「ネット選挙」が解禁されたが……
- 2013年 7月 8日
- 時代をみる
- 池田龍夫
今回の参院選挙からネットを利用した選挙運動が解禁された。政党はもとより有権者サイドも効果的な取り組みを行っているが、果たして国民の政治への関心が高まるだろうか。推進者の一人、安倍晋三首相は帰宅後の夜、ツイッターやフェイスブックに熱心に取り組んでいるそうだ。
参院選候補者の84%がFBを利用
ソーシャルメディアの利用状況を毎日新聞が調べたところ、6月26日現在で立候補を予定している409人(選挙区260人・比例代表149人)のうち84%の344人がフェイスブック(FB)を利用している。ツイッターは65%の265人。実名登録が原則のFBは、匿名の多いツイッターと比べ誹謗(ひぼう)中傷やなりすましの被害に遭う危険が低いとされ、FB重視の傾向につながったと、分析している。毎日新聞と立命館大学がネット選挙を共同研究したもので、7月3日付朝刊でその概略を伝えた。
「原発」へのツイート数が多い
6月21日からから収集しているツイート・データ数を7月2日まで集計したところ、「原発」のツイート数が1日4万件前後で突出。ネット上では脱原発派が活発につぶやいている。ところが、7月3日の党首討論会では原発・エネルギー問題は盛り上がらず、政党間の争点とネット上の関心のズレを感じた。「原発」への関心が高い一方、これらのキーワードが特定の政党に関連づけてつぶやかれることは少なく、ネット上の関心と政党側の発信がかみあっていないことを示していた。原発に次いで「契機・雇用」が多いと予想していたが、そうではなく「震災・復興」と「憲法改正」。そのツイート数も、「原発」の半数以下の日が多かったという。
誹謗中傷の危険性も孕む
毎日新聞7月5日付オピニオン面「視点」欄は、「取り組みが始まったばかりで試行錯誤の段階だが、ネット上の言葉は新聞や書籍と比べて短い。そのため、賛成か反対か、敵か味方かといった単純な図式に陥ってしまうきらいがある。ネットの利用率が高い若者たちにおもねっているのか、肝心の政治家がわざわざ乱雑で攻撃的な言葉を使いたがる傾向さえある。ネットを通じて政治家と国民が多岐にわたる政策課題についてやり取りして議論を深める。…そんな『熟議の民主主義』につなげることこそネット解禁の意義があるはずだ。日本人はこれまで『私は何党を支持するか』『あの人に投票したい』と人前で話すのを憚ってきたのではないか。ネットの次ぎは実際に顔と顔を突き合わせて、政治について語り合う――。そんな変化にぜひ結びつけよう」と指摘していたが、有権者側が政治に関心を持って、持論を表明してもらいたいと思う。
制限付きとはいえ、有権者がネットを通じて特定の政党や候補者に投票を呼びかけることができるのは結構だが、誹謗中傷が飛び交うようでは困る。公職選挙法によって、縛りをかけているが、違反を承知でのメールが続出しないか。また文句は言うが、投票を棄権する無党派層が増えることも心配になってくる。今回だけは〝お手並み〟拝見だが、トラブルを見逃さず、改めるべきは改めてほしい。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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