庄司沙矢香さんのベートーヴェン
- 2010年 11月 12日
- 交流の広場
- 成畑哲也
庄司さんといえば、音楽の好きな人はたいてい知っているだろう。久しぶりに帰国したので、11.8サントリーホールで聴いてきた。S席は取れなかったが、悪い席ではない。オール・ベートーヴェン・プログラムということで、ソナタの2,5,9を演奏した。
2番はハイドンの枠組みの曲で、とくに問題はない。5番は「春」だが、ベートーヴェンが一定の形式の中で歌に満ちた曲を作ったのに、まったく的外れ。期待は9番のクロイツェルだが、第1楽章におけるベートーヴェンの内的ドラマが全然追及されていない。第2楽章は、非常によく歌い、それも甘さを完全に排除した硬質な音楽で、これは感動的だった。これらを聴いて思うのは、このあとにパガニーニが登場しヴァイオリンの技術に革新があった。さらに、20世紀に入り新しい音楽観が出てきた。そこから出発しなければならぬ庄司さんも大変である。
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