社会理論学会第106回月例研究会
- 2014年 3月 2日
- 催し物案内
日時:2014年3月29日(土) 14:00~17:00
場所:大東文化会館403号室
【会場案内】
大東文化会館
〒175-0083 東京都板橋区徳丸2丁目4番21号 電話:03-5399-7038
案内図:http://www.daito.ac.jp/campuslife/campus/facility/pdf/culturalhall_access.pdf
タイトル:日本文化の土壌とキリスト教
報告概要: 長崎ウェスレヤン短大、および共愛学園前橋国際大学で長年教鞭をとっている中で、一つ、心に引っ掛かることがあった。それは、二つの学校の生徒に共通する「キリスト教に対するプラスとマイナスのイメージ」である。学生たちの多くは、キリスト教に対して、「憧れ」と同時に「恐怖感」を持っている。キリスト教に対する憧れは、ほぼ西洋文化に対する憧れと一致するものだが、それと同時に、アンケートの回答の中からは、「宗教は怖い」という感想が現れてくる。キリシタン禁教の時代から引き継がれたと思われる「邪教としてのキリスト教」、あるいは、オウム真理教に代表される幾つかの新興宗教が引き起こしてきた凶悪事件から連想される宗教に対する漠然とした不信感。後者は丁寧な説明によってある程度軽減することは可能だが、前者については、長い歴史の中で構築されてきた感情だけに、説明しても軽減することが難しい。
2014年1月9日、松本清張の『黒い福音』がテレビで放映された。麻薬や統制品であった砂糖の密輸で経費をねん出しようとしてきたカトリックのグリエルモ教会が引き起こしたスチュワーデス殺人事件が題材であるが、その背景には、遠藤周作のいう「沼地」のような日本文化と「ゴシック建築」に代表される西洋文化との不協和音が漂う。
従来、明治維新以前の日本人にとって、キリスト教は恐るべき邪教であった。ザビエル来日以来、キリシタン伝道と外国からの侵略は紙一重であり、日本の指導者たちはその恐怖心に脅えてきた。隣国中国におけるアヘン戦争でも、英国の中国侵略と征服、そして、その後の民衆の支配の為に、キリスト教が少なからず貢献してきた歴史を日本人は見てきた(古屋安雄/大木英夫著『日本の神学』ヨルダン社、1989年、pp.91~2)。また、我が国の歴史の中で、キリスト教の米国から、広島と長崎に原子爆弾を落とされた記憶は新しい。戦後、その敵国であった米国の強力な援助のお陰で今日の日本の繁栄が築かれたことも、その根底にはキリスト教の愛の精神があったことも十分理解した上で、なお、拭い去れない不信感や恐怖心が残っている。近年においても、欧米諸国がキリスト教を国家政策に利用しているのではないかと思われる多数の事例が浮かび上がる。第一次、第二次世界大戦中の英国、あるいはドイツなどにおける護国教会としてのキリスト教信仰と同様に、米国キリスト教に対する不信感も少なくない。ベトナム戦争に多数の従軍牧師を参加させ、侵略する米兵を祝福して正当化したり、イラク侵略においても、ブッシュ大統領はアメリカの政策を神の意志として正当化し、軍事攻撃してきた事実を我々は間近に見てきた。
現在の日本のキリスト教は、プロテスタントのみならずカトリックでも停滞期にある。
このことについては、『キリスト教史学第67集』(2013年、「キリスト教史学会」)で「日本ではなぜキリスト教信徒数は増えないのか」(宮崎賢太郎)がカトリックの視点から論じている。カトリックの信徒数は年間2000人の微増であるが、「停滞」だと指摘されている。プロテスタントではもっと明らかな衰退が確認できる。2014年版『日本基督教団年鑑』によれば、ここ10年間で、信徒数は2万人近く減り、礼拝出席者数もほぼ4000人、教会学校の出席者に至っては、6000人以上のマイナスが確認できる。「教団ジャーナル 風」(2013年3/18日号 Vol.41)でも教団教会の衰退を特集し、2013年9月10日の日本基督教学会では、古屋安雄が、「なぜ日本にキリスト教は広まらないのか」と題して、キリスト教伝道の停滞ぶりを公演している。そこで、数々の問題の背景となる「日本文化の土壌」と現在急激に変貌しつつある「日本文化とキリスト教の課題」について考察したい。
報告者:野村誠(共愛学園前橋国際大学)
会場費:300円
13:00より編集委員会・理事会があります。
(参加者は事前に昼食を済ませておいてください。開始時間が変更になりましたので、ご注意ください)
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