対シリア オバマ外交の危うさ
- 2013年 9月 21日
- 時代をみる
- 池田龍夫
オバマ米大統領は、シリアに化学兵器があるとして先制攻撃の意図を表明した。これに対して英下院は、制裁のための空爆は実効性が乏しいとして、英政府提案を否決。最も緊密な米英関係にヒビが入ることを恐れたオバマ大統領が、攻撃から外交に軸足を移す契機の一つになったと思われる。ロシアや中国だけでなく、EU諸国も懐疑的な姿勢を表明したことの影響は大きい。ブッシュ政権のイラク攻撃失敗の轍を踏まないよう、オバマ大統領が慎重になったに違いない。
イラク戦争の愚を繰り返すな
朝日新聞9月17日付夕刊に掲載された藤原帰一東大教授の「時事小言」が参考になった。
「イラク戦争を始めとする過去の軍事介入で軍事大国指導者に与えられた白紙委任状が見直されようとしている。軍事大国が『国際社会』を代行して得られる安定は思いのほか脆いものだ。だが、その教訓に学んで軍事力を放棄するだけではシリアの荒廃を打開できない。化学兵器の撤去に加え、各国政府、さらに各国国民の承認に基づき、紛争地域の住民が少しでも安全となる具体的対応を図らなければならない」との分析は鋭い。
とにかくシリア問題でのロシア外交は点数を上げたが、米国は赤点だった。オバマ大統領は当初、軍事介入を強く示唆した。共闘するはずの英国が同調せず、米議会での承認も危うくなったためである。
「オバマ氏は外交のアマチュア」と米の識者が批判
朝日新聞9月16日付朝刊オピニオン面に展開したワシントン特派員電の、大統領の資質にまで踏み込んだリポートは興味深い。
「米国シンクタンクのサンダース所長は、ブッシュ政権には、賛否は別にして、外交政策にビジョンがあった。この政権にはそれが見当たらない。ホワイトハウスの元高官も、これほどの外交のアマチュア政権を見たことがない。オバマ氏は、根っからの政治家というより、孤独を好む学者タイプと評される。ゴルフや社交で人間関係を深めるわけでなく、厳しい局面で助けてくれる仲間がいないと指摘。また両者を知る元政府高官は「(同じ民主党でも)クリントン大統領には人を引きつける魅力があったが、オバマ大統領にはない。度重なる方針のぶれで、大統領の威信は傷ついた。大統領が、戦略を練り直し『アマチュア外交』との評を返上できるか、真価が問われる」とオバマ外交の危うさに警告を発した。
シリアの化学兵器撤廃への道はなお険しい
シリアの化学兵器撤廃への道のりは険しい。イラク戦争失敗が、中東全地域を混乱させたことは明らか。これを教訓に、シリア問題について関係各国、国連安保理での熟議を求めたい。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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