SWASH
- 2014年 6月 13日
- 交流の広場
- 熊王信之
某国某所に有るSWASH(Super Wicked Air Shooting Hector)
なる研究機関の一室で、研究員の緒母と、その上司の胡麻刷、所長の夢脳が何事かを、緊迫した表情で相談している。 やがて、耐え切れなくなった緒母が、肩を震わせて泣きながら訴える。
緒母「私が、悪いのです。 私が、論文をコピペしたのが悪いのです。 でも、SWASHの研究成果には、嘘なんてありません。 うううう。 一生懸命に研究したのに~。 みんなして私を苛めて、ひど~い!!」
夢脳所長「緒母君~。 泣かなくても。 私は、君を咎めてはいないのだよ。 ただ、論文にあるとおりに追試結果が出ないから。 何とかならないのか、と思ってね。 ああ~、マスコミが気づいて色々と書かれるし。 何とかならんのかね。
胡麻刷君、困るよ。 私は、君を信頼してみんな任せたのに。 」
胡麻刷主任「申し訳ありません。 私は、所長が、信頼されて研究を任された緒母さんがやることなので間違いは無い、と思ったので。」
夢脳所長「君、君は、私に責任があるとでも言うのかね。 卑怯じゃないか。」
胡麻刷主任「そんなこと言うてまへんで。 主任より所長さんの方が偉いんやさかい、責任も大きいでっしゃろ、と云うてまんね。」
夢脳所長「君。 きゅ、急に大阪弁になって。 この私を軽んじるのかね。 そ、そんな脅しは、ゆ、許しません。」
胡麻刷主任「何が所長や。 安い給料で、わしと緒母ちゃんをこきつこうて。 あんたら、せかすばっかりで、金は出さんし、出すのは口ばっかりや。 もうええわ。 今度のこと、解決策を考えて来たんや。 よう聞きや。」
小心な中年男とばかり思って居た胡麻刷の豹変ぶりに、夢脳と緒母は、眼を見開いて胡麻刷を見詰める。
胡麻刷主任「ええか。 追試結果が出るのに、百年かかる、と追加で発表したらええねん。 わしと緒母ちゃんが研究したのは、何も始めてやあらへん。 何代も前から研究を続けて来て、発見したんや、と云うことにしたら、ええねん。」
夢脳所長「そんでとおるのんかいな。 い、いや、それでとおるのかね。 研究で試験結果が出たのが百年目、として、追試結果も出るのが百年かかるとすれば、嘘、い、いや研究結果の正誤が判明するのに、単純に云えば、百年の時間経過が必要だ、と云う虚構、い、いや論理だね。」
胡麻刷主任「そんなもん。 この国にはなんぼでもありまんがな。 温暖化で二度か三度の温度が上がるのが百年後や言うて。 わしらみんな死んでるがな。 百年後やて、嘘でもほんま(本当)でも意味あれへんこと、環○○の研究所が言うてまっしゃろ? それとおんなじ(一緒)や。」
夢脳所長「そ、そや。 ほんまにそや。 わしらだけが何で、はよ(早く)、追試結果、出さなあかんね。」
胡麻刷主任「そうでっしゃろ? それに失敗しても、可能性はある、ちゅうことにしたら、もっとええ。 地震の予知みたいなもんや。 あんなもん。 でけへん(出来ない)のにきまっとるのに。 ゼニ欲しいからでけへん、とは言わん。」
夢脳所長「緒母君。 こ、これで行こう。」
胡麻刷主任「所長。 あと一言ありまっせ。 緒母ちゃんとわしの給料、上げてたってや。」
こうして、SWASHの研究疑惑には、終止符が打たれ、胡麻刷主任と緒母研究員の給料は少し上がったのであった。 目出度し、目出度し。
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