福島甲状腺がん、原発事故のせいではない~んなの、分かってますってば
- 2014年 8月 25日
- 評論・紹介・意見
- ブルマン!だよね
福島県は18歳以下の甲状腺第一次検診結果を踏まえて、甲状腺がん有病率に地域差が見られないと発表。従来からの「放射線被曝の影響とは考えにくい」との見解を補強している。(8月24日開催 第16 回福島県「県民健康調査」検討委員会)
取りあえずの報道関係は
時事通信報道
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140824-00000078-jij-soci
朝日デジタル報道
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140824-00000006-asahi-soci.view-000
朝日デジタル記事は地図表示になっていて分かりやすい。
検討委員会の原資料は下記で閲覧可能。
https://www.pref.fukhttps://wwwushima.lg.jp/uploaded/attachment/80430.pdf
筆者もかねてから、現在発見されているほぼ15歳から18歳に集中した甲状腺がんは、福島第一原発事故に起因するものではなく、おそらく15年ほど前に何らかの広域にわたる事態によって引き起こされたものだろうという推測を提示していたので、なんら驚く報告ではない。
これにはいくつかの論拠があるが、なんといってもチェルノブイリではもっと低年齢層、10歳以下に発病が集中したこと、福島では殆どその年齢層には有病者が見られないこと。これを福島では事故直後に小児は室内に退避させるよう勧告が出されたからだという説もあって分からなくもないが、では15歳以上はそれを聞いて退避しないで平然としていられたのかという疑問を拭えない。これまで明らかになった有病者の分布の際立った特徴を説明するには論理構成がいかにも弱い。
ただ筆者の推測が頑強かというとそんなことはない。依然としてスクリーニング効果を否定し去ることもできないし、15年前に何らかの事態があったかどうかについても仮説の域を出ない。これを検証するには他県でこれまでの4,500人程度ではなくもっと大きなサンプルサイズで(3万人??)かつ年齢層も0歳から40歳程度まで広くとって検診をするのが最も効果的だろう。並行して福島でも19歳以上層の検診を同程度のサンプルサイズで行う。結果についてはいろいろなパターンが今からでも想定できるが、他県および福島で15歳から25歳くらいまでに集中して有病者が検出出来たら、15年前に何かがということが強く示唆されるだろう。一方でどちらも15歳以上で広く有病者が観察されるようであれば、スクリーニング効果の優勢であることが示唆されよう。
なんとしてでも福島第一原発事故のせいにしようとして、岡山大の津田先生は大変奮闘されているのだが、それがゆえにかなり無理な論理構成を押し出さざるを得なくなっているように見える。
下記資料参照のこと。
http://www.env.go.jp/chemi/rhm/conf/conf01-08/ext04.pdf
この資料では津田先生は、もし今見つかっている甲状腺がんが被曝によるものではなく、自然発生なら福島内で均等に検出されるはずだが、相当なばらつきがあるから自然発生ではないのだ、と言いたいのでしょうけれども、こういう場合のグリッドのサイズによっては色々のデータが出てくることが考慮されていない。たとえば100m四方のグリッドをとれば、0と1のデータしか出ないで0のグリッドから見れば1は無限大で津田先生流にいえば「アウトブレーク!」ということになってしまう。今回の福島県の発表データは市単位ではなく県内をいくつかの区域に分けて分析すると、そういうばらつきは均等化されてくることを示している。もともと自然発生なら均等に有病率が観察されるはずだという先生の主張も飛躍していたのはありますが、今回はこの飛躍があくまで結果的にですが、正しかったことを証明する皮肉な分析になってしまっている。
それから、低線量被曝での発がん影響について、CTスキャンやX線照射での調査結果を挙げられているが、もともとそういう検診なりの対象になる人は何らかの患者であって、その集団と健常者で検診を受けていない集団との比較をすること自体疫学の常識からは考えにくい。
また自然被曝のガンマ線量と白血病の関係も挙げられているが、データはデータなのだが、では世界中にある高線量地域(ガンマ線でいえばほぼ高地)ではそうなっていなことの説明が付かない。
この資料には出ていないが、津田先生はこれまでのがん統計(罹患率)を比較対象にして、福島の検診結果=有病率を罹患率(発病率)に近似式(Rothmann法)を用いて換算して、それうえで福島は数10倍多発だと常日頃主張されているのだが、依然としてそれではスクリーニング効果を否定できていないのではないか。スクリーニング効果を否定するためにこの資料で、チェルノブイリから10年以上経過した甲状腺検診結果を示されているが、ゴメリでゼロというのは、ベラルーシのがん登録とまったく整合していないし、当時の超音波ソナーとの性能差を定量的には考慮されていない点、弱さを感じてしまう。
高木学校の崎山先生もこれに加えてドイツやイギリスでの原発近辺での小児白血病の多発事例を挙げているのですが、CTスキャンやX線照射の件含めて、いやしくも放射線医学を専攻する者なら誰一人知らないことのないような事例をもって、低線量被曝の健康影響を主張しようとするなら、それらがその後どういうように考究されていったのか、その経緯を含めて主張されるべきでしょう。ただ「お前たち知らないのか」では議論にならないように思えます。
東電憎し、政府憎し、絶対許すまじ、はお気持ちとしては全くその通りと思いますが、それと科学的な判断とは別個の事柄で、視点は広く持って臨むのがよろしい。
そうそう、科学的判断ではないですが、視点の広狭でいえば、以下のような言辞はいかがなものか。
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/
「私たち自身・日本人一人ひとりの身を守る「命の未来のための裁判」
日本人の問題なんでしょうかね?
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion4961:140825〕
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