行方不明43人とメキシコ社会 3
- 2014年 11月 1日
- 交流の広場
- メキシコ山端伸英
時事的な問題に興味を失ったプロセスが僕の中にあって、前行でPRDの党首をヘスス・オルテガと書いたが彼は2008年に党首につき2011に任期を終えている。彼がアレハンドロ・エンシナスという「メキシコ共産党闘士のこども」と党内選挙を戦い、エンシナスの勝利宣言もかかわらず当時の国民行動党政府を含めた画策で8か月後に党首を勝ち取った経過は、当時の僕にメキシコの未来への絶望みたいなものを与えてくれた。大学組織のマフィアの跋扈は日本ではアカデミズム固有であろうが、ここでは政治とともにマフィアも動く。で、先ほどまで、すっかりヘスス・オルテガがまだ党首なのだと思っていた。ごめんなさい。2011年から日本企業のプラントで嫌われ者をやっていて、すっかり情報音痴になってしまった。
その後、ヘスス(イエスのスペイン語音、愛称はチューチョ)は彼の子分のサンブラノを後継者にしてつい最近まで権勢を振っていた。彼自身は28歳でPSTのメキシコ市の幹事長になり零細労働大衆の基盤を持っておりながら政府与党との結びつきに生きてきた。半面、市民階級から票を得る能力のない話題の乏しい男でPRDは一貫して地方選での得票数を下げた。それを考えると2012年の大統領選に、2008年の党首選エンシナスを押したロペス・オブラドールは善戦したと言える。すでにPRDの組織の状態は破綻直前だったからだ。オブラドールは党を離れMORENAを組織している。PRDは学生運動から左翼政治家として出たカルロス・ナバレテ(60歳)を今月5日の党首選で選んでいる。
そのPRDイグアラ市長が麻薬組織との繋がりを持っていたことはヘスス・オルテガ以降のPRD ではあまり驚きの材料にはならない。良心派といわれる勢力がネポティズムやマフィア化で動脈硬化を起こし、「現実派」と思われる勢力は社会の底辺と権力の細かな利益の仲介役に終始するという点では、現在の組織状況はどこもかしこも似たような閉塞の中にある。
43人の行方は全く分かっていない。大統領府は昨日、会見を開き、43名の生命は補償の範囲ではないと声明している。
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