NHK監査委員会は籾井NHK会長、百田経営委員の定款等違反行為の差し止めを
- 2014年 6月 12日
- 時代をみる
- NHK醍醐聡
一つ前の記事で書いたように、「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」は6月6日、百田経営委員の罷免を求める申し入れをNHK経営委員会に提出した。その折、併せて、NHK監査委員会に対して、籾井NHK会長、百田経営委員の定款違反行為の差し止めを求める申し入れも提出した。
このように、監査委員会に対して、「行為差し止め」を求めた根拠は、監査委員会の権限を定めた次のような放送法第46条にある(下線は筆者の追加)。
放送法第46条(監査委員による役員の行為の差止め)
「監査委員は、役員が協会の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によつて協会に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該役員に対し、当該行為をやめることを請求することができる。」
いうまでもなく、NHK経営委員は放送法第49条により、NHKの役員である。また、NHK定款第10条には役員の服務に関する準則を定めるとあり、「会長、副会長および理事の服務に関する準則」、「経営委員会委員の服務に関する準則」の各第5条には、NHKの役員はNHKの信用を失墜させる行為を禁じた規定が設けられている。
したがって、特定の政党、個人、外国の人権と名誉、尊厳を貶める下品な暴言を吐いた百田尚樹氏の度重なる言動が「職務外」の行為であったとみなしても、職務内外を問わず適用される信用失墜行為(服務準則および定款違反行為)に当たることは免れない。
また、籾井会長の国際放送に関する発言も、以下の申し入れ文書に記載したとおり、放送法の関連条項に違反することは明らかである。
さらに言えば、NHK会長、経営委員に、「会長としても発言」と「個人としての発言」の使い分け、職務の「内」と「外」の使い分けが野放図に許されるわけではない。
いまや、2人がこうした暴言を繰り返すのをただの「口頭注意」で済ませ、毅然とした措置を講じない経営委員会の優柔不断な態度にも厳しい批判を向けなければならない。
と同時に、放送法第43条で「役員の職務の執行を監査する」権限を持ち、具体的に、放送法第46条で、法令・定款等に違反する場合、違反する「おそれ」がある場合に、そうした行為の差し止めを請求する権限を与えられている監査委員会が何らの対応も講じていないことを厳しく質す必要がある。
今回、「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」がNHK監査委員会宛に表記のような申し入れをしたのは、こうした問題意識からである。
以下は、申し入れの全文である。監査委員会には6月末日までに書面で回答をもらうよう、要請している。
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2014年6月6日
NHK監査委員会 御中
籾井会長、百田経営委員の言動に関する申し入れ
NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
共同代表 湯山哲守・醍醐 聰
監査委員各位におかれましては日頃より、放送法が定めた重責を果たすため、尽力されていることと存じます。
さて、籾井勝人NHK会長は本年1月25日の会長就任記者会見の場で数々の問題発言をしました。これについて、経営委員長あるいは経営委員会から3度も籾井会長に対して苦言、注意が申し渡されるという異例の事態となっています。
とりわけ、籾井会長が国際放送においては「政府が右と言うものを左と言うわけにはいかない」と発言したのは、NHKが政府の要請に基づいて国際放送を行う場合でも、「放送法」第65条第2項によりNHKの番組編集の自由が確保されていることをまったく理解していないことを意味すると同時に、「各国の利害が対立する問題については、一方に偏ることなく、関係国の主張や国情、背景などを公平かつ客観的に伝える」と定めた「NHK放送ガイドライン」に明白に違反しています。
また、安倍首相の靖国神社参拝について「総理の信念で行かれた。それをいい悪いという立場にない」とか、特定秘密保護法について、「政府が必要だと言う説明だから、様子を見るしかない」とか述べた籾井会長の発言は放送法ならびにNHK定款の全体を貫く放送の自主自律の立場を根底から覆すものです。
籾井会長は、これらの発言は個人的見解であり、自分の考えを放送に反映させるつもりはないと断っています。しかし、会長就任会見で籾井氏は、「最終的には会長が決めるわけですから・・・・私の了解をとってもらわないと困る。 NHKのガバナンスの問題ですから」と述べています。現に、4月30日の理事会で籾井会長は番組内容を検証した考査報告をめぐって議論が交わされた際、消費税率の引き上げで生活が苦しくなるという高齢者の声を伝えた街頭インタビューに口を挟み、そうした声を伝えるだけではニュースにならない、政府が検討している低所得者対策も個々の番組の中で伝えるべきだという持論に固執したと伝えられています。
こうした経緯を踏まえれば、籾井会長は、NHKの番組は国際放送にとどまらず、国内放送でも、政府の政策をくみ取ったものであるべきだという意見の持ち主であると同時に、それを個人の見解に留めず、番組制作にまで浸透させる意図を持っていると考えざるを得ません。 こうした意図が今後も現実の行為として実行される可能性が高く、そうなれば、NHKは自主自律の立場で放送を行うという視聴者の信頼を著しく損なうことは明らかです。
問題発言は籾井会長にとどまりません。本年1月22日、参議院議員会館講堂で開かれた「戦争反対! 女性大集合」に出席したNHK経営委員の長谷川三千子氏は、「私は安倍首相の応援団長です。このたび、NHKの経営委員にもなりました」と公言しました。
NHK経営委員の百田尚樹氏も、さる2月3日、都内3か所で都知事候補の田母神俊雄の応援演説を行い、田母神氏以外の候補者を「人間のクズ」と罵倒しました。さらに、百田氏は本年5月3日の憲法記念日に改憲派が開いた集いに登壇し、「護憲派は大ばか者」と放言したほか、5月24日には自民党岐阜県連の定期大会に出席し、「軍隊は家に例えると、防犯用の鍵・・・・」と述べ、軍隊を持たない南太平洋の島しょ国バヌアツ、ナウルは「家に例えると、くそ貧乏長屋で、泥棒も入らない」などと暴言をほしいままにしました。
これら2人の経営委員の発言について、経営委員会は、経営委員も職務外の言動言論は自由という見解を繰り返し、問題視しない態度を取り続けています。しかし、百田氏の最後の発言について、浜田経営委員長は「もう少し慎重に発言した方が良かった」と苦言を呈し、上村達男経営委員長職務代行者も他国を「くそ貧乏長屋」に例えたことは「いささか品格を欠く」と批判的な見解を示しました。
私たちは、NHKの役職者にも職務外の場では言論の自由が認められることは十分承知しています。しかし、政府首脳の場合がそうであるように、NHKの会長や経営委員が職務の内と外で公人、私人を使い分けることが通用するかどうかは、その地位、発言がなされた場面等の状況に照らして判断すべきであり、当事者の主観的意識だけで決まるものではありません。このことは、内閣総理大臣や閣僚の靖国神社参拝の例を見ても明らかです。 したがって、籾井会長、百田・長谷川両経営委員の上記のような言動を個人の言論の自由を盾に放免するのは不適切だと私たちは考えます。
現に、経営委員長職務代行者の上村達男氏は、籾井会長が国際放送に関して「政府が右と言うものを左と言うわけにはいかない」と発言した点、特定秘密保護法の報道に関して「(成立したので)もう言ってもしょうがない。政府が必要だと言う説明だから、様子を見るしかない」と発言した点を挙げて、「私は〔こうした籾井会長の〕個人的見解そのものに『誤り』があると考える」と断言しています。その上で、上村氏は「こうした見解を持ち続けたまま会長職を続けることはできないはずだ」とまで述べています(「毎日新聞」2014年5月5日)。
また、百歩譲って、百田氏の一連の言動が職務外のものだったことを考慮するとしても、同氏の上記のような品位と人権への配慮を欠く言動は「経営委員の服務に関する準則」に反するものです。なぜなら、「服務準則」の第5条で禁じられた信用失墜行為(NHKの名誉や信用を損なうような行為をしてはならないとする定め)は、人事院の指針を見てもわかるように、飲酒運転やセクハラ行為など、職務外の言動も含んでいるからです。
実際、NHKでも1991年、キャスタ-を務めていた松平定知氏が、泥酔してタクシーの運転手を電話機で殴ったり足蹴りをしたりするなどの暴行を働いた責任を問われて「NHKモーニングワイド」を年度途中で降板するとともに局次長級エグゼクティブアナウンサーから部長級チーフアナウンサーに降格されました。 NHKの最高議決機関である経営委員会の委員が他国や他者を侮辱する暴言を吐いた行為がNHKの信用に及ぼす影響は、松平氏の暴行が及ぼした影響よりもはるかに広く、重いのは間違いありません。
そこで、当会は貴委員会および委員に対し、以下の申し入れを行います。
【申し入れ】
放送法は第46条で、「監査委員は、役員が協会の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によつて協会に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該役員に対し、当該行為をやめることを請求することができる」と定めています。
1.籾井会長の放送法等からの逸脱行為の差し止め
前記のような籾井会長の一連の発言は、放送法第46条が定めた「役員が協会の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によつて協会に著しい損害が生ずるおそれがあるとき」に十分に該当するとみなされます。
そこで、当会は監査委員各位に対し、放送法第46条を発動して、籾井会長に対し、国策に沿った放送を行うとの言動ならびに指揮をやめることを請求するよう申し入れます。
2.百田経営委員の服務準則違反行為の差し止め
百田経営委員の野卑で人権を冒涜する発言、政治的公平を蹂躙する言動は目に余るものがあります。特に、5月24日に自民党岐阜県連の定期大会に出席し、「軍隊は家に例えると、防犯用の鍵・・・・」と述べ、軍隊を持たない南太平洋の島しょ国バヌアツ、ナウルは「家に例えると、くそ貧乏長屋で、泥棒も入らない」などと暴言を吐いたことはNHKの国際的信用をも失墜させる行為であり、経営委員の服務準則に違反することは明白です。
しかも同氏のこれまでの言動から考えて、こうした信用失墜行為が繰り返される蓋然性は極めて高いと考えられます。
よって、当会は監査委員各位に対し、放送法第46条を発動して、百田経営委員に対し、NHKの信用を失墜させる言動を差し止める措置を講じられるよう申し入れます。
以上
コーヒー入り牛乳の出来上がりを待つわが家の姉妹犬
(9年前の写真。姉犬<右>はもういない。)
初出:「醍醐聡のブログ」より許可を得て転載 http://sdaigo.cocolog-nifty.com
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.ne/
〔eye2656:140612〕
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