5月27日の新潟県知事定例会見から「原発関連問題」
- 2014年 6月 8日
- 評論・紹介・意見
- chiba
5月27日(火)の新潟県知事定例会見から、「原発関連問題」の部分を抜粋します。
会見全文は新潟県ホームページをご参照ください。
http://chiji.pref.niigata.jp/2014/05/post-f32b.html#05
*質問する記者もいろいろですが、、、知事の発言にダメ出しするとはよほど自分の取材力に自信があったのか。呆れますね(ベント問題の部分)
*****ここから抜粋*****
(原発関連問題について)
Q
先日、関西電力の大飯原発(の運転再開の差し止めを求めた訴訟)において
あのような(差し止めを命じる)判決が下りましたが、そのことに対する知事
の考えをあらためてお聞きします。
A 知 事
基本的には原発の安全性について、福島第一原発事故の検証と総括を行うべ
きだと思っています。それを行わないと安全を確保できないのです。何が問題
であれほど大量の放射性物質を放出し、(周辺の)地域を取り返しのつかない
ような状態にしたのかと。設備や機器の性能だけで決まるわけではありません。
吉田調書でも明らかになったと理解しているのですが、そこについては反省点
があると(吉田元所長)自らが言われているわけで、新潟県としてもそもそも
初動がどうだったのかという話はずっと言ってきています。設備機器の性能以
外に、組織や制度、それぞれの機関の役割分担も含めて検証した上で対策をと
らなければ、やはり同じことが起き得ると思います。
(大飯原発に対する訴訟案件については)他県の原発についてのことであり、
詳細を承知する立場にありませんので、その部分については少しコメントが難
しいと思っています。
Q
私は現在、東京電力の取材をしているのですが、柏崎刈羽原発の再稼働が見
込めないとなると東電の収支が非常に厳しくなり、(電気料金を)再値上げし
てしまうかもしれないと。産業界を中心に(電気料金の再値上げが)日本の国
力を弱ませるのだというような議論もありますが、そのことについては知事は
どのように考えますか。
A 知 事
まず行わなければならないのは安全の確保だと思います。事故が起きるとど
れだけ(電力会社の)経営を圧迫し、日本の国力を下げるかというのは、福島
第一原発事故を見れば明らかです。例えば、新潟県から工業製品を輸出する際
も、一時期は証明書を付けなければなりませんでした。手続きに時間がかかる
し、負担もかかりますので、事故が起きてしまうと本末転倒なわけです。例え
ば、複雑な最先端技術を用いており、多くの組織と人員が関わるものとして
(原発と)似た例を挙げると、宇宙開発があると思います。米国の例で言えば、
スペースシャトルの打ち上げについて、コロンビアの空中分解事故やチャレン
ジャーの空中爆発事故がありました。このときには技術的なところについても
徹底的に調べました。また、例えばチャレンジャーの爆発事故であればОリン
グに不具合がありました。温度が下がることによって気体が漏れて燃料タンク
に引火したのですが、気温が低い中では(事故に繋がる)懸念があるという
ウォーニングを、組織としての判断に組み入れられなかったという人為的な問
題も含まれているわけです。そういったものも全部明らかにした上で、体制や
仕組を変えたと。長官の人事についても対応したと理解していますが、その上
で大統領が国民に向かって「リスクはあるが、我々は宇宙に行くのだ」という
ことで社会の合意を得て、次の一歩に踏み出しているわけです。(日本での)
現在の状況は、原因究明はしていませんし、規制基準については機器の性能と
断層くらいしか見ていません。先ほども言いましたが、吉田調書も含め、どの
ような判断を誤ったのかという組織の問題もあります。法令の欠陥もあります。
自然災害と原子力災害で全然異なる法体系で動きますし、そもそも福島第一原
発事故の際は法律に基づいた対応すらしていないわけです。そういった中で、
東京電力には経営責任を取った人はいますが、事故の責任は誰も取っていない
と。もう1つ申し上げると、2011年3月18日に、私に嘘の説明をしてい
ます。ビデオでも明らかなように、メルトダウンについては早い段階から認知
していたわけですが、3月18日の段階になっても、技術をわかる人が原発立
地県の知事に嘘をついているわけです。誰の指示によりどういったことをした
のかすら明らかにしていない中で、経済の話をしても仕方がないと思います。
Q
數土会長から面会の申し出があれば会いたいと考えていますか。
A 知 事
(申し出が)あればもちろんお会いします。
Q
今、數土会長が進めている東電の改革等について、期待するところはあり
ますか。
A 知 事
原子力については何か取り組んでいるのでしょうか。意思としては少し
伝わってきていません。
Q
先日開催された県の技術委員会において、フィルタベントを通して放射性物
質を外部に放出するまでの時間の想定について、県が提案していた6時間とい
うケースについても参考値と言いますか、補足的に扱うという方針が出ました。
そのことについて知事はどのように受け止めていますか。
A 知 事
以前も言いましたが、そもそも福島第一原発事故では(事故発生から)8時
間半で既にベントの判断をしています。そのことに対して国会事故調は遅いと
評価しています。従って、福島第一原発事故の現実に照らし合わせれば6時間
で検証するのが筋です。なぜ福島第一原発事故の際は8時間半でベントの判断
をしているのに、技術委員会で18時間や25時間という数字が出てくるので
しょうか。何か技術的なことをいろいろと言っているようですが、BWR(沸
騰水型原子炉)とABWR(改良型沸騰水型軽水炉)については発熱体積比は
一緒だと聞いています。そうすると、熱量の観点から(ベントの判断を)遅く
する理由はないのです。現実に8時間半でベントの判断を求められているのに、
それよりも遅らせる理由の方が不思議です。
Q
福島第一原発1号機について8時間半でベントの判断をしたことについて東
電に確認したところ、その段階ではベントしなければならない2Pd(格納容
器設計圧力の2倍)には達しておらず、1.5倍程度の状態で判断していたと
いうことです。その段階で判断したとしても2倍になるまではベントされない
ので、それよりさらに早い6時間でベントをしようということはあり得ないの
ではないかと思います。座長も、技術委員会としては18時間が技術的に妥当
性があるものだと考えており、(6時間というのは)技術的な前提にはならな
いと言っているのですが・・・。
A 知 事
本気でそう思っていますか。
Q
いろいろと取材した結果・・・。
A 知 事
国会事故調がなぜ8時間半では遅いと言っているのかを取材すべきだと思い
ます。
Q
国会事故調がなぜ8時間半では遅いと言ったのかという辺りは、技術委員会
での議論の中で全く出てきていないです。
A 知 事
簡単に言うと、アーリーベントをどうするのかということです。例えばギロ
チン破断が起きて、水が瞬間的になくなった場合、メルトダウンは30分以内
に起きるということも言われています。どの段階で格納容器が壊れるかだけで
議論するのがおかしいのです。NHKスペシャルでも報道されていましたが、
3号機がなぜ水蒸気で満たされたのかと。RCICの電源が切れると、軸受か
ら大量の放射性物質を含んだ水蒸気が漏れて中に入れなくなるということが起
きるわけです。ぎりぎりまで引っ張れば、その後で作業できなくなるわけです。
(格納容器が)壊れなければよいというところだけで議論するのであればその
ような議論になるのかもしれませんが、作業できなくなったらその後で何が起
きるかわかりません。例えば、使用済核燃料プールに亀裂が入って水が抜ける
という事態が起きるだけで、水がなくなった瞬間に7シーベルトくらいの線量
になるわけです。人が近づけなくなった場合にどのように収束するのかと。建
屋の中で活動できる環境を作るために、早めにベントするという選択肢もある
わけです。炉内で放射性物質が出ているかどうかや、メルトダウンが起きる前
なのか後なのかによっても本来(ベントの判断は)異なるはずであり、格納容
器の強度だけで議論するのが非現実的であるということに尽きます。もう少し
取材してきてください。
Q
委員の方々が、なぜ柏崎刈羽原発の場合には8時間半では早いのではないか
と言っているのかと言うと、格納容器の体積の・・・。
A 知 事
冒頭で説明しましたが、ABWR(改良型沸騰水型軽水炉)とBWR(沸騰
水型原子炉)の発熱体積比は一緒だと説明を受けています。
Q
技術委員会としては、注水も何もできなくなっているので6時間という想定
になるが、それだと直後に容器はつぶれてしまうので、(6時間のケースを想
定することに)意味はないという論をしています。技術委員会の提示の仕方が、
知事が言ってているアーリーベントの話と違うのではないかと思うのですが、
その辺りについて現場でうまく趣旨が伝わっていないのではないかと・・・。
A 知 事
ご指摘のようなところはあります。逆に言うと、格納容器破損によりいきな
り濃いものが出た場合のシミュレーションを行う必要があるのではないかと思
います。
Q
今のままだと、東電側としては、検証しても意味がない数字を出すことにな
るのだろうと思ってしまって・・・。
A 知 事
そのようなことはないと思います。知事会見で話すこととは違うような感じ
になってきたので、事務部局から説明させます。現場でやり取りしていただき
たいと思います。
Q
先ほど、東京電力は経営責任は取っているが事故の責任は取ってないという
話がありました。東電とともに原発再稼働に向かっている組織として経済産業
省や資源エネルギー庁があると思いますが、経済産業省も何か責任を取ったの
かと言うと、あまり取っていないように思います。知事から見て、経済産業省
の姿勢についてはどのように感じていますか。
A 知 事
事実関係として、放射性物質を地域に大量に放出して現実に影響を与えたの
は東京電力ですので、まずは東京電力がどういう行動をとり、なぜそうなった
のかという背景事象の検証なのだと思います。廣瀬社長と面談したときに、な
ぜ東京電力はメルトダウンを翌日には認識していたのに(発表を)2か月遅ら
せたのかと聞いたところ、国と調整が必要だったからということでした。つま
り、国から圧力があったからということを正直に言われました。誰から誰に対
してどのような話があったのかを技術委員会で聞いたところ、空気などとわけ
のわからないことを言っていますので、まずは誰からどこへどのような話があ
ったのかと。そして、3月18日の時点でメルトダウンしていないと私に嘘の
説明をした方はまだ訂正もしていません。どうして嘘をついたのかと。嘘では
なくて本当にわからなかったということであれば、7~8時間も原発を空焚き
して、それでメルトダウンがわからないような事業者は(原発を)運転する資
格がないと思いますので、その辺りについてはきちんと報告していただきたい
と思っています。そこを見ていくと、誰が何をしたのかがわかってくるのでは
ないでしょうか。
Q
例えば知事に対し、資源エネルギー庁長官の上田氏や、原子力事故損害賠償
支援機構の前事務局長である島田氏から何か働きかけみたいなものが・・・。
A 知 事
上田氏は当時、資源エネルギー庁長官ではないので、多分知らないと思いま
す。
Q
拡散シミュレーションについて、技術委員会ではベントまで6時間というの
はあくまでも参考値となっています。知事としては18時間や25時間という
ことではなくて、あくまでも6時間をメインにシミュレーションを確定して
いってもらいたいという考えなのでしょうか。
A 知 事
どういう形で運用するかということにも関わります。先ほど申し上げたとお
り、一番早いと30分以内にメルトダウンということもあるわけです。例えば
1時間に基準を置くとその時点で大量放出が起きるわけです。放射能から守る
ために一番重要なのは止める、冷やす、閉じ込めることです。福島第一原発事
故の教訓というのは、止めるのは成功したけれど冷やすことに失敗すると自動
的に閉じ込めに失敗して放射性物質を大量放出して大惨事になるということで
す。例えば全電源喪失したときに最初にどうするのか。以前お話ししたとおり
ですが、私も3月11日の4時半頃、担当者が駆け込んできて、海側のポンプ
が全部流されていますと報告を受けたのです。そのときに最初に聞いたのは、
どうやって冷やすのかということです。全電源喪失した後、どうやって冷やす
かというのは、(東電は)プロですから、例えば、圧が高くて原子炉内に水が
入らないのだったら最初にベントしておく、すぐにベントしなくともSR弁か
ら蒸気を出して格納容器内圧力を上げる中で消防注水を可能にするということ
も選択肢としてはあります。その中で、気圧が上がってきたときに、燃料が壊
れる前に冷やし続けるという選択をとるかどうか。本当はそういうことも考え
ないといけないはずなのです。燃料が壊れてから水をかけたら放射性物質を含
んだ濃いものが出るわけです。壊れる前に冷やし始めて壊さないようにすると
いうのがアーリーベントの考え方です。東電はアーリーベントはやらないと言
っているのでおかしいと思っているのですが、アーリーベントした方が結果と
して被害が少なくなる可能性があると。すなわちメルトダウンしてから放射性
物質が充満するとどうなるかと言うと、いろいろなものがあるのでフィルター
が目詰まりするという指摘もあるのです。そうすると最初の段階ではこしとれ
ますが、少し時間が経つとフィルターの効果がなくなって結局大量放出に繋が
ると。
原因を明らかにしないといけないのですが、1号機ベントにおいても、
ウェットベントしているはずなのに想定以上の放射性物質が放出されていると
いう記録が先日出てきました。こういったことも考えないといけなくて、格納
容器強度だけで議論するというのは、ためにする議論にしかならないのではな
いでしょうか。運用と避難というのはセットで考えないといけないというのは
そういうことを言っているわけです。
Q
ということは、拡散シミュレーションを作る上での前提条件としては、どう
いう条件が望ましいのでしょうか。
A 知 事
どのような運用をするのかによって、いろいろなケースがあり得るのではな
いでしょうか。格納容器の限度の限界まで引っ張った場合、現実として3号機
に人が入れなくなっているわけです。そのような状況になると、その後に処理
することはできません。4号機は水素爆発したためにキリンによって使用済み
核燃料プールに水を入れられましたが、もしも2号機のようにブローアウトパ
ネルが全く開かず、中にも入れないことになった場合、高濃度の水蒸気がある
建屋内の使用済み燃料プールはどうするのでしょうか。メルトダウンしてしま
います。従って、格納容器だけについて議論しているというのは、少し専門家
としてどうなのかという思いもあります。全体を見て対処方針を決めないとい
けないのです。核燃料棒が壊れる前に冷やすという選択であれば、全電源喪失
した瞬間にSR弁を開放し、ベントすることで(内部の)蒸気圧を下げ、消防
注水するという選択肢もあるわけです。当時のアメリカの国務長官はクリント
ン氏は、日本にいる空母部隊から冷却材(クーラント)を提供すると記者発表
しています。あのときに(アメリカの申し出を)受け入れていたらどのような
対応をとったのかと。もしかするとベント弁を早い段階で開放することもあっ
たかもしれません。その辺りもきちんと調べていただきたいということです。
燃料棒が壊れる前にベントして圧力を下げておけば、放射性物質は一部出ます
が、消防注水ができます。この辺りから先についてはさすがに技術委員会で議
論していただきたいと思います。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.ne/
〔opinion4877:140608〕
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