新たな段階に達した「対テロ軍事行動」と日本
- 2015年 1月 22日
- 評論・紹介・意見
- 熊王信之
イスラム過激派と見做された政治・軍事勢力に対する攻撃は、米国主導の有志連合に依る「生来の決意作戦」(Operation Inherent Resolve)として、昨年8月以来、進行中であり、今後は一層の深刻化が予想されるところであり、また、実際に、オバマ大統領は、一般教書演説で、議会に対し、「ISISへの武力行使を認める決議を採択することで、われわれの団結を世界に示そう」と呼び掛けた、と報道されています。
ところが、我が国では、何故か詳細な報道が無く、他人事のような扱いです。 リベラル・左派も、安倍政権の復古主義的な企みのみに関心が向いていて、現実主義的に世界で進行中の紛争と関わらずにはおられない国情と、当該紛争と関わることに伴う国家と国民が受ける災害には考えが及ばないようです。
Operation Inherent Resolve U.S. Department of Defense
米大統領、対ISIS武力行使の承認を要請 一般教書演説 2015.01.21 Wed posted at 13:22 JST CNN.co.jp
しかし、遂に、その危惧が現実となりIS(イスラム国)は、日本を敵国と見做し、日本人を人質に取り安倍政権を脅迫して来ました。 その脅迫の手法を観ますと、彼等の言い分に従うことを期待せずに、ただ、政権と国民に対して宣戦布告を行ったようにも思えます。
報道に依れば、「(ISの)男は警告の理由として、イラクとシリアでISISと戦う米主導の有志連合を日本が支援していることを挙げた。安倍晋三首相に向け、「日本はイスラム国から8500キロも離れているのに進んで戦いに参加した」と非難している、とあります。
ISIS、日本人2人の殺害警告 2億ドル要求 CNN2015.01.20 Tue posted at 18:19 JST CNN.co.jp
更に事態を複雑にしていることには、人質にされた日本人に、民間軍事会社を自称する人がいたことがありますし、何とも不都合なことでもありました。 この人が立ち上げた会社のHPや周辺の事柄からは、現実の軍事会社としての実績も無い軍事マニア並みの人物像しか浮かびませんが、実際に戦闘中の地域にある戦闘員ならば、如何なる印象を受けるのでしょうか。
欧米の民間軍事会社は、一般的に云えば、民間の軍隊組織です。 その中心は、軍隊経験者、それも多くは特殊部隊経験者で固められていて、実際の戦闘参加が可能で優秀な兵士を多数雇用していますし、傭兵として単独で作戦行動も可能です。 また、民間に対する対テロの警備や、要人の警護の特殊な警備等も可能であり、その種の特殊な情報提供も行える情報収集能力も有るので普通です。 当然のことに、こうした企業体は、政府・軍との関係が深い存在であり、また反面では、紛争地で政府・軍が行えないような作戦でも実施出来るのです。
通常は、その要員訓練のために「サバイバル・スクール」等と世を謀る名前の施設を保有しています。 因みに、SOF(Soldier of Fortune)と云う名の米雑誌がありますが、この雑誌は、その世界で生きている人々の機関紙です。 求人広告が一般詩誌では断られる類のもので満ちています。
人質にされた日本人を、この類の民間軍事会社の者とISが観た折には、とても生還は叶わないでしょう。 彼の立ち上げた会社のHPを観ると、御自身がAK47突撃銃を撃つ動画がありますが、これを観れば、軍隊経験はおろか、銃器の取扱経験も無いのは明らかなのですが。 何しろ、銃口を他人に向けて操作するのですから。 ガイドかインストラクターか分かりませんが、付き添いの人が急いで離れて行くのが可笑しいくらいでした。
この度の人質事件は、日本と言う国の米国との関係から観て、アラブ世界に止まらず、世界中で今後生じるであろう衝突(テロと呼ばれる)の先駆けになるのではないか、との予見を抱かざるを得ないものでありましょう。 残念ながら、日本は、一線を超えたようです。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5132:150122〕
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