シオン権力と戦争:イラクからイランへ 死の抱擁
- 2013年 11月 19日
- 時代をみる
- 中東紛争童子丸開
私は以前(今年9月5日)の『海軍の配備は8月21日の化学兵器攻撃の「以前に」決められた』の序文に次のように書きました。
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イスラエルが米海軍とともにシリア沖の東地中海でミサイル発射訓練を行った。真打登場!いままで黒い幕の後ろに控えていた主人公がようやくその素顔を海面から持ち上げ白日の下にさらし始めたようである。ダマスカスへの道はテヘランに続く。戦場の惨劇が全中東からユーラシア全土を目指して広がろうとしている。悪魔どもの「偽の旗」が降ろされることはあるまい。
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今日、シリア情勢はマスコミに取り上げられることが減り、イランと米国の「雪解け」ムードが演出されています。しかしその一方で、イスラエル、フランス、サウジアラビアなどの湾岸諸国は、シリアに巣食うアルカイダ系テロリストへの軍事支援に余念がなく、さらには着々とイランへの軍事介入の準備を進めています。その中心になっているのが米欧諸国を経済・情報面で支配するシオニスト勢力とイスラエルです。彼らの軍事的野望と「偽の旗」作戦が終わることは無いでしょう。
次の和訳文はシオニストとイスラエルの悪魔的本性を大胆に暴いたものです。ただし、本文は非常に長いため、ここではその一部分だけをお目にかけたいと思います。
全文をご覧になる場合には、次のサイトにお進みください。
http://bcndoujimaru.web.fc2.com/fact-fiction/zion_power_and_war.html
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復刻版:シオン権力と戦争(ジェイムズ・ペトラス著)
【復刻にあたって】
この拙訳は2008年12月に私(童子丸開)の旧ウエッブサイトに掲載されたものである。このサイトは、おそらく意図的な妨害によってだろうが、閉鎖を余儀なくされてしまった。そこで、そこに載せられていた文章の中から、特に今後も重要性を維持し続けると思われる文章を、掲載の当時に書かれた説明も含めて、一つ一つ復活させていく予定でいる。 (気付いた限りの誤字や脱字などは修正を施している。)
今回復刻する長大な訳文、ジェイムズ・ペトラス著「シオン権力と戦争」は、米国ブッシュ政権が終わりを告げオバマ政権に引き継がれる時期に翻訳(仮訳)されたものである。その時点から現在に至るまでの見かけ上の変化にかかわらず、米国・欧州・中東、さらには日本を含む幅広い世界の経済的・政治的・思想的な支配の基本的構造は微動だにしていない。むしろ、この間に起こった経済的なクラッシュと混乱を通して、ますます研ぎ澄まされ強化されつつあるように思える。
このペトラスの論文はその支配構造の一端を大胆に暴き出したものだ。ここに描かれる目を見張るような米国社会の本質的な姿は、オバマ米国とイランの「雪解け」が演出され一見すると中東情勢が落ち着きつつあるようにみえる今日だからこそ、正確に認識される必要がある。イスラエルとシオニスト勢力は決してイランとの戦争、そして拡大中東戦争を諦めておらず、あらゆる機会を利用してテロを用いて動乱を煽り、マスコミと「人権」等諸団体を駆使して世論の誤誘導を試みるだろう。
シオニズムをテーマにした論文は無数にあるが、人類世界を無遠慮に破滅に追いやりかねないシオニストとシオニズムの危険な本性を、ここまで赤裸々にそして具体的に暴いたものは少ない。単にイスラエルとパレスチナでの残虐行為を非難するだけでは、それは決して終わることがあるまい。その残虐な人間破壊を根底から支える米国ユダヤ人社会とそれを受け入れ疑問を拒絶する米国(およびその眷属諸国家)の在り方そのものが問題なのだ。
それは我々非ユダヤ人にとってはタブーの壁に囲まれている世界なのだが、このペトラスや、ミシェル・チョスドフスキー、イズラエル・シャミール、ステファン・レンドマンなど、その内実を知り尽くす自由なユダヤ人士からの告発は、今後の世界にとって決定的な意味を持つものと思われる。したがって、この種の論文から優先的に復刻させていきたいと考えている。
ひょっとすると(人によっては)「知りたくもないようなこと」を多く含んでいるかもしれないが、お時間の許す限りじっくりと確かめながらお読みいただくことを願っている。
2013年11月 バルセロナにて 童子丸開 拝
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【以下、復刻の文章:2008年12月】
(訳者より)
ジェイムズ・ペトラスは、前ニューヨーク州立大学ビンガムトン校社会学教授であり、現在、カナダのハリファックスにあるセイント・メアリー大学で教鞭を執る社会学者、作家である。米国では代表的な「左翼の論客」だが、彼の徹底した事実重視の姿勢とシオニストに対する容赦の無い姿勢で、同じユダヤ系でありながら、ノーム・チョムスキーやノーマン・フィンケルシュタイン(ペトラス自身の元愛弟子)とは明確に一線を画す。翻訳に用いた論文は2007年11月に彼自身のHPで公表されたもので、次のpdfファイルに収められている。また同時にイズラエル・シャミールのHPでも読むことができる。またこれには「死の抱擁」という副題がついている。
http://www.lahaine.org/petras/b2-img/petras_zion.pdf
http://www.israelshamir.net/Contributors/Contributor62.htm
Zion-power and War: From Iraq to Iran The Deadly Embrace
ここで彼は「the Zionist Power Configuration= ZPC」という言葉を多用している。これはおそらくペトラス自身による造語だろうが、ここでは字義通りに「シオニスト権力構造」と訳しておく。また彼はこの論文で他に「Zion-power(シオン権力)」「Zion-con(シオニスト・ネオコン、シオン・コンあるいはジオコン)」「Zion-lib(シオニスト・リベラル、シオン・リブあるいはジオリブ)」 という用語も使用する。
また原文にある“authoritarianism”という単語は「独裁主義」と訳した。この単語は辞書的には「権威主義」と訳される場合が多いが、この日本語ではどうしても国家や社会全体に広がる独裁的な権力志向のニュアンスが薄れてしまう。したがってこの単語は必要に応じて「独裁主義」と訳されることがある。実際に英語でファシズムの教科書的説明の中では必ずこの単語が使われる。
ブッシュ政権がオバマ政権に移行する今日、米国の中東戦略では、以前のネオコン的過激主義は影を潜め、イラン攻撃に警告を与えてこれを中止させてきたブレジンスキーらの外交・隠密路線に取って代わろうとしている。これが米国内権力構造のいかなる変化によるのか詳しくはわからないが、とりあえず米国とイスラエルによるイラン攻撃の危機は去ったと言えるだろう。しかしシオニストによる世界支配の目論見が終わったわけではない。むしろフランスのサルコジ・ネオコン政権誕生に見るように、彼らの影響力はじわじわと世界に広がっている。米国の戦争政策では戦術的後退を余儀なくさせられた彼らだが、シオニストによるマスコミと言論界、知識人層に対する独裁的な支配は延々と続き弱まる気配が見えない。
したがってこのような時期にこそ、目先の変化に目を奪われること無く、ブッシュ政権8年間の牽引車であり一時的な戦術転換に賭けているこの「シオニスト権力構造」の怪物的な実体について、その正体を見極めておかねばならないのだ。
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シオン権力と戦争:イラクからイランへ
死の抱擁
ジェイムズ・ペトラス 2007年11月
【序】
米国によるイラク攻撃に対する説明は、軍事・政治的な弁明から地政学的・経済的利益に焦点を当てる主張に至るまで、幅広く存在する。
元々の公式な説明は、サダム・フセインが米国やイスラエルと中東地域に脅威を与える化学・生物兵器その他の大量破壊兵器(WMD)を所有していたというものであり、それは現在では信用を失っている。WMDが全く発見されなかった際に、侵略に続く米国軍の占領に対してワシントンは、独裁者の除去とアラブ世界での意義ある民主主義の確立を叫んでその侵略と占領を正当化したのである。植民地傀儡政権の設置は20万人の正規軍と非正規の殺し屋部隊という帝国占領軍によって支えられたものだったが、イラク戦争の根拠に関する議論に嘘を付け加えている。その占領軍は100万人に近いイラク国民を殺害しており、400万人が亡命を余儀なくされ、人口の95%を貧困化させているのだ。最近の弁明では米国の占領が「内戦を防止する」ために必要であるとする言いざまが繰り返される。ほとんどのイラク人と軍の専門家は米国の植民地占領軍の存在が激しい紛争の原因であると考えているのだ。特に、米国軍の一般市民に対する破壊的な攻撃、対立部族のリーダーやクルド人商人に対する資金援助、そして一般市民を抑圧する地方の警察軍との契約である。大部分の米国人(世界の他の国民は言うまでもない)がこのような上っ面だけの主張では納得させられないために、ワシントン政権はその戦争の継続と占領を次のように言って理由付ける。世界と地域での超大国としての地位を維持するために、そして、中東地域における親米的な各政権に対してワシントンがその支配者集団を防衛しその重要な同盟者であるイスラエルの防衛を確保するために、支配地での軍事的勝利が必要であると。ブッシュのホワイトハウスおよび親イスラエルの議会指導者達は、イラクでの勝利が世界的な「反テロ」(反抵抗)政権として成功するワシントンのイメージの基盤となるだろうと主張する。こういった後付けの正当化は戦争が長引くにつれて信用を失い、イラク、アフガニスタン、レバノン、ソマリア、タイ、フィリピン、パキスタンなど各国での国民の抵抗は増大する。戦争が長引けば長引くほど、経済的な負担と軍人たちへの抑圧はますます大きくなり、帝国の防衛にあてがう能力を維持する作業はますます困難となる。
もし、イラクとアフガニスタンでの米国の侵略戦争に対する政治的・軍事的な公式の正当化が空虚に響きほとんどの人を納得させないものならば、この戦争の経済要因を説明してブッシュ政権を批判する主張の中で、いったい何が、唯一ではないが主要なものとして、前面に押し出されているのだろうか?
この戦争の経済的な決定要因での主な焦点は石油に関する事柄に当てられている。「石油のための戦争(*)」としてである。この説明もまた様々な種類に分かれるのだ。第1の、そして最も人口に膾炙するものは、米国の巨大石油企業(Big Oil:ビッグ・オイル)がこの戦争の背後にいた、というものである。つまり、ブッシュとチェイニーがその巨大石油企業に押され、国営であったイラクの油田と石油精製基地を米国石油企業のものにするためにこの戦争を立ち上げたという説明だ。第2のバージョンはそれをやや修正したものだが、ホワイトハウスが巨大石油企業に押されたのではなく、必然的な行動としてそれらの利益のために行動した、というものである。(これは、この戦争を追求する際になぜ国際的な巨大石油企業のスポークスマンがメディアや議会のホールに驚くほど顔を出さなかったのかを説明するために持ち上げられた。)
(*最近、9月と10月に連邦準備委員会の元議長アラン・グリーンスパンや米軍のジョン・アブザイド将軍などなどが行った発言を見よ。)
第3のバージョンでは、サダム・フセインによって脅威にさらされていた米国の安全保障上の国益という理由から、石油を確保するために米国が戦争に走ったとされる。この説明では、サダム・フセインがホルムズ海峡を閉ざして湾岸諸国を侵略し、サウジアラビアでの反乱をそそのかし、そして/または、米国とその同盟国への石油輸送を減らすという危険性があったと指摘される。言い換えると、中東の「地政学」によって、親米的ではない政権が米国や欧州や日本への石油輸送に対する脅威であったとされる。これは明らかに、以前はWMDプロパガンダの推進者であったアラン・グリーンスパンによって打ち出された最新の主張なのである。
この「石油のための戦争(‘war for oil’= WFO)」論の推奨者たちは事実に基づく各種の検証をしていない。まず石油企業は、議会へのロビー活動でもあるいはその他のあらゆる政治的な手段を通してでも、戦争へ向かうプロパガンダを決して熱心に支持してはいなかったのだ。次に、「石油のための戦争」論推奨者たちは、石油企業があの侵略の前に行っていたイラクとの経済関係発展の努力を説明できない。実際にイラクの石油を取引するためにこっそりと第3国を通して働きかけていたのだ。第3に、中東地域における主要な石油企業の全てが、政治的な安定とこの地域での経済政策の自由化、そして外国人投資家のための石油取引開始に主要な関心を向けていたのである。ビッグ・オイルの戦略は、中東地域で進行中の自由化プロセスとその巨大な市場支配力―投資と技術―によって新たな市場と石油資源を勝ち取ることを通して、世界的な利潤の伸張をはかることだった。米国のイラク侵略開始は非常な心配と懸念をもって見られたのだ。軍事行動がこの地域を不安定化させ、湾岸地域全体を通しての彼らの利権に対する敵対感を高めさせ、自由化プロセスを遅らせるだろうからである。あらゆる石油企業の経営陣の誰一人として、米国の侵略戦争を「国益」追求の手段として肯定的に見なすことはしなかった。なぜなら彼らは、サダム・フセインが湾岸地域の石油企業や国家に対して何らの攻撃的な行動を行うような立場にいないことを理解していたからだ。サダムは10年間に渡る経済的・軍事的制裁を受け続け、クリントン政権の間中、繰り返し軍事施設やインフラに爆撃を受けてきたのである。さらに加えて、石油企業は戦争が近づく際にサダム・フセイン政権と有利な石油の提供と通商の協定を発展させる現実的な見通しを持っていたのだ。巨大石油企業に対してそういったイラクとの経済的な合意成就のための法案成立を(制裁を通して)阻んだのは、シオニスト権力構造(Zionist Power Configuration =ZPC)に後押しされた米国政府だったのである。
巨大石油企業が自らの利益のために戦争を推進したという主張は事実に基づく検証が行われない。逆に、巨大石油企業は米国による占領のために利益を失ってきているのである。紛争が激化し、破壊活動が続き、私営化に対するイラク人石油労働者の抵抗が予想され、全般的に治安が悪化し、不安定化とイラク国民の憎悪がつのるからである。
米国の左翼は、イラク戦争が石油に関係するものだったというアラン・グリーンスパンの表明を飛び越えて、それを何の根拠も無いままである種の信念にまでしてしまった。だがしかし、5年前の開戦以来の日々を通して明らかにされてきたのは、「ビッグ・オイル」が侵略を推進しなかったばかりか、16万の米軍に加えてペンタゴンと国務省が支払う3万人の傭兵の存在と買収された傀儡政権があるにもかかわらず、油田の保安をただの一つとして確保していない、という事実である。 2007年9月19日付のロンドンのファイナンシャル・タイムズは、イラクにおける「石油メジャー」の顕著な不在に関する記事を大きく取り上げた。「巨大石油企業はイラクの埋蔵石油に対して待機戦を行う “Big Oil Plays a Waiting Game over Iraq’s Reserves” (September 19, 2007)」という記事である。いくつかの小規模な企業(oil minnows)が北部イラク(クルディスタン)で契約を結んでいるが、それはイラクの石油埋蔵量の3%である。「ビッグ・オイル」はイラク戦争を始めたのでもなく戦争から利益を得ているのでもない。どうして「ビッグ・オイル」が戦争を支持しなかったのかという理由は、彼らが占領後に投資をしていない理由と同じものである。「暴力のレベルはいまだに受け入れがたいほど高い。・・・。むしろ党派同士の間の緊張が増すために合意が結ばれる見通しは減り続けている。(同誌)」巨大石油企業にとってこのシオニスト主導の戦争に向かう最大の悪夢はすでにことごとく確定的なこととなっている。巨大石油企業の交渉と第3者の取引が戦前のイラクに安定と石油や収入の絶えることの無い流れを造っていたのだが、あの戦争がそれらの収入をゼロにしたばかりか、次の10年に対するどのような新しいオプションをもとことん奪ってしまったのだ。
戦争があっても、この地域ではいたるところで自由化が進んでおり、米国石油企業と財政的な利益は前進してきた。米国がイスラム教徒を殺すことから発する障害や憎悪が増えたにも関わらずである。
ビッグ・オイル、つまりテキサスの億万長者達はブッシュ家の政治キャンペーンの貢献者なのだが、ことが中東政策に及ぶとシオニスト権力構造には太刀打ちできなかった。彼らは内的・外的な権力に欠けていた。議会に対してシオニスト戦争推進者の力を振るわせるためのユダヤ共同体組織のような鍛えられた草の根組織に欠けていた。戦略決定を行う上級部局での地位にも、米国メディアで軍国主義的なプロパガンダを流すハーヴァードやイェールやホプキンス出身のアカデミックな著述家の軍勢にも欠けていた。再版されたデイリー・アラート紙での声明と論評で衝撃的なことは、それが公式なイスラエルの好戦的な姿勢と全く何の違いも存在しないという点である。 イスラエルがジェニンで子供達を殺していようが、レバノンで人口密集地を爆撃していようが、ガザの海岸でくつろぐアラブ人の家族に砲弾を浴びせていようが、デイリー・アラート紙は、イスラエルの公式発表と、人間の楯や事故や学校の児童に混じる狙撃主や自己誘発的な凶暴性に関する見え透いた嘘を、単純にこだまさせるばかりである。全期間を通して調べてみるとイスラエルによる何十万人ものパレスチナ人集団追放を問う批評記事がただのひとつとして存在しない。これほどに巨大な人類に対する犯罪は無いために、米国主要ユダヤ組織の総裁たちが防御することはできないのだ。これこそまさにイスラエルの公式な政策に対する奴隷的な従順さである。 それは、シオニスト権力構造が、「左」の弁護者たちやウォルトとミアシャイマーですら主張するような、単なるもう一つのロビーなどといったものをはるかに超える何ものかであることを、明確にさせるものだ。シオニスト権力構造は、中東地域での支配をがむしゃらに得ようとする植民支配権力の政策と利権に向かう伝動ベルトとして、そして、我々の民主主義的な自由に対する最も深刻な独裁主義的脅威として、圧倒的に邪悪なものである。あえて批判する者は誰一人として親イスラエル独裁主義者どもの長い手を逃れることができない。 出版社はピケで封鎖され、編集者は恐ろしい目に遭い、大学新聞とその配布者は恐喝され、大学の学長は脅迫状を送りつけられ、地方や国の議員候補は落選させられて中傷され、会議はキャンセルさせられその会場は圧力をかけられ、教授連は首にされあるいは昇進を拒否され、企業はブラックリストに上げられ、団体の年金基金は危機に陥れられ、劇場での公演やコンサートは中止させられる。そのようにして、国家と地方のレベルでこれらの独裁主義的シオニスト諸組織による弾圧的な一連の行動がとられるのだ。一部の者の間に恐怖を、ずっと多くの者の間に怒りを持ち上げ、じわじわと敵意を燃え立たせ、そして沈黙する多数派の間に自覚を植えつけながらである。
「石油のための戦争」説の第2である地政学バージョンは国家の安全保障に焦点を当てよう。1991年の湾岸戦争の後、11年にわたる経済制裁と武装解除の間にイラクは、米国を後ろ盾にした北部のクルド人地区と恒常的な米国による爆撃や監視飛行によって、部分的に解体した貧しい弱小国となった。クリントン政権の間にイラクは何度も激しく爆撃され、50万人と推定される子供を含む100万人を超える国民が、米国が科した食料と基本的な医薬品と上水道施設の剥奪に関連する状況によって、早すぎる死を迎えたのだ。
2003年の侵略の以前に、イラクはその海岸線も領空も、国土の3分の1をさえも、コントロールすらしていなかったのである。米国の侵略が明らかにしたように、サダムの軍隊は通常の戦闘でいかなる防衛線をも張るだけの基本的な能力をほとんど欠いていたのである。外国の親米勢力に対してあるいはホルムズ海峡に対して脅威を感じさせるような戦闘機は1機すらも無かった。米国に対する頑強な抵抗は後にゲリラ戦の中で非正規軍が携わる形で行われるようになったのであり、バース党政権によって作られた正規軍によってではない。 言い換えると、米軍基地や石油施設や親米国支配者たちや中東の輸送と搬出航路に向かって「国家の安全保障」の概念をどれほど拡張しようとも、サダム・フセインは明らかに脅威ではなかったのである。それでももし、「国家の安全保障」の概念を再定義しこの地域における米国とイスラエルの支配に敵対する可能性を持つ者を物理的に消し去るという意味にするとしたら、サダム・フセインは国家の安全に対する脅威であったとレッテルを貼ることが可能かもしれない。しかしそれは、米国の対イラク戦争への説明に関する議論を新たな領域に持ち込むことになり、中東での米国とイスラエルのヘゲモニーを求める戦争を正当化する偽のWMDと「石油のための戦争」プロパガンダをでっち上げた政治勢力についての議論へと変わるだろう。 米国によるイラクへの侵略と占領の責任が誰にあるのかに関する、はるかに重要な隠ぺいのキャンペーンが、我々をイランとの戦争に引きずっていく現在のプロパガンダ攻勢と極めて緊密に関係しているのである。
【中略】
【イランとの戦争:シオニスト権力構造(およびイスラエル)にとっての最優先事項】
イラン破壊のためのイスラエルによるキャンペーンはすでに二つの戦争行動に結び付いている。2006年にイスラエルはレバノンを襲った。その狙いはイランの同盟者であるシーア派政治軍事組織ヘズボラーを破壊するものであったのだが、これは失敗した。その1年と少しの後(2007年9月6日)、イスラエルはより挑発的な行動に出た。何の攻撃も受けていないのにシリアの領土を爆撃してある軍事施設を破壊したのだ。シリアとイランが相互防衛協定を結んでいるため、このイスラエルの行動はイランとシリアが奇襲攻撃に対して反応するかどうかを試すために計画されたものだった。
イスラエル諜報部のプロパガンダ機関は、以前の大量破壊兵器の嘘と比較できる偽情報のひとかけらを準備した。彼らは、北朝鮮が建設して核物質を提供している核施設を爆撃した、と言い張ったのである。イスラエルの偽情報は即刻、ロサンジェルス・タイムズ、ワシントン・ポスト、ウォールストリート・ジャーナル、そしてニューヨーク・タイムズといった米国の主要新聞や、あらゆる大テレビネットでその通りに繰り返された。親イスラエル・プロパガンダの専門家達はこの攻撃を正当化し、ワシントン・ポスト記事(2007年9月20日)の中で次々と引用された。ワシントン・ポストは、親イスラエルの中東政策サバン・センター(今や信用を失墜したブルッキングズ研究所の中にある)で諜報「専門家」をしていたブルース・リーデル(Bruce Riedel)の発言を引用して次のように書いた。「それが重大な攻撃であったことに疑問の余地は無い。それは極めて重要な攻撃目標だった。それは、イスラエル人たちがシリアとの戦争を非常に気にかけており予想される戦争の可能性を小さくしようと望んだときに起こったものだ(ママ)。この決定は、シリアが戦争を起こす可能性があるという彼らの懸念にも関わらずなされたものである(ママ)。この決定はイスラエルの軍事計画者にとってこの攻撃目標がいかに重要であったのかということを表している」。言い換えるならば、イスラエルが「戦争を懸念して」いるために、プロパガンダ要員たちがこの攻撃目標の性格を知ることすらないような、挑発を受けていない戦闘行為に携わる、というのである!
2007年9月21日に、米国主要ユダヤ人組織代表者会(the Presidents of the Major American Jewish Organizations=PMAJO)の代表的なプロパガンダ紙(デイリー・アラート)が続いてこのワシントン・ポストで繰り返された好戦的プロパガンダを再生産し、それをワシントンと全国のあらゆるトップクラスの官僚と議員に送りつけ、AIPACのロビイストたちを動員してイスラエルの派手な戦闘行為に対する米国の支持を確保させたのであった。この詐欺的なプロパガンダの機能について明らかなことは、デイリー・アラートがファイナンシャル・タイムズ(2007年9月21日号4ページ)からの抜粋を極度に誤誘導させる形で公表した点である。それは、元記事に含まれていたイスラエル・シオニスト・プロパガンダを暴露する数多くの段落を抜きにして、「可能性ある」シリア-北朝鮮の核の結びつきというイスラエルのプロパガンダの線をつないだだけのものだ。このファイナンシャル・タイムズの記事は、米国進歩センター(the Center for American Progress)で核政策責任者を務めるジョセフ・サークシオン(Joseph Circcione)の次の言葉を引用している。「イスラエルの攻撃がシリア-北朝鮮間の明確な核開発協力に関連するものであるとは非常に考えづらい。基本的で周知の事実なのだが、シリアの40年間に渡る核研究計画はあまりにも初歩的でありいかなる兵器能力をも高めることができるものではない。米国の各大学はシリアよりも大きな核施設を持っているのだ。」(ファイナンシャル・タイムズ、2007年9月21日)ブッシュ大統領の元アジア担当顧問で北朝鮮研究の専門家であり今は戦略国際研究センター(the Center for Strategic and International Studies)にいる人物も同様にイスラエル-シオニストの核兵器策謀の正体を暴く。「もし北朝鮮がシリアに核兵器用の物質を運ぶほどに愚かだとしたら、あるいはシリアのような北朝鮮の外にある場所で作業をしようとしていたのなら、私にとっては驚愕の極地だろう(ママ)」。イスラエル-シオニストの戦争プロパガンダにとって同様にまずかったことに、ブッシュ政権は2007年中に行ったあらゆる会議の期間に北朝鮮のシリア関与の可能性を一言も取り上げなかった。それがシリアに対する敵意を非常に掻き立てることであり、攻撃を仕掛けるためのあらゆる口実を探しているにも関わらず、である。ブッシュ政権がイスラエルの言い訳に大慌てでなびいていった前述のイスラエルの挑発行為とは逆に、ブッシュはイスラエルによるシリアに対する攻撃についてのコメントを拒否した。どうやら、それが米国を引きずり込もうと願うイスラエルの挑発行為であったと彼の諜報係官からアドバイスを受けたものとみえる。
シリアとその国防に対するイスラエルの戦闘行為、および米国シオニスト権力構造によるその支持は、イランとシリアに対する合同の戦争に米国を引きずり込む最新のステップである。2007年6月から9月までの180に及ぶデイリー・アラート(米国主要ユダヤ人組織代表者会の私的機関)の記事を全体的に調査すると、イランとの戦闘行為に取り掛かり、イランに厳しい経済制裁と海上封鎖を押し付け、そしてイランとの全面対決を準備するように求めるという、3種類の要求を米国に対して行っている。イスラエルの好戦的な姿勢に対して疑問を発するような記事や声は唯の一つも見当たらない。デイリー・アラートの全ての記事はイスラエルの主張をオウムのように繰り返す。イスラエルがガザ地区で100万人の閉じ込められた市民に対して行う残虐な電気、ガス、飲料水の供給停止を支持するときでもそうである。それは国際法のもとでの戦争犯罪行為なのだ。デイリー・アラートの文章の中では、イスラエルが丸腰のパレスチナ人の少年や少女を「戦闘員」「狙撃主」というレッテルを貼って殺害する。そしてデイリー・アラートはイスラエルの「和平交渉」を「誠意をもって」実行されているものであるかのように描く。実際には土地の収奪と子供達を含む大勢のパレスチナ人の殺害が継続中なのだ。「米国大統領ジョージ・W.ブッシュが(アナポリス)和平会議を2007年7月16日と10月15日に開催する間に、イスラエル軍は12名の子供を含む104名のパレスチナ人を殺害した。」 ファイナンシャル・タイムズ(2007年10月18日号、4ページ)
2006年11月にイラク戦争に反対する選挙民の怒りが増えたおかげで民主党が議会選挙で勝利した後、イスラエルの外相ツィッピ・レヴィはワシントンでAIPACの会議に出席し、数千人のシオニスト活動家と米国民主党・共和党議員の巨大な分隊に対して、ブッシュ政権によるイラク占領を支持し続けるようにかり立て、イランに対する新たな戦争に向けて彼らを扇動した。極めて扇情的な長談義の中で、彼女はありもしないイランの核開発能力の「実際的な脅威」を絶叫した。このユダヤ・ロビー全員がその意思を汲み行動に向かったのである。
シオニスト権力構造の広がりと深さと中央集権的な仕組みはあらゆるものにも勝る。それは「ロビー」という言葉で適当に誤魔化されうるものだ。この点で、ミアシャイマーとウォルトはイスラエル・ロビーの研究の中で親イスラエル勢力の権力と政治的影響力を過小評価している。続いて、シオニスト権力構造の力を量るには数多くの要素を計算に入れなければならない。それらの中にはその直接的な力と共に間接的な力も含まれる。シオニスト権力構造が持つ力は、直接的には政治的、学術的、そして文化的な意思決定を行う者達に及び、彼らのポリシーが親イスラエル的、親シオニスト的な利益を支えることを確実にさせる。もっと直接的なその力の表現は、シオニストたちがトップの意思決定部門を占領しイスラエルの軍事的・経済的な利益のための政策を作る場合である。国家安全保障委員会(the National Security Council)でブッシュ大統領の重要な中東顧問を務めるエリオット・エイブラムズがその多くの例の一人だが、祖国安全保障省長官であるマイケル・チャートフ(Michael Chertoff)も同様である。彼は与えられた資金の4分の3を私的なユダヤ組織の「安全保障」に割り当てているのだ。
同様に恐ろしいことに、シオニスト権力構造は数多くのメカニズムを通して間接的な影響力を行使するのである。その一つとして、議員たちの小グループを通して大多数と交渉する力がある。たとえば、AIPACが法案を作り上げそれをリーバーマン上院議員に提出させ、そしてキル(Jon Kyl)上院議員が共同署名し、イラン革命防衛軍を「テロリスト」としてレッテル貼りを行ったのだが、それはブッシュに攻撃を仕掛けさせる道をならすものである。この法案は議会の80%の賛成を得て通過した。
累積的な権力はある一つの案件に対してシオニスト権力構造の様々な要素が集中することによって作られる。例えば、親イスラエル的な作家とあらゆる主要組織と左翼から極右までの範囲にいるユダヤ人たちが、ミアシャイマーとウォルトの論文とそれに続く本を、共同で非難する。そのほとんどが人身攻撃(「反ユダヤ主義者」)か、あるいは事実に基づくデータを無視する非論理的で複雑怪奇な主張の、どちらかに訴えるのだ。
プロパガンダを張ることはシオニスト権力構造好みの強力な武器である。これは、現在と未来の政策立案者を恐れさせるためにイスラエルとシオニスト権力構造による懲罰的な批判を上手にばら撒くことである。その例として、ハーヴァード法科大学院のシオニスト・ファシストの教授であるアラン・ダーショヴィッツ(Alan Dershowitz)はシオニスト権力構造に支えられてキャンペーンを成功させ、ノーマン・フィンケルシュタイン教授を大学のポストから追い出した。これが将来イスラエルを批判する可能性のある全ての者に対する「見せしめ的な懲罰」として機能するのである。ダーショヴィッツのキャンペーンは、ナチの死の収用所を生き延びたフィンケルシュタイン教授の病気の母親をユダヤ人「カポ」つまりナチ協力者と中傷するまでに至ったのである。
シオニスト権力構造は、私的・公的な両面で相互に強制力を働かせあう複合的な手段を持っている。大きなスケールで長期間の政党と選挙に投資することは議会への影響力を手に入れることである。これは次に、党全体の大統領指名や議会で委員会の作業に対する支配権を手に入れることで、偉大な少数派であるシオニスト議員団の権力を増大させることになる。これが相互にフィードバックし、米国の中東外交政策を形作ることや主要新聞や週刊誌などの各メディア産業分野で意見欄に親イスラエル作家が登場することで、シオニスト権力構造のより大きな影響力を育てるのである。
シオニストの力はまた、長期間にわたる曲解に満ちた全く一方的なプロパガンダ・キャンペーンの結果でもある。そのプロパガンダはイスラエルのアラブ人、特にパレスチナ人の批判者を悪魔化し、(世界で第4、中東唯一の核戦力を誇る)イスラエルを、悪意に満ちた独裁政権に取り囲まれる民主主義の砦であるかのように描くのだ。この手法と主要メディアのほとんどの部分へのコントロールを通して、このシオニスト権力構造は、イスラエルによるレバノンの人口密集地やガザなどのあらゆる場所に対する恐怖の爆撃などの出来事に対して極めて偏った報道を提供する。米国でのシオニスト権力構造によって計画される世評作りの力は中東における現実を悪化させる作用として働き、それが、イスラエルによる軍事支配と土地収奪そして恒常的な暴力的攻撃という40年間の苦しみを受けるあらゆる年齢と男女のパレスチナ人犠牲者を暴力集団であるかのように仕立て上げ、イスラエルの惨殺者たちを善良で平和的な犠牲者であるかのように描くまでに至っているのである。
【後略】
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