、実際には、「銀行などに存在する、単なる数字」へと変化しているのだが、今までは、この点が、ほとんど認識されていなかったのである。
しかし、今回は、「絶対に安全だと思われていた銀行預金」に対して、「ある日突然に、価値が失われる」という事態が発生する可能性があり、その結果として、「先進国の預金も、このような状態に陥るのではないか?」という疑心暗鬼の状態になりかかっているのである。しかも、この時に、「日銀総裁の交代」により、「日本」で「無制限の資金供給」が行われることも、「信用バブルの崩壊」に拍車をかける可能性があるようだ。(2013.3.18)
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日銀総裁の交代
3月20日に、「日銀総裁」が白川氏から黒田氏へ交代するが、白川氏の心中を察すると、半分は「安堵感」であり、半分は「忸怩たる思い」が存在するようだ。つまり、白川氏が行ってきたことは、「決して、紙幣の増刷を行わない」ということであり、「この方法により、日本円の健全性を保ってきた」とも言えるのである。別の言葉では、「欧米各国」が「無謀な金融政策」を実施しながら、「中央銀行のバランスシート」を大膨張させる中で、「日銀は、本来の中央銀行としての役割を果たしてきた」ということだが、世の中の流れには逆らえず、今回、「安倍首相により、辞任に追い込まれてしまった」とも言えるようである。
また、今後は、「黒田新総裁」を中心にして、日本も、欧米各国と同様に大量の資金供給が行われることになるようだが、この時の注目点は、「いったい、どのようにして、日銀の資金を賄うのか?」ということである。具体的には、「3月10日」の時点で、「総額が約166兆円」、「国債の残高が約122兆円」という金額にまで達した「日銀のバランスシート」を、「今後、どのようにして管理していくのか?」ということである。しかも、現在では、「当座預金が約43兆円」、そして、「売現先勘定が約31兆円」という規模にまで膨らみながら、「日銀券の発行残高」に関しては、「約82兆円」の規模で抑えられているのである。
つまり、「綱渡り的な管理を行いながらも、国債を大量に買い付ける」という政策を実行してきたわけだが、本来は、「このような行為に対しても、白川氏は反対すべきではなかったのか?」とも考えられるようである。別の言葉では、「国家の借金を減らすために、日銀は、国債の買い付けに協力しない」とでも宣言すべきだったようだが、「時代の流れ」は、往々にして、「流れに反対する人を排除する」という傾向があるようだ。つまり、「バブル」と同様に、「行き着くところまで行かないと、人々の認識が追い付かない」ということであり、「バブルが弾けた時に、初めて、バブルの存在に気付く」ということである。
このように、今回は、世界的な「信用バブル」が根本的な問題であり、すでに始まったものと思われる「ギャロッピング・インフレ」が、更に進行することにより、最後には、「世界通貨の価値が、大きく損なわれる」という事態が予想されるのだが、この点については、「黒田新総裁が、大量の紙幣発行を行った時に、はっきりと理解される」という状況が想定されるようだ。しかし、その時には、すでに、「ハイパーインフレ」がスタートしている事態が考えられるのである。(2013.3.16)
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion1323:130608〕
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