管理職とは違う、マネージャの責務について考える
- 2014年 3月 3日
- 評論・紹介・意見
- 藤澤豊
マネージャと管理職が同じ意味と勘違いされていることが多い。まず管理職について考えてみる。管理職の“管理”が何を意味しているか?管理の対象をリストアップしてみれば見当がつく。思いつくままに、いくつかをリストアップしてみる。健康管理、品質管理、納期管理、。。。これから分かるように、管理の対象は本来物ででしかない。人も人によって構成される組織も管理の対象ではない。
ではマネージャはどうか?今更だが、英語のmanagerがカタカナ表記でマネージャ。そのもとは動詞の“manage”。英語を母国語としない人たちにも分かりやすい英語辞典Longmanには、manageの説明として「do sth (something) difficult、to succeed in doing something difficult, especially after trying very hard」と記載されている。直訳すれば「厳しい状況下で一所懸命やって目的を達成する」辺になるだろう。
以下はmanageする人の意味であるmanager = マネージャの責務についてであって、管理職の責務ではない。巷ではしばしば誤解されているようだが、管理職とマネージャは本質的に全く異なる職責だ。
多くの反論があるのを承知で、マネージャの責務は極論すれば次の二点に集約されると考えている。
まず、第一に自分が率いる部隊が自由、闊達に任務を遂行しうる環境を提供する。この視点からみればマネージャはサーバントリーダと言ってさしつかえない。ぴったりした例が思い浮かばないのだが、例えば野球の監督は野球をしない、野球をするのは選手だ。監督として試合に勝つために様々な手は打つし、選手に指示も出す。勝ったとしてもお立ち台にあがるのは選手で監督ではない。第二は、自分がいなくなっても、次の、新しい環境に適応し、できればそれを先取りするかたちで、自己成長を図ってゆける体制や文化を作り上げること。要は、いなくなるために仕事をしているという自覚が求められる。たとえ自らが作り上げた組織であっても、いつまでもその組織にしがみついているようではマネージャ失格と言わざるを得ない。作り上げたものを次の世代に渡して自らは次のきついミッションの遂行にとりかかる。
第二の要件は数年かけての作業になるが、第一の要件は日々その手腕を問われる。第一の要件の一例として上部組織から下りてきた来期の販売目標を考えてみる。
前期比15%売上増を目標された今期ですら目標に達するか微妙な状態のなかで、来期は新製品も何もないのに、今期比20%の売上増を要求されている。市場は成熟市場でよくても現状維持しか期待できない。このような環境下で部下の営業マンにただ頑張れとはっぱをかけたところで成長も望めないばかりか、しばし部隊が疲弊するだけの結果となりかねない。中間管理職である営業マネージャとしては、営業部隊が20%増の売上げを目標として掲げてもおかしくない、フツーに頑張れば達成可能な目標とし得る環境を営業部隊に提供する責任がある。
今までと同じようなことを同じようにやっていたら多分同じような結果になるのは目に見えている。環境改善に当たって、まず、視点を売上を20%伸ばすという考え方から営業部隊の生産性を20%伸ばすと切替えることから始める。こう考えれば、多少は具体的に何をしたらよいのか見当がつき始める。
営業部隊が本来の営業の仕事である-注文をとる-こと以外に、例えば営業活動付帯業務や環境整備に時間と労力をとられすぎていないか?営業が営業の仕事に専念できる環境を提供してもらえているか?営業部隊には極力営業本来の仕事に専念してもらい、周辺の仕事は別部隊でその専門家部隊に任せる体制をとらなければ、いつまでたっても営業部隊の生産性は上がらない。
この環境を作り出し、営業部隊に提供するのはマネージャの責務だ。この責務を理解せず、環境を提供することなく営業マンを激励するだけの能力の方々はマネージャではなく、ただの管理職に過ぎない。
何時の時代にどういうわけでmanagerが管理職と訳され、両者が同じ職責の人たちを意味するようになったのか知らない。ただ、そろそろ人を物と同じように“管理”するという人権を無視したような貧しい社会認識というのか分化から脱却しなければならない時だろう。世間一般でいう管理する立場にある管理職の人たちがはたしてどれほどmanageする能力があるのか。物の管理のための教育を受け、物の管理しか出来ない、manageできない管理職にいったいなにを期待できるのか。ましてや上記の二点のマネージャの責務など考えていらっしゃる方は希だろう。次の時代のためにも、早々に管理からmanageに脱皮して、二点の責務を考えて頂けないか。
Private homepage “My commonsense” (http://mycommonsense.ninja-web.net/)に掲載した拙稿に加筆、編集
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