原子力治外法権の原型:日米地位協定と日米原子力協定のよく似た構図、戦後日本の司法形骸化=対米・対行政追従と「伊達判決」=前泊博盛氏編著『日米地位協定入門』より)
- 2015年 1月 8日
- 評論・紹介・意見
- 田中一郎
(最初にいくつか重要情報です)
1.「直ちに影響はない」の拠り所でもある「ICRPの勧告」には科学的根拠がないことがNHKの取材で判明/追跡!真相ファイル「低線量被ばく 揺らぐ国際基準」 – @動画
http://www.at-douga.com/?p=4738
(少し前にNHKで放送された必見番組です。まだご覧になっておられない方はぜひご覧ください。放射線被曝の危険性を政治的に矮小化し、予定されていた基準値勧告の1/2のレベルのリスク評価(従って規制値の数字は2倍)に貶められる様子、あるいは原子力施設労働者に対しては、逆にさらに20%、リスクを過小評価する形で規制が決められていく様子がご覧になれます。国際放射線防護委員会(ICRP)は「国際原子力マフィア」組織(*)の一つと言われていて、1950年の発足以降、一貫して放射線被曝の矮小化・歪曲と原子力推進の一翼を担ってきています。騙されないように、くれぐれも気を付けましょう(私は番組の最後でインタビューに答える18歳のセーラさんの言葉が胸に突き刺さる思いでした):田中一郎)
(*)他に国際原子力機関(IAEA)、「国連科学委員会(UNSCEAR)」があります。ICRPとともに、この2つともが、日本政府と福島県庁が「抱き着いている(抱き着かれている?)」国際組織です。また、世界保健機関(WHO)は、1959年に締結された協定によって、国際原子力機関(IAEA)の意向を無視しては放射線被曝の問題について発言できない「従属組織」となってしまっています。
● WHOとIAEA間の協定 – IndependentWHO – 原子力と健康への影響
http://independentwho.org/jp/who%E3%81%A8iaea%E3%81%A8%E3%81%AE%E5%8D%94%E5%AE%9A/
(放射線被曝の評価に関する「戦後史」については下記の図書をご覧ください。必読の名著です:田中一郎)
● 放射線被曝の歴史 アメリカ原爆開発から福島原発事故まで』(中川保雄著:明石書店)
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032660915&Action_id=121&Sza_id=G1
●NHK『追跡!真相ファイル』「低線量被ばく 揺らぐ国際基準」で原子力ムラからバッシング 福島原発事故緊急会議 情報共同デスク
http://2011shinsai.info/node/1618
2.(イベント情報)国会包囲ヒューマンチェーン「辺野古に基地はつくらせない」
http://blog.goo.ne.jp/koube-69/e/cf2d93980ec0506cbe9c569ca5e254cf
http://www.labornetjp.org/EventItem/1419295685262staff01
日 時:2015年1月25日(日) 午後2時~3時
場 所:国会周辺
3.ナゲット異物混入 低迷マックに追い打ち 信頼回復遠く – 毎日新聞
http://mainichi.jp/shimen/news/20150107ddm008040070000c.html
http://mainichi.jp/shimen/news/m20150107ddm008040070000c.html?fm=mnm
4.▶ フランスFR3放送「フクシマ・地球規模の汚染へ」 – YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=6JdXl7Ol5_U
●放射能メモ フランスFR3「フクシマ・地球規模の汚染へ」 和訳全文
http://kingo999.blog.fc2.com/blog-entry-1639.html
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下記は、沖縄国際大学教授の前泊博盛氏編著の『本当は憲法よりも大切な日米地位協定入門』のPART1「日米地位協定Q&A」の第14章「日米地位協定がなぜ、原発事故や再稼働問題、検察の調書ねつ造問題と関係があるのですか?」のご紹介です。私は、かねてより焦眉の問題である「日米地位協定」のいい解説書を探しておりましたが、ある講演会で「2004年8月13日の沖縄国際大学における米軍ヘリ墜落事件」について質問をした折に、会場にいらした方から、この本をご紹介していただきました。
いつものように、のろのろ、ぐずぐず読み進めてきて、ようやくほぼ読み終わろうとしているところですが、この本は「素晴らしい名著」でした。平易に書かれた解説の各章・各章が充実した内容になっていて、しかも日米地位協定の内容の解説にとどまらず、その歴史的背景も含めて、関連事項を詳細に説明してくれています。まさに迫真のレポートの集合体で、ページをめくるたびに「へえ、そうだったのか」と、驚きと怒りの混じった声が何度も出る思いでした。
前泊博盛さんは、大学教授になられる前は、長く琉球新報論説委員をなさった方で、その時の実体験が、この著書の隅々に生かされているのがよくわかります。ぜひご一読ください。今から50年ほど前、今の東京都立川市にあった米軍基地をめぐる、今となっては有名な「砂川闘争」と、その闘争で不当逮捕された方々をめぐる裁判で出された、これも有名な「伊達判決」、その「伊達判決」をめぐる日本の司法と検察の驚くべき「裏の動き」が、コンパクトに書かれています。日本の戦後における司法や検察の堕落と対米隷属・対行政追従の情けない姿勢は、この時から顕著になってきているのです。まさに「日本の戦後」の在り方を決めた歴史的な事件であり動きだったといえるでしょう。
そして、前泊博盛さんも書かれていますが、在日米軍と日米地位協定の構図が、原発と日米原子力協定の構図と、そっくりな双子のようなものであることも、私たちは十分に認識しておく必要があると思われます。以下,簡単にご紹介いたします。
●『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』(「戦後再発見」双書2:前泊博盛/編) 創元社
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032886010&Action_id=121&Sza_id=B0
● 米軍ヘリコプター墜落事件 現場写真|沖縄国際大学
http://www.okiu.ac.jp/gaiyou/fall_incident/u-pic.html
(1)日米地位協定入門 目次(前泊博盛編著:創元社)
(2)日米地位協定がなぜ、原発事故や再稼働問題、検察の調書ねつ造問題と関係があるのですか(前) (『日米地位協定入門』(前泊博盛編著:創元社)
(3)日米地位協定がなぜ、原発事故や再稼働問題、検察の調書ねつ造問題と関係があるのですか(後) (『日米地位協定入門』(前泊博盛編著:創元社)
(4)国会包囲ヒューマンチェーン「辺野古に基地はつくらせない」(2015年1月25日)
(一部抜粋)
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P244~247
「田中最高裁長官から駐日アメリカ大使への「状況説明」」
「どうですか? 遅くても翌年の初めまでに判決を出すこと(結局は当初のマッカーサー大使の計画どおり、年内に判決が出ました)や、その判決が一審判決の破棄になるだろうということなどが、これほどはっきりと最高裁長官からアメリカ大使に伝えられていたのです。」
「ここでおぼえて、おいていただきたいのは、裁判官たちの一審判決破棄のロジックが、
① 地方裁判所には米軍駐留の合憲性について裁定する権限はない
② 米軍駐留は合憲である
③ 安保条約は日本国憲法よりも優位(上位)にある
の三つに分かれているとマッカーサー大使が語っていることです。」
P247
「アメリカ国務省から最高検察庁への指示」
「こうして訴訟の当事者である駐日アメリカ大使に、大法廷での評議の内容をレクチャーした田中最高裁長官ですが、もう一方の当事者である最高検察庁もまた、砂川裁判の最終弁論でアメリカ側が指示した意見をそのまま陳述していたことがわかっています。この裁判で弁護側(米軍駐留を違憲とする側)は、一九五八年にアメリカの第七艦隊が現実に紛争の起きている台湾海峡に日本の基地から出動したと主張し、そのことが米軍の駐留が憲法に違反している証拠だと主張しました。驚くべきことに、その主張を最高検察庁から聞いた外務省が、まずマッカーサー駐日大使に相談し、次にそのマッカーサー大使がアメリカ国務省に対して、砂川裁判で日本の検察側はどのように反論すべきかを問いあわせていたのです。それに対しハーター国務長官は、台湾海峡危機に際して「日本の基地が実際に使われた」ことを認めた上で、つぎのようなごまかしの陳述をするよう回答しています。」
「一九五九年九月一四日(ハーター国務長官からマッカーサー駐日大使へ・秘密電報)」
「「検察官は次のようにのべてもよい。『(略)第七艦隊は、安保条約のもとで日本に出入りしている部隊ではない。台湾海峡海域でのこの作戦を支援して、第七艦隊は西太平洋中のさまざまの同艦隊が利用できる基地を利用した』」(同前:文書発見は新原昭治氏)
「そしてそれから四日後、最高検察庁は、ハーター国務長官の指示どおりの陳述をします。」
P250
「「戦後日本」の転換点となった砂川判決 砂川事件最高裁判決 判決要旨」
「(中略)6.安保条約のごとき、主権国としてのわが国の存立の基礎に重大な関係をもつ高度の政治性を有するものが、違憲であるか否の法的判断は、純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査の原則としてなじまない性質のものであり、それが一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外にあると解するを相当とする。」
「(中略)この判決の意味は大きく分けてふたつあります。ひとつは判決要旨の一から五に書かれたように、在日米軍の駐留は戦力を放棄した日本国憲法には反しないということ。その理由としては、憲法第九条2項はポツダム宣言受諾にともなう軍国主義への反省と、憲法前文と第九八条2項によって定められた国際協調の精神とあいまって日本国憲法の特色である平和主義を具体化したものだから、憲法第九条2項が禁じた戦力とは、わが国が主体となって指揮権を行使できる戦力のことであり、わが国に駐留する外国の軍隊はそれに該当しないということがのべられています。さきほどの三つの判決破棄の理由でいうと、②に当たります。」
P253
「「戦後日本」という国家では、安保を中心としたアメリカとの条約群が、自国の法体系よりも上位に位置している」
「しかし、この判決のもつ最大の意味は、判決要旨「六」の内容です。「安保条約のごとき、主権国としてのわが国の存立の基礎に重大な関係をもつ高度の政治性を有するものが、違憲であるか否の法的判断は、(略)裁判所の司法審査権の範囲外にある」」
「これこそ「戦後日本」という国家の中核をなす条文です。それはなぜか。この判決文は「安保条約のような高度な政治牲をもつ事案については憲法判断をしない」とのべています。ところが判決要旨「一」と「七」でもとくに言及されている「憲法第九八条2項」(「日本国が締結した条約および確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」)の一般的解釈では、「条約は憲法以外の国内法に優先する」となっています。ですからこの最高裁判決と、憲法第九八条2項の一般的解釈を重ねあわせると、下の図のような関係が生まれ、安保を中心としたアメリカとの条約群が日本の法体系よりも上位にあるという戦後日本の大原則が確定するのです。」
P259
「この裁判で東電側の弁護士は驚愕の主張をしました。「福島原発の敷地から外に出た放射性物質は、すでに東京電力の所有物ではない「無主物」(むしゅぶつ)である。したがって東京電力にゴルフ場の除染の義務はない」
はあ? いったいなにを言ってるんだ。この弁護士はバカなのか? みなそう思ったといいます。
ところが東京地裁は「所有物でないから除染の義務はない」という主張はさすがに採用しなかったものの、「除染方法や廃棄物処理のあり方が確立していない」という、わけのわからない理由をあげ、東京電力に放射性物質の除去を命じることはできないとしたのです。この判決を報じた本土の大手メディアは、東電側弁護士がめくらましで使った「無主物(だれのものでもないもの)」という法律用語に幻惑され、ただとまどうだけでした。
しかし沖縄の基地問題を知っている人なら、すぐにピンとくるはずです。こうしたどう考えてもおかしな判決が出るときは、その裏に必ずなにか別のロジックが隠されているのです。砂川裁判における「統治行為論」、伊方原発訴訟における「裁量行為論」、米軍機爆音訴訟における「第三者行為論」など、あとになってわかったのは、それらはすべて素人の目をごまかすための無意味なブラックボックスでしかないということです。
原発災害についても、調べてみてわかりました。これまで本書では米軍基地に関して、さまざまな法律上の「適用除外」について説明してきましたが、やはりそうだつたのです。Q&A「六」で米軍機が航空法の適用除外になっているため、どんな「無法な」飛行をしても罰せられないと書きましたが、それとまったく同じです。日本には汚染を防止するための立派な法律があるのに、なんと放射性物質はその適用除外となっているのです。」
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5106:150108〕
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