人命と人権の重大脅威に急成長 -「イスラム国」との戦いは国連中心で①
- 2014年 11月 4日
- 評論・紹介・意見
- イスラム国坂井定雄
イラクでも、シリアでも北部ではマイナス20度にもなる冬が迫ってきた。戦闘と残虐なイスラム過激派「イスラム国」(IS)の支配を逃れて、住み続けてきた故郷を脱出したシリアとイラクの85万人を超す人々の多くには、国連が必死の支援活動を拡げているが、まだ天幕も食料も衣服もとうてい行きわたっていない。世界中から若者たちを集めて兵士とし、イラクとシリアで拡張し続けるイスラム過激派の強力な武装組織「イスラム国」の実態と今後の見通しについて、これから書こうとおもう。
そのために、まず、自分の視点を明確しておきたい。それは、「イスラム国」と称するこの武装勢力が、いまでは世界人口の4分の1以上を占めるイスラム教徒たちが千七百年間かけて築いてきた、他宗教、多民族、他文化の人々との相互理解と共存を破壊する、偏狭で、非人間的なイスラム法解釈による残虐な人命と人権への攻撃を許さない立場だ。
それは、条約法に関するウイーン条約で「締結時に強行規範に抵触する、いかなる条約も無効」と規定している国際法の土台となる、いかなる逸脱も許されない、高次元の規範(強行規範)を踏みにじる行為なのだ。国連と国際法専門家は、強行規範に反する行為として、ジェノサイド(集団虐殺)、人道に対する罪、奴隷制度、海賊行為、虐待などを挙げている。こうした行為を「イスラム国」は実行し、それによって対抗勢力と支配下の人々に恐怖を与え、戦闘と支配の力とし、資金や武器さらには世界中から志願者を集めている。
イラクとシリアをめぐる国際関係はとても複雑だ。イラク、シリアの国内情勢、アラブ諸国、隣接するトルコ、イランの関わりと利害、イスラム諸国、欧米はじめ世界各国からのIS志願兵たち・・・。残虐行為とともに、ソーシャル・メディアを巧妙に・精力的に利用して世界の若者たちを勧誘するIS。このような事態はかつてなかった。
しかし、残虐に人々の生命を奪い、自由と人権を抑圧するISは、国際社会、国際法に真っ向から挑戦しているのであり、遠く離れた国々でさえも若者たちを奪い取られている。国連に加盟するすべての国々が、それぞれにISとの戦いに参加できるはずだ。国連の人権諸機関は、必死にイラク、シリアでの深刻な人道危機を詳細に訴え、増え続ける難民救済活動を拡げ、世界各国から支援経費の拠出を不充分ながら集めているのに、肝心の安全保障理事会の動きは鈍い。
安保理が、人道支援の役割を果たせず、80人万人が集団虐殺されたルワンダの悲劇(1994年)を繰り返してはならない。シリアのアサド政権の化学兵器による集団虐殺に対する国際的な制裁行動は、安保理でのロシア、中国の拒否権行使でなにもできなかった。しかしいま、安保理がISに対する制裁行動で、一致できないはずはない。(続く)
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