西尾正道元(独)国立病院機構北海道がんセンター院長先生からのメール: 放射線被曝の危険性の矮小化を許すな=国際放射線防護委員会(ICRP)などに騙されてはならない
- 2014年 12月 12日
- 交流の広場
- 田中一郎
以下は2つのメール転送です(一部、個人的なことは省略いたしました)。
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1.西尾正道元(独)国立病院機構北海道がんセンター院長先生の講演やお話には、貴重で重要な事がたくさん盛り込まれています=みなさま、ぜひご注目ください
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下記は西尾正道元(独)国立病院機構北海道がんセンター院長先生からお送りいただいたメールの一部をコピペしたものです。大変重要で、かつ貴重な内容が含まれています。みなさまには、今後とも西尾正道先生の発言・著作にご注目くださることをお勧めいたします。
●(西尾正道先生)「私は、確定的影響と確率的影響についても厳密には区別できるほどのものではなく、放射線の影響を理解しやすいように便宜的に区別している概念だと思っており、ICRPの防護学体系自体の見直しを考えています。」
(田中一郎コメント)
私もそのように考えております。被ばく量が大きくて、なんびとに対してもはっきりと目に見える形で被ばく障害が出ることを「確定的影響」と呼ぶのはともかくとして、内部被曝を中心に低線量被曝であるがため、自覚症状を含め、その健康被害や遺伝的被害が目に見える形で出てこない、人間の五感に感知されない、そういうものを「確率的影響」などと呼称していいのか、ということです。
「確率的」などといえば、その(おそらくは低く評価された)「確率」にヒットしない限りは、何の影響もございませんよ、という意味が言外に含まれているのでしょうけれど、それはおかしいのではありませんか? 私がいつも申し上げているように、放射線被曝を原理的に考えた場合、生物や人間の細胞を構成する分子の化学結合を、放射線が、その結合エネルギーの何万倍、何十万倍、何百万倍もの大きさのエネルギーで破壊してしまう、それが放射線被曝であり、それがあまりに超ミクロの世界で起きているがため、(マクロの世界の存在である)人間の神経細胞が、ただただとらえることができないのだ、ということにすぎないのではないかと思います。ならば、五感に感じず、表面に出ていなくても、何らかの放射線被曝による「体内破壊」はなされているのであり、それが「何の影響もございません」などということにはならない、ということではないかと思います。
こうしたICRP言語に乗せられ、軽率に低線量被ばくの危険性や、その障害の実態を見逃してはならないと思います。原発の危険性の世界も、放射線被曝の危険性の世界も、「確率論」などを持ちだしてくる人間は、たいていがロクでもない、と思っていた方がいいと思っております。
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●(西尾正道先生) 内部被曝の場合は放射性物質の近傍の細胞はべらぼうな線量が当たっているので、組織等価線量とか、ましてや全身化換算した実効線量という線量評価だけで健康被害を考えるのは間違っていることを知っていただきたいと思います。
(田中一郎コメント)
全くその通りだと思います。私が2年ほど前に、下記のレポートを書く際にも、西尾正道先生の著書を大変参考にさせていただきました。これからも西尾正道先生には、この内部被曝評価のインチキを、あらゆる場において、大きな声で、どんどんと発言していただきたいと期待しております。
(参考)(増補版) 放射線被ばく評価の単位 「シーベルト」 への疑問
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/post-9ead.html
(参考)放射線被曝の単位「シーベルト」はどのようにインチキなのか? いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2013/11/post-1ba9.html
●(西尾正道先生)講演では、放射線が関与した甲状腺がんはチェルノブイリの知見を考えると、事故当時に小さかった子どもにこれから出現するので、今後の検査の充実こそ大事であることを皆さんにお話しさせて頂いたのです。
(田中一郎コメント)
西尾正道先生の議論のポイントは、事故後における被ばく管理=とりわけ感受性が高い妊婦や子どもたちの被ばく防護や検査・医療体制の整備こそが重要であり、これをおろそかにすることは許されないのだ、という点にあります。何故なら、甲状腺を被ばくさせる放射性物質は放射性ヨウ素131だけではなく、放射性セシウムも甲状腺に集中しやすいこと(特に子どもは大人に比べて顕著)に加え、放射性ヨウ素129(半減期1550万年)などというのもあって、汚染地域に住む方々は決して油断などできないからです。しかし、環境省の「(似非)専門家会議」をはじめ、政府の今後の対応方針が向いている方向は、今ある不十分極まりない「福島県民健康調査」をさらに縮小・矮小化し、その他の都県における健康管理へのニーズは、すべて踏みつぶす方向だ、ということです。
西尾正道先生には、このとんでもない政府の方針の「方向性」に対して、敢然と立ち向かっていただきたいと願っております、かつて先生は学生時代に、わざわざ北海道から九州・長崎の佐世保まで、米空母・エンタープライズに向かって石を投げつけるため「遠征」に行かれたと聞いております(旅費がないので借金をされたそうですが)。その頃を思い出していただき、今度は環境省の「(似非)専門家会議」を含む「放射線ムラ」に向かって、漬物石サイズの巨大な剛腕石を投げていただき、あのインチキ(屁)理屈を粉々に砕いていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
それから、下記は小出裕章京都大学原子炉実験所助教と共著で、昨今西尾正道先生が出版された新刊書です。まだご覧になっておられない方は、ぜひお求めの上、ご覧下さい。核時代の現代を生きる者の必読書だと考えております。
●(角川oneテーマ21)『被ばく列島 放射線医療と原子炉』(小出裕章/〔著〕 西尾正道/〔著〕)
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033163383&Action_id=121&Sza_id=C0
(参考)新刊書ご紹介 『被ばく列島』(小出裕章・西尾正道著:角川ONEテーマ新書):放射能と被ばくに関する基礎知識や必須情報が平易な「対談」言葉の中に満載、必見です (その1) いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-8ab7.html
(参考)同上(その2)
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-7338.html
(参考)同上(その2)
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-c312.html
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2.西尾正道先生より、昨日、メールをいただきましたので、転送いたします
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(A)確率的影響と確定的影響についても、例えば白内障の発生は臨床でよく経験しましたが、ある一定以上の線量(医学的には閾値は明確ではないが10Gy程度と考えられている)であれば、全員が白内障となりますが、線量が低くても長期的な経過で発生します。発生頻度と発生期間には極めて線量依存性の関係があります。私が若い時の日本の4施設の上顎がん治療症例の分析です(1枚目)。
(B)また放射性微粒子の近傍はとんでもなく高線量であり、組織等価線量とか実効線量で表現される線量の5~7桁程度の線量が当たっていると考えられます。線源から5mm以内は線量勾配が急峻過ぎて正確な測定はできません。したがってやや正確に測定できる線源から5mmの点を100%として相対的な線源近傍の線量を計算したものが2枚目の図です。放射線治療で使っているRALS装置の線量計算装置でも10000%しか計算できず、近似式で計算した場合、0.4mmの点で5mmの線量の100倍となり、0.1mmでは1284倍です。したがって線源に接している細胞は5桁倍の線量となります。
こうした膨大な線量が当たっている細胞ががん化しても不思議ではないのです。したがって全く当たっていない臓器の細胞も均等に当たっているとして線量を均一化して表現する等価線量もあくまでも参考程度の意味しか持たないのです。
ちなみにβ線を遮蔽して、γ線だけを照射して行う舌がんの治療例でも反応が起こっているのは刺入した線源近傍だけです。こうした内部被曝を利用した治療では通常は線源から5mm外側の点で腫瘍を制御するための線量を投与します(スライド3)。線量計算は全身化換算などはしません。ICRPでは空間的線量分布が考慮されていないことが最大の誤魔化しなのです。
(C)スライド4は私が手書きで描いたI-131の深部率曲線です。平均エネルギーが606KeVとしての予想図です。実際には1~2mm程度の層の細胞にしか当たっておらず、そこに全エネルギーを放出するわけです。従って等価線量も参考程度の意味しかなく、等価線量が低くても発がんはありうるのであり、ロシアンルーレットの世界となります。従って線量と過剰発がんリスクがさほど相関していません(スライド5)。
また、私が経験している放射線誘発がんの症例の多くは均等に照射した外部照射の症例ではなく、小線源治療を行った患者さんです。これは線源近傍の膨大な線量が関与していると考えています。わからないことが多すぎますが、徐々に考えていきたいと思います。
8日月曜日に岩手県議会で線量の比較的高い県南の子どもたちの甲状腺検査の必要性を意見陳述してきましたが、3対5の多数決で否決されました。全員でなくても毎年、小学校の高学年生(例えば6年生)に一度検査を行い100人に1~2人の結節が見つかったら、そのあとは所見があるので、100%自費とな.検診ではなく、「甲状腺腫瘍」と診断名が付くので、保険診療となり3割負担となりますので、検診後の診療は親の責任で経過観察すれば予算的問題やマンパワーの問題も何とかなるのではと落とし所も提示したのですが、結果は無駄足でした。
私も協力しているいわき市のたらちねで4月からトリチウムとSrのβ線測定を行う予定です。安い値段で、早く結果を出す仕組みで継続できればと思います。ご支援ください。真実や科学の探求にはまず、実測値を把握することから始めなければなりません。
21日はIWJの饗宴に行きます。「疑似科学としての放射線の影の世界」というタイトルで15分ほどお話しする予定です。また13日は放射線腫瘍学会(JASTRO)が横浜であり、私が支援している『市民のためのがん治療の会』が学会長から市民公開講座を依頼され開催します。この患者会も10年の実績を積み重ねました。人間は進歩しませんが、機器や技術は著明に進歩しています。放射線治療を使ってがんを治す光の世界の進歩もご理解いただければ幸いです。放射線を使い分ける見識が問題なのです。
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