必読 「放射能汚染とリスクコミュニケーション (PHNブックレット:天笠啓祐/著)」
- 2014年 7月 25日
- 交流の広場
- 田中一郎
放射線被曝を理解するために必読の、かつ、誰にでもわかる平易な解説書が発刊されました。著者は科学ジャーナリストの天笠啓祐氏です。切り抜いた部分を簡単に一言で申し上げれば、「放射線被曝評価の矮小化と、その今日までの歴史」とでも言えると思います。
以下、天笠啓祐氏の今回の著作や、その他の著作を含む関連図書等を簡単にご紹介しておきます。それぞれ、ぜひご一読ください。今回の著作には、下記でご紹介する内容以外にも、たとえば「食べものの放射能汚染」の問題や、「リスク・コミュニケーションの本来の在り方」などなど、知っておくべき事柄がコンパクトにまとめられています。
● 放射能汚染とリスクコミュニケーション(PHNブックレット:天笠啓祐/著)
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033116596&Action_id=121&Sza_id=GG
今回の新著作は必読・平易の解説パンフレットです。以下に、少しだけ内容をご紹介しておきます。
ちょっと前にご紹介した、下記のような「放射線ムラの陰謀」にまんまとはまりこまぬよう、天笠啓祐氏の著書で被ばくリテラシーを身につけましょう。
(東京新聞記事)原発事故後の健康支援で逆走 環境省の専門家会議(こちら特報部) 赤かぶ
http://www.asyura2.com/14/genpatu39/msg/432.html
(VTR)参考人「健康調査や線量評価の抜本見直しを」環境省会議 OurPlanet-TV:特定非営利活動法人 アワープラネット・ティービー
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node%2F1806
<天笠啓祐氏の他の必読著作>
● 子どもに食べさせたくない食品添加物-天笠啓祐/編著 食べもの文化編集部/編著 本・コミック : オンライン書店e-hon
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033114617&Action_id=121&Sza_id=C0
● TPPの何が問題か-天笠啓祐/著 本・コミック : オンライン書店e-hon
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033096604&Action_id=121&Sza_id=C0
● 遺伝子組み換え食品入門 必要か不要か?安全か危険か?-天笠啓祐/著 本・コミック : オンライン書店e-hon
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032978992&Action_id=121&Sza_id=C0
<関連する著作で必読のもの>
●放射線被曝の歴史 アメリカ原爆開発から福島原発事故まで-中川保雄/著 本・コミック : オンライン書店e-hon
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032660915&Action_id=121&Sza_id=C0
少し難しいですが、この本はできれば全ての方の読んでいただきたいです。国際放射線防護委員会(ICRP)や放射線影響研究所(RERF)
<これも見ておいた方がいいと思われます>
http://www.youtube.com/watch?v=AU6YrT0q1SQ
http://www.youtube.com/watch?v=fkNr6DoBcII
http://www.youtube.com/watch?v=a_WRsHyOTjY
(以下、「放射能汚染とリスクコミュニケーション(PHNブックレット:天笠啓祐/著)」より
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<原爆開発から始まった許容量の考え方>
「ICRPが最初に出した1950年の勧告は、まだ職業人だけのもので、被曝線量限度は年間15レム(150ミリシーベルト)、1週間0.3レム(3ミリシーベルト)という数字でした。まだ一般市民の被曝に関しては、被曝線量限度はだされませんでした。ただし、この時に集団被曝線量(人・レム)という概念が初めて登場したのです。集団被曝線量とは、すでに述べましたように、放射線によって受ける健康被害を個人で見るのではなく、集団で見るという考え方です。晩発性障害は、個人で評価できないからです。例えば、同じ被曝線量でもがんになる人ならない人がいます。集団で見ると被曝に応じてがんの発生率が増えていきます。こうして、放射線の被曝と人口とを掛け合わせて、発癌などのリスクを導き出すようになりました。」
「ICRPが次に出した1958年勧告」では、初めて市民の放射線防護基準が設定され、職業人の10分のlとされ、職業人年間5レム(50ミリシーベルト)、一般人年間0.5レム(5ミリシーベルト)という基準が出されました。この勧告の際に採用された考え方が、「リスク・ベネフィット」の考え方でした。直訳すると「危険と利益」となります。では、このリスク・ベネフィットの考え方とは、どんなものだったのでしょうか。」
「繰り返しますが、晩発性放射線障害においては、これ以下なら安全だというしきい値は存在しません。そのためリスクとベネフィットのバランスの上に設定される考え方が、許容量です。1970年代までは、この考え方が一般的でした。この我慢量という考え方は、リスクを負うものと、利益を得るものが同じでなければ成り立ちません。しかし、原発が増えることで、この考え方について見直しの雰囲気が醸成されていくのです。」
<原発推進のためにゆがめられた被曝基準>
「そこで次に登場したのが、現在も使われている「アララの理論」と呼ばれる考え方です。この原則は、ICRPによる1977年の勧告の際に採用されました。アララとは「As Low as Reasonably Achievable」のそれぞれの単語の頭文字を組み合わせたものです。「合理的に達成可能な限り、低く押さえるべきである」という考え方です。「合理的に達成可能な限り」というところに比重が置かれた考え方でした。」
「この理論を導入するに当たって、「リスク論」と呼ばれるものが大手を振ってまかり通るようになりました。「リスク論」でよく取り上げられるのは、交通事故との比較です。」
「(許容線量の考え方では)不均一被曝の考え方が、ある程度まで生かされていたのです。しかし実効線量当量では、そのような特定の臓器や組織を対象にするのではなく、各臓器や組織への影響の総和という形で、モテル化して計算上の被曝限度を設定する方式に変更されたのです。この計算方式では、恣意的に数値が設定される可能性が強く、結果的に被曝限度の大幅緩和をもたらしました。たとえば、ストロンチウム90では、1000ベクレル/kgの放射能を取り込んだとき、従来の方式では44.4ミリレムと評価していましたが、実効線量当量では、3.85ミリレムとなり、実に10分のl以下の評価になってしまいました。」
<もっとも影響を受けるのは子どもたち>
「このようなエピジェネティックスでの異常を引き起こすことも考えられますが、この仕組み自体がまだよく分かつていませんし、放射線がどのように影響するかもわかりません。」
「さらには、細胞にはほとんど修復機能がありません。そのため細胞の機能が変更を受けたり、まともに機能しなかったり、時には細胞死が起きる危険性もあります。しかし、これにしてもどの程度の線量を被爆したら、どのような影響が起きるか、正確には分かっていません。」
「さらには、放射線の影響と、他の有害物質の影響が重なることによる影響の拡大も起こり得ます。すでに述べましたが、いまの科学は、他の要因を排除して、その一つの物質がもたらす影響に関して評価する方法を用いています。これでは農薬や食品添加物、大気汚染などさまざまな要因にさらされている私たちの日常生活とは大きなかい離があります。」
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