不透明な円高と経済的動向から
- 2010年 10月 7日
- 評論・紹介・意見
- 三上治不透明感円高問題
あちらに領土問題という波風が立てば、こちらでは土砂降りにあっているように伝えられる円高の進行がある。土砂降りは輸出中心の企業の悲鳴としてあるもので、それを代弁するメディアが伝えるものである。円高にはメリットもあるが、政府はこの声に押されて為替介入策を取った。が、再び円高が進行している。この円高問題は新聞の情報や分析を読んでも分かりづらい。実体経済的動きと金融経済的動きの二重性が析出されていないためではないか。
アメリカ経済は景気の先行きが不透明でありそこから発するドル安、ギリシャ経済等の不安を抱えるユーロ安は理解できる。アメリカやヨーロッパの諸国が輸出強化のためにドル安やユーロ安を容認していることも分かる。それならば日本経済が一人好調であるために円高になっているのであろうか(?) 日本経済はアジア経済の高成長に助けられてはいるが、不況(デフレ状態)にある。だから、実体経済的には円高の要因は見当たらない。もう一つドル・ユーロ・円という通貨の金融経済的側面を見なければならない。管理通貨制度のもとでは通貨が実体経済とは乖離し為替差益などを求めた動きは良く知られている。ここではドルの増刷による通貨価値の下落(暴落)の懸念と、ユーロの通貨としての不安定さあって、円が相対的に評価される側面がある。その円にしても膨大な国家財政赤字という懸念を抱えているがそれでも信用度は高く円高の要因になっている。円高は実体経済的側面からではなく、金融経済的な側面から出てきているのであり、この面での通貨の不安定から発生している。この点では円高は不都合なことではない。円の国際的信用が下落し、円安になった状態を考えれば明瞭である。この根本問題は管理通貨としてのドルの増刷による価値下落とそれがもたらす通貨不安であることを認識しておかなければならない。しかし、金融経済的側面から出てくる円高は実体経済的側面に影響を与える。通貨は通貨であってそこには区別はないからである。僕らが日常的に関係するのは実体経済的側面であり、そこでの円高が与える影響である。輸出を主体とする産業にとって円高はデメリットである。日本の実体経済が輸出産業主導型からどう脱皮して行くかは以前から言われてきたことだが、円高はその構造からの脱皮の機会である。日本経済はアジア経済の高成長に支えられた輸出に依存することが続くだろうが、実体経済(産業経済)の構造転換が課題であることはかわらない。円高の産業的メリットを生かしながら、産業経済の構造転換の推進が要求されているのである。解決の道はそこにしかない。 10月2日記
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〔opinion162:101007〕
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