BiHをめぐる民族的自立と米欧の介入の衝突
- 2010年 11月 8日
- 時代をみる
- BiH問題岩田昌征欧米の介入民族自立
ポリティカ紙(ベオグラード、11月1日、2日)にサライェヴォから興味深い記事が特派員D.スタニシチによって送られていた。
かつてアメリカ大使でBiH(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)問題アメリカ大統領顧問を務めたウイリアム・モンゴメリーは、サライェヴォTV1のジャーナリストの問い「BiHの将来は如何」に応えて次のように語った。
―BiHは崩壊国家であって、そこでは何も機能していない。ボスニア戦争終了後、15年にわたる国際共同体の努力にもかかわらず、何も解決していない。この国のセルビア人もクロアチア人もBiHを自分たちの国、そこに住みたい自分たちの国だと感じていない。クロアチア人はいつもクロアチアに目が向いているし、セルビア人はセルビアに住んでいるように振舞っている。BiHの政治家たち、とくにボシニャク(ムスリム)人は、このようなオルターナティヴを考慮すべきである。
サライェヴォTV1のジャーナリストの問い「かつて何がBiHに起ったのだ!それはセルビアとクロアチアからの侵略なのか、ジェノサイドなのか」に対して・・・。
―それがジェノサイドなのか、あるいは恐ろしい犯罪なのか、どの定義に合うのか、私にはわからない。あなた方は過去にこだわりすぎる。
このようにボシニャク人にとって不快な言を聞かされて、このジャーナリストも言い返す。
―あなたはミロラド・ドディク(セルビア人共和国の首相)のロビイストだ。彼よりも毒のある存在だ。BiHは千年の歴史ある国だ。戦争もこの国を壊せなかったし、あなたのようなロビイストにもできはしない。
あるボシニャク人政治家の反応は、
―モンゴメリーの立場は大クロアチア主義のロビー。二十万人の愛国者がBiHのために命をささげた。
サライェヴォの国際共同体の上級代表部は、ノーコメント。アメリカ大使館は「モンゴメリーはアメリカ政府を代表していない」。
岩田私見によれば、ボシニャク人との連邦から分離して、セルビア人共和国並みの準国家をもちたいクロアチア人は、この発言に大喜びであろう。大ユーゴスラヴィアを7ヵ国に解体して、かつ小ユーゴスラヴィアといわれるBiHを統一国家として維持しようとする米欧・ボシニャク人の方向性に無理がある。米欧のご都合主義とボシニャク人の悲願の不幸な結合といえようか。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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