本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(62)
- 2014年 8月 21日
- 評論・紹介・意見
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BISの警告
6月29日に行われた「BISの年次総会」の報告書を読むと、「BISの危機感」が、ひしひしと伝わってくるとともに、世界に対して、大きな「警告」を発しているようにも感じられた次第である。具体的には、「先進国の中央銀行は、一刻も早く、金融政策を正常化すべきである」とコメントし、現在の「超低金利政策」が、今後、さまざまな問題を引き起こすことを危惧しているのである。また、「世界各国の中央銀行が、前代未聞の規模で、資産を拡大している状況」についても、結果として、「大膨張した世界のマネーが、さまざまな市場に溢れ出している」とも述べているのである。
そして、「金融正常化への道のり」については、数多くの「チャレンジ(試練)」が待っているともコメントしているのだが、同時に、「各国の中央銀行は、その性質上、できるだけ時間稼ぎを行おうとする傾向がある」とも述べているのである。具体的には、「量的緩和(QE)」の名のもとに、「中央銀行が、大量に国債を買い支える」という方法などのことだが、このことは、かつて、「リフレーション政策」と呼ばれ、その後、「大インフレ」を引き起こしたことが、歴史の教えるところである。
このように、現在では、「中央銀行の中央銀行」と呼ばれる「BIS」と、「世界各国の中央銀行」との間で、「危機感の違い」が発生しているようだが、この点についても、「中央銀行の政策は、常に、後追いの状況になりがちである」ともコメントされているのである。つまり、「市場の反乱」である「国債価格の暴落」が起きた後に、「後追い的に、金利を上昇させる」ということが、過去の経験則でもあるのだが、今回も、間もなく、同様の事態が発生することが予想されるようである。
具体的には、今年の秋頃に、米国で「量的緩和の終了」が予定されているのだが、この時に、「ゼロ金利政策の継続が可能なのか?」ということである。別の言葉では、「国債の買い手」が、ほとんどいなくなる時に、「国債市場が、現在のような安定状態を保てるのか?」ということだが、実際には、「長期金利の上昇後に、慌てて、短期金利を急速に引き上げる」という状況が予想されるようである。
つまり、「中央銀行」ができることは、「短期金利の決定」であり、「長期金利」については、「世界のマネーが、どのように動くのか?」という事実によって決定されるということだが、今までの流れを見ると、これからの「金利上昇」については、「前代未聞の規模」で発生することも考えられるようである。(2014.7.25)
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原発と国債
戦後日本の高度経済成長を振り返ると、「原発」と「国債」とが、たいへん大きな役割を果たしていたようである。具体的には、「実体経済の成長」に関して、「原発のエネルギー」が重要な位置を占めていたということであり、また、「金融システムや通貨制度の安定」に関して、「国債の大量発行」が、やはり、大きな役割を果たしていたことも見て取れるのである。
しかし、現在では、ご存じのとおりに、「3・11の大震災」以降、「原発」が「完全停止の状態」にあり、その結果として、「日本の貿易赤字」は、巨大な金額にまで膨らんでいるのである。つまり、「日本の経済成長」に関して、「原動力の一部が失われた状態」とも言えるのだが、その結果として起きたことは、「国債の大量発行」であり、しかも、「日銀による国債の大量買い付け」だったのである。しかも、現在では、「日銀のバランスシート」が「約269兆円」にまで大膨張しており、この数字は、「日本のGDPに対して、50%を超える金額」となっているのだが、この点に関して、「中央銀行の中央銀行」と呼ばれる「BIS」が、大きな危機感を抱く状況とも言えるのである。
このように、現在、考えなければいけない点は、「安全神話の実情」であり、かつては、多くの学者や専門家が、「原発は安全である」と断言してきた事実のことである。つまり、多くの国民が、その言葉を信用していたのだが、現在では、「原発の安全神話」を信用する人は、「皆無の状態」とも言えるのである。しかし、一方で、「国債」については、依然として、「安全神話」が存在するようであり、現時点でも、多くの学者や専門家が、「日本国債が暴落することは有り得ない」と考えているようである。
つまり、現在の日本を考えた場合には、「戦後の奇跡的な高度経済成長」、そして、その後の「失われた20年」という言葉に象徴されるように、実に「波乱に富んだ時代」を経験してきたのである。そして、間もなく、「戦後時代の清算」が、本格的に始まるものと考えているが、この「キッカケ」となるのは、やはり、「国債神話の崩壊」とも考えられるようである。
別の言葉では、現在、「アメリカの量的緩和終了」の時期が近付いているために、「日銀」だけが、「必死になって、大量の国債を買い続けている状況」が、「何時まで継続可能なのか?」ということだが、実際には、この点に気付いた「世界の投資家」が、今後、「日本国債の売り叩き」を始める可能性も存在するようである。(2014.7.27)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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