本間宗究の「ちきゅうブッタ斬り」(51)
- 2013年 10月 9日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究財政金融
アメリカの債務上限問題
8月26日の「ルー財務長官による議会への書簡」を読むと、「米国の債務上限問題」は、きわめて危機的な状況に陥っているようである。具体的には、昨年末から実行されてきた「予算削減に関する非常手段」と引き換えの「一時的な上限棚上げ」に関して、いろいろな問題が発生する可能性が存在するのだが、この書簡では、「10月半ばに、国家の現金が、約5兆円しか残らない」とまでコメントされており、また、「国債価格が暴落すると、国家の資金繰りは、一挙に、現金不足に陥る」とも述べられているのである。
そのために、早急に「債務上限」を引き上げて、今までの「一時的な措置」で使った資金を返済する必要性があるようだが、この時の注意点としては、「本当に、国家の資金繰りは行き詰るのか?」ということであり、また、「債務上限の引き上げ」に成功したとしても、「本当に、このままの状態が継続できるのか?」ということである。つまり、「月間で、約10兆円も、国家債務が増え続けている」という状況下では、「どこかで、必ず、限界点に突き当たる」ということが予想されるのである。
別の言葉では、現在のような「国債の買い手が、主に、中央銀行である」というような状態が、永遠に継続できるはずがなく、間もなく、本当の意味での「金融大混乱」が始まる可能性のことである。具体的には、「年金」や「健康保険」、あるいは、「地方自治体」などから、一時的に資金を流用し、かろうじて、「国家財政」が維持されているような状況に対して、本格的な「市場の反乱」が起きるものと考えているのだが、実際には、「国債価格の暴落により、国債の買い手がいなくなる状態」のことである。
そして、この点について、過去の例を見ると、「1991年のソ連」や「2000年代半ばのジンバブエ」などのように、「ほとんどの国で、同じパターンが起きている」という状況も理解できるのである。つまり、「中央銀行が、国債を買い付ける」という方法が行き詰まりを見せた時に、「国家の資金繰りを、紙幣の増刷で行う」ということだが、この点については、いまだに、ほとんど理解されていないようである。
その結果として、「量的緩和の縮小」が起きると、「世界の資金が収縮し、世界経済は、大恐慌的な状態に陥る」と誤解されているようだが、これからの注目点は、反対に、「量的緩和の縮小は、マネタリーベースを、一挙に、大膨張させる効果がある」という点を理解することだと考えている。そして、この時には、「大量の資金」が、世界的に供給され、「実物資産の価格は、名目的に大暴騰する」という状況も想定されるのである。
2013.9.5
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「金融コントロール」と「価格操作」
8月28日の「ブルムバーグ」で、「為替市場の価格操作」が問題視され始めたが、この記事によると、「為替市場は、最も規制が行き届かない市場であり、また、最も不明瞭な取引が行われている可能性がある」とのことであり、「現在、世界市場における為替取引は、一日で約400兆円にも達する」とも述べられているのである。そして、「約50%が、4行によって取引されている」とも指摘されており、この時に、「価格操作」の可能性が存在するとも疑われているのだが、このことは、以前の「LIBORの不正操作」に続く、「金融コントロールの実情」が暴露された記事だと考えている。
具体的には、「約8京円から約10京円」とも言われる「デリバティブ」に関して、「約7割が金利関係の取引であり、また、約2割が為替取引」というように、「世界の金融市場」においては、「約9割」が「金利」と「為替」に関する「金融商品」とも言えるのである。そして、これらの市場において、「価格操作」が行われているとすると、「世界の金融は、一握りの金融機関によってコントロールされている」という指摘が、いよいよ、現実味を帯びてきたものと思われるが、現在の日本では、ほとんど、この点が考慮されていないようである。
そして、表面上の報道に惑わされ、単純に「デフレ」や「景気悪化」などを信じ込んでいるようだが、実際に起きていることは、「レーガン時代に財務長官補佐を努めたポール・クレイグ・ロバーツ博士」が指摘するように、「アメリカの金融界は、無法状態に陥っている」という状況でもあるようだ。具体的には、「連邦の権威」を利用して、「複数のメガバンク」が、「過去に例のない、きわめて異常な取引」を実行している可能性のことだが、実際には、「4月から6月に起きた、金価格の売り叩き」などのことである。
また、このことが、過去の歴史で、頻繁に見られる「権力の暴走」だと考えているが、「勧善懲悪」という言葉のとおりに、「最後には、悪人が滅び、善人が勝利する」というパターンが、今回も繰り返されることになるようだ。つまり、現在、人気の「半沢直樹」というドラマのとおりに、「善人が、何度も何度も、痛い目に合う」という状況の後に、「ようやく、悪人の悪事が暴かれ、正義が勝つ」ということである。
ただし、今回の「金融コントロール」については、「数十年」という単位で事態が展開し、最初は、「善い事」と思われた「マネーの大膨張」が、最後には、「悪事」となったようであり、この点には、大きな注意が必要だと感じている。
2013.9.5
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/ja/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion4640:131009〕
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