国会は「国権の最高機関」として、政府の暴走の監視を!
- 2013年 10月 16日
- 時代をみる
- 加藤哲郎原発安倍
◆2013.10.15 ようやく国会審議が始まります。参院選での自民党圧勝、というより民主党惨敗のあと、立法府としての国会はほとんど機能せず、「ねじれ解消の夏休み」とばかり、安倍内閣=行政府の暴走ばかりが目につきました。TPP、消費税、集団的自衛権、日本版NSCと秘密保護法案、と本来国民的討議が必要な重要問題が、次々と動き出しました。他方で真っ先に政府のなすべき外交上の難題、中国・韓国との対話や普天間基地移転をめぐる対米交渉は手つかず。9月、10月に何度も中韓首脳と同席したのに儀礼的握手どまり、日米地位協定の見直しは米兵処分結果の被害者への開示どまり。特にかつての国家機密法の再来である秘密保護法は重大。つい最近も、アメリカで1961年に核爆弾落下事故で広島型原爆の260倍の爆発寸前であったという英紙のスクープが報道されたばかり。1992−93年に日本政府が「従軍慰安婦」問題が日韓関係以外に広がらないよう東南アジア諸国の日本大使館に調査しないよう伝えていたことも、ようやく最近外交文書から明らかになりました。今でさえ情報公開に後ろ向きの政府と、腰の引けた日本のマスコミ。歴史認識の基礎資料が、国民の眼から遠のきます。
◆東京では13日に大きな脱原発集会が開かれました。稼働ゼロで夏を乗り切った実績をふまえ、IOC総会での安倍首相「アンダー・コントロール」発言のウソを糾弾し、小泉元首相の原発ゼロ発言は歓迎するスタンス。安倍首相の経済政策への支持率が高くても、まだまだ「脱原発」世論は健在です。その間も続く福島第一原発からの汚染水問題。どうやら、参院選投票日まで事実が隠されてきて、その後小出しにした海への放出が東京オリンピック誘致の最大の障害になって、首相の「アンダー・コントロール」「国が責任」発言になり、それで東電が急いで取り繕うとしたら、初歩的人為ミスを含めて化けの皮が剥げた、という構図のようです。国連科学委員会は、日本政府や東電の被曝線量報告は2割過小評価しているのではないか、と疑いの眼。日本国民は、とくに福島県民は、もっと疑っています。作業員の被曝線量は、隠されているというより、まともに計測されていないようです。東電社員が入らない、多重の下請け構造の仕業です。東京オリンピック誘致用にひねりだした汚染水対策、多核種除去設備ALPSも、凍土遮水壁も、抜本的対策にはほど遠いようです。廃炉への長い道程、汚染水・汚染土ばかりでない核廃棄物処理への方策は、手つかずのままです。まずは当事者能力も賠償能力もない東電をどうするか、初発のボタンの掛け違えから再検証すべきです。
◆夏休みに読んだ本、今西憲之『原子力ムラの陰謀』(朝日新聞出版)、本間龍『原発広告』(亜紀書房)、若杉冽『原発ホワイトアウト』(講談社)など。それぞれに「安全神話」のウラを曝いて面白かったですが、島村英紀『人はなぜ御用学者になるのか』(花伝社)、中西準子『リスクと向き合う』(中央公論新社)のような「科学」それ自体の意味まで眼を広げると、やはり柴山太『日本再軍備への道』(ミネルヴァ書房)、ヨアヒム・ラートカウ『ドイツ反原発運動小史』(みすず書房)、ジョン・ダワー『忘却のしかた、記憶のしかた』(岩波書店)のような本格的な書物が、思索のヒントを与えてくれます。私たちが春に出版した加藤哲郎・井川充雄編『原子力と冷戦ーー日本とアジアの原発導入』(花伝社)も、今夏、京都及び東京の研究会で、本格的な合評会を開いていただき、韓国語訳出版も決まりました。私自身の夏の仕事は、単著の2冊はまだ悪戦苦闘中ですが、短文の寄稿は、2冊の本になって発売されています。一つは、チャルマーズ・ジョンソン『ゾルゲ事件とは何か』(篠崎務訳、岩波現代文庫)の「解説」、もともと原書初版は、弘文堂刊『尾崎・ゾルゲ事件』(1966年)の名で一度訳されていますが、注を省略した読み物だったものを、かの『通産省と日本の奇跡』の著者が、1990年に増補新版を出した学術決定版の新訳です。米国でも日本でも支配的だったウィロビー報告の誤りをただし、この春の伊藤律「革命を売る男」説の誤りをただす松本清張『日本の黒い霧』改訂への、米国からの側面援助になったものです。もう一つは、森宣雄・鳥山淳編『「島ぐるみ闘争」はどう準備されたのかーー沖縄が目指す<あま世>への道』(不二出版)に寄せた、「金澤幸雄さんと金澤資料について」。新川明さん、新崎盛暉さんらと共に、故国場幸太郎さんと故金澤幸雄さんを偲んでいますが、これ実は加藤・鳥山・森・国場編『戦後初期沖縄解放運動資料集』全3巻(共編、不二出版 、2004-2005年)が好評完売して品切れになり、デジタル化してDVD版に改版するにあたっての、別冊本です。単行本としても販売するようですので、関心のある方は、DVD版と単行本をお求めください。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://www.ff.iij4u.or.jp/~katote/Home.shtml
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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