原発汚染水対策は進まず、いぜん高放射線物質の脅威
- 2014年 1月 16日
- 時代をみる
- 池田龍夫
福島第1原発からの汚染水問題は収束に向かうどころか、今なお基準を超す高放射線物質が流出している。東京電力が1月10日発表したところによると、敷地境界の年間被曝線量が周辺への影響を抑えるため廃炉計画で定められた基準「年間1㍉シーベルト未満」の8倍に当たる8㍉シーベルトを超えたとの試算を明らかにした。
「凍土遮水癖」工事の効果も不透明
1月11日付毎日新聞朝刊は、「汚染水は、壊れた原子炉建屋に地下水400㌧が流入し、溶けた核燃料に接触して汚染され、タンク内に貯蔵されている総量は昨年末で40万㌧を超えた。現在、東電は地下水の流入を防ぐため建屋周辺の地中を凍らせる『凍土遮水壁』の設置を計画しているが、前例がない大規模な工事で効果は不透明だ」と、抜本的対策の無い実態を伝えており、収束の見通しは真っ暗だ。
元凶は「ストロンチウム90」
福島民友同日付朝刊も同様な記事を掲載しており、「採取した水からは放射性ストロンチウム90が1㍑当たり5・9ベクレルを検出した」と伝えていた。ストロンチウム90などベータ線を出す放射線物質は、物体を通り抜ける力は弱いという。ところが、タンク内の鉄に衝突すると透過力の高いエックス線が上昇する。この影響で、昨年3月末には基準を下回る年間0・94㍉シーベルトと見積もっていた試算は、同年5月には年間7・8㍉シーベルト、同12月には年間8・04㍉シーベルトまで上昇したというから、恐ろしい。
遠洋のクロダイから、初めて汚染物質
これとは別に、NHKが13日報じたところによると、「福島第1原発から40㌔離れた福島県沿岸で、食品の基準の124倍に当たる放射線物質を含むクロダイが見つかった。調査した横浜市の研究機関は事故当初、原発近くで高濃度汚染水の影響を受けたものが移動したとみられる」と話している。同市にある水産総合研究センターなどによると、昨年10月と11月、福島県の沿岸でクロダイ37匹を採取したところ、このうち1匹から、食品の基準の124倍に当たる、1㌔グラム当たり1万2400ベクレルの放射性セシウムが検出されている。
またNHKは「クロダイが獲れたのは福島第一原発から40㌔ほど離れた場所。原発の港以外の福島県沿岸で1万ベクレルを超える魚が見つかったのは、事故直後の時期に獲ったコウナゴと、一昨年8月のアイナメの22回だけだという」と、伝えている。
核燃料取り出しなど難題山積
このところ、汚染水に関する情報が不足していたが、いぜん高濃度放射線が猛威をふるっている実態に、改めて愕然とさせられた。あと2カ月弱で「3・11事故」から3年を迎えるが、汚染水対策だけでも、これほど手間どるのだから、使用済み核燃料取り出しなど廃炉作業の先行きはどうなるのか、突きつけられた難題は大きい。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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