絵空事の福島第1原発廃炉=作業員を「古雑巾」扱いする東京電力=政府・自民党と、危険極まりない「格納容器冠水」による溶融燃料取り出し
- 2014年 8月 4日
- 交流の広場
- 田中一郎
いずれも福島第1原発の現況についてのレポートです。東京電力=政府・自民党が進めている福島第1原発の廃炉及び安全対策が、いかにずさんで出鱈目極まりないかが、こうしたレポートを見ることでよくわかります。(1)は、あまりにひどい福島第1原発の現場作業員の処遇や労働実態についてのこと、(2)は、無謀なまでに楽観的で危険な格納容器冠水方式による溶融核燃料取出しについて「危ないからやめろ」と警告するものです。
(1)ルポ・イチエフ 作業員がいなくなる(布施祐仁 『世界 2014.8』)
(2)格納容器冠水計画の危険性(筒井哲郎 『科学 2014.8』)
1.ルポ・イチエフ 作業員がいなくなる(布施祐仁 『世界 2014.8』)
1つめの「ルポ・イチエフ 作業員がいなくなる」は、福島第1原発事故後3年半が経過して、この間、あれだけ社会的に厳しく批判されて、そういうことをしていてはだめなのだ、と言われても、依然として、そうした批判やアドバイスに馬耳東風で、旧態依然の劣悪労務管理で福島第1原発の現場が取り仕切られている実態がレポートされています。多重下請け、賃金ピンはね、労働契約非提示・契約違反、偽装請け負い、労働安全管理劣悪・手抜き、労災適用困難などは日常茶飯のようです。おそらくは作業員手配師などとして暴力団なども入り込んでいるに違いありません。
東京電力は事実上、政府所有の国有会社も同然ですので、これは東京電力の責任というよりも、所管庁の経済産業省をはじめ、自民党政権・霞が関政府が「これで構わない」としていることの結果であると見ておく方が妥当と言えるでしょう。
この小論文に書かれているように、かようなことをしていたら、まもなく福島第1原発の現場から作業員はいなくなってしまいます。この間、汚染水漏れや初歩的な作業ミスが度重なり、その作業のミスが更に作業を増やし、更にミスが増えるという悪循環が、とめどもなく続いているのも無理はないのではないかと思われます。ここに書かれていることは、もはや劣悪労務管理というよりは、労働法違反をはじめとするれっきとした犯罪行為であり、関係責任者を厳罰に処する覚悟で抜本改善に早期に取り組まないと、早晩大事故へとつながって行くように思われます。
そもそも、次にいつ襲ってくるかもしれない大地震・大津波に対して、何の備えもないまま、自分達の労務管理さえロクすっぽできずに、愚かなミスや失敗・失態を繰り返している東京電力、その東京電力が、事実上、経営が破たんしていることを棚に上げて、今年度第一四半期の経常収支は黒字だった、経営の一層の安定化のためにも柏崎刈羽原発の再稼働の早期実現を目指したい、などと胸を張っているのですからあきれるばかりです。しかし、そのあきれる行為によって、福島第1原発の事故後対策が妙な形で経費節減され、労務費が削られ、手抜き劣悪資材が使われて事故やトラブルが多発している実態があるわけですから、看過するわけにはいかないでしょう。その典型が汚染水対策です。
そして、こうしたこと一切は、事故の後にきちんとした体制や人員配置を用意しないまま、ゾンビ企業=東京電力を政治的に生きながらえさせ、過去に対しても将来に向かっても責任の所在を明らかにしないで、だらだらと場当たり対応やアリバイ行為を続けてきた政府の政策・方針の結果であると言っていいと思われます。
当事者能力のない無能の固まりの東京電力を一刻も早く解体し、作業員の労務管理の抜本改善からきちんとしないと、もう福島第1原発はどうしようもなくなってしまいます。また、福島県のみなさまも、国や県や自治体などの、甘い見通しと嘘八百の大宣伝に乗せられて、浜通りや中通りの放射能汚染地域が復興できる、帰還してその復興に携わりたい、などとは思われない方が無難です。恒常的な低線量被曝(外部被爆・内部被曝)が危険であることは申し上げるまでもありませんが、加えて、いつ何時、再び福島第1原発が火を吹いて、第二弾の原発災害をあたり一面にばら撒くかも知れません。何故なら、放射能の漏出が止められないまま、日々、愚かで低レベルの失敗ばかりを繰り返しているからであり、また、大地震・大津波の第2弾は近い将来に十分にありうるからです(例えば、使用済み核燃料は未だに危険な水のプールに入れられたままです)。被災した住宅が住めないからと言って、再び、福島県内の浜通り・仲通りに新しい住宅を建設することは、再度、同じ災難に見舞われる可能性があります。お勧めできません。
<一部抜粋:チェルノブイリ原発事故後のベラルーシではどうしているか>
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「一九八六年のチェルノブイリ原発事故で収束作業に従事した労働者に対しては、「チェルノブイリ法」で包括的な補償制度がつくられている。労働者ががんや白血病、悪性リンパ腫などを発症した場合は、被曝量に関係なく補償される。その他の病気についても、国側が因果関係を明確に否定できる証拠がない限り補償される。被曝というリスクを負って事故収束のために働いた労働者に、放射線起因性の立証という困難を背負わせてはならない。」
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(日本では、現場作業員は、まるで「古雑巾」扱いの使い捨て状態が続いている。ベラルーシとは雲泥の差がある。経済的には日本と比べて厳しく貧しい国のベラルーシがここまでやっているのに、日本は何をしているのか。捨てるべきは、現場作業員ではなくて、東京電力の無能で無責任な経営者・幹部どもだ。そして、こうしたことの全ての責任は、事故発生時の民主党政権と、その後を継いだ自民党政権にあることを強調しておきたい)
2.格納容器冠水計画の危険性(筒井哲郎 『科学 2014.8』)
この論文は「プラント技術者の会」の筒井哲郎氏が危機意識を強くして書かれた注目すべき小論文です。およそ東日本大震災でダメージを受け、さらに水素爆発と炉心溶融までおまけがついている原子炉を廃炉にするのに、格納容器の健在を前提に、その格納容器を冠水させて(格納容器をバケツ扱いして、水を目いっぱい入れて)、その水の中で溶融核燃料を取り出す作業をするという考え方が、いかに楽観的で、幼稚なまでに危ういかを説明されています。(おバカなマスコミ報道が、この楽観論を日本社会に蔓延させています。海外からは冷ややかな目で見られているというのにです)
詳しい計算など見せてもらわなくても、そりゃ、危ないで、ということは、素人の私にでもわかります、筒井氏は、同じく東日本大震災の際に爆発・炎上した、東京湾・千葉にあったコスモ石油の石油タンクの事例を挙げながら、この事故原子炉・格納容器の冠水計画が、いかに危険なものかを説いています。
単純に石棺にして閉じ込める方がいい、そして、そのためには、早く水をぶっかけて冷やすことをやめて、他の方法を考えないといけません。溶融核燃料など、取り出すことはできません。この事故原発の半径数十kmの住民の方々には、帰還をあきらめていただく他ないでしょう。いつ、おかしなことになるかわからない事故原発の横で、平穏で安全な生活などありえません。もしもの時には、再び命の危険にさらされます。
そして、そのためには、今の政府・自民党や福島県がやっていることとは真逆のことをしていかなくてはいけないのです。福島第1原発周辺に無理に居住して、被ばくし続けることは、考えものです。放射能の自然減衰を長期間待って、かつ、福島第1原発の溶融炉心の熱が冷めきって、しかるのちに復興が始まると考えた方がいいと思います。放射能はそれまでの間、しっかりと閉じ込めるのです。
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