安倍首相の靖国参拝に各国の日本批判強まる
- 2014年 1月 7日
- 時代をみる
- 池田龍夫
昨年末に我々は極めて重要な政治課題が突きつけられた。一つは安倍晋三首相の靖国神社参拝(12月26日)、二つ目が沖縄普天間飛行場の名護市・辺野古移設合意(27日)である。いずれも年明けの2014年に引き継がれる難題で、成り行きが注目される。
安倍首相の靖国神社参拝に、中国・韓国をはじめ米国、ロシア、欧州連合(EU)、国連の批判が瞬く間に広がり、深刻な外交問題の様相を呈してきた。極東軍事裁判(東京裁判)で侵略戦争を指揮した東條英機らA級戦犯14人が祀られている(1978年に突如合祀)からだが、特に同盟国・米国の厳しい批判は、今後の日米関係に影を落としている。
同盟国・米国が「参拝に失望」と異例の声明
安倍政権発足1年になる12月26日に参拝を強行した経緯は、各紙が大報道している通りで、〝戦前回帰〟を思わせる安倍首相の言動は看過できない。首相は東京裁判を「連合国側の勝者の断罪だ」「歴史認識は歴史家に任せるべきだ」などと公言しており、米国を苛立たせていた。米国務省は26日、直ちに「日本は大切な同盟国である。しかしながら、日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに、米国政府は失望している」との声明を発表。「遺憾」ではなく「失望(disappointed)」と、靖国参拝を厳しく批判したことは重大で、安倍首相の〝誤算〟どころの話ではない。
元日には新藤義隆総務相が靖国に初詣。中韓両国はさらに反発を強めている。
天皇は誕生日に「平和憲法」が果たした意義を強調
12月23日は天皇陛下80歳の誕生日。記者会見に臨んだ天皇が、「最も印象に残っているのは先の戦争のこと。日本人の犠牲者は約310万人にのぼり本当に痛ましい限りです。戦後、日本は、平和と民主主義を守るべき大切なものとして、日本国憲法を作って、荒廃した国土を再構築してきました。当時の知日派米国人の協力も忘れてはならないと思います」(お言葉の一部)と率直に語った姿が印象的だ。昭和天皇はA級戦犯合祀以来、靖国には参拝せず、今の天皇ももちろん参拝していない。
憲法第99条には「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務がある」と明記されている。これに反し、安倍首相の言動は改憲ムード一色。「積極的平和主義」などの詭弁に、日本国民は騙されてはならない。
普天間飛行場の辺野古移設合意の波紋も大きい
沖縄県の仲井真弘多知事は12月27日、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移転先となる名護市辺野古埋め立て申請を承認した。日米両政府が普天間返還に合意してから17年。在日米軍の74%を抱える沖縄県民の大多数が「県外移転」を求めて揉みに揉んできたが、安倍政権の政治的圧力に屈せざるを得なかった。
沖縄タイムス元日付社説は、「仲井真知事が辺野古埋め立て申請を承認したことによって、本土の人々はこれから、沖縄の異議申し立てを正面から受け止めなくなくなるかもしれない。『どうせ又カネでしょう』『結局、最後はお金だったね』。そんな声が本土側から噴き出している」と鋭く論評していた。
記者会見に臨んだ仲井真知事が「日米両政府は辺野古建設完了に9・5年かかるというが、それより前の5年以内に移設してほしいし『移設がむしろ重要なんですよ』というのが私の考え。(期間を)半分以下にするには県外にするしかないことがはっきりしている」と記者会見で語っていた姿が痛々しい。普天間の5年以内の運用停止、早期返還を安倍首相は明確に回答しておらず、普天間の危険性除去の重要性を知事と確認するにとどまった。いずれも空手形に終わりかねない。1月19日の名護市長選挙がどう〝決着〟するか。11月ごろに沖縄県知事選もある。多くの県民が県外移設を要求している現状から見て、大混乱が予想される。
これまで論じてきた2件の政治課題を安倍政権は処理できるか。4月からの「消費税8%」の影響も大きく、波乱の2014年になりそうな気配だ。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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