デッチ上げ官制デモで言論の自由を建前に戦争へ
- 2015年 1月 31日
- 評論・紹介・意見
- 熊王信之
仏風刺週刊誌編集部襲撃事件に関わって、事件を「言論の自由」への挑戦と捉えるフランスを始めとする欧米先進諸国では、フランスでの官制大規模デモを賞賛し、各国首脳が手を携えて行進した、との報道に疑問を持たれません。
しかしながら、多少とも常識的に考えて、いくら官制デモであっても、臨時に実施するデモに参加するために臨時に集合した世界各国の首脳が一堂に会して、不特定多数の一般公衆が参加する野外でのデモを実施出来る、とお考えなのでしょうか。 デモの日時は、イスラム過激派のテロの数日後なのですよ。
第一に、デモ当日の参加者全員の身体検査を如何にするのですか。 イスラム過激派のデモへの自爆攻撃があった場合には、如何にも対処の方法が無いのですから、デモ参加者全員の身体検査を実施しないことには、各国首脳の安全確保が不可能です。 第二に、警備体制は、臨時に編成しなければなりませんが、テロ後にあって、完全に警備の編成が可能であったのでしょうか。 警備体制に入る要員にテロに同調する者が居たとすれば大事に至る恐れがあるのですから、出大規模デモに係る警備には、相当数の要員の確保とその選考に時間がかかるでしょう。
以上は、警備体制編成に要する考慮の若干に過ぎませんが、このように少し考えるだけで、当該報道を信じることが出来なくなるのは、当然であり、疑義を呈されない人々が多数に上る事実には、呆れてものが言えません。 凡そ、論理的に物事を考えることが出来なくて、ジャーナリストが勤まるものなのでしょうか。 恥を知れ、と云わなくてはなりません。
幸いにも、グローガー理恵氏の御投稿「ドイツのメージャーメディアによる誤解を招く「パリの哀悼行進」 の報道」の御指摘のとおりに、EU始めとして世界のリーダー達が、言論の自由を掲げてデモの先頭に立った、との報道は、控えめに観ても「誤解を招くもの」ではありますが、世界の報道を概観しても当該報道に疑義を呈された報道は極少数であり、そのこと自体が摩訶不思議、と云わねばなりません。
此処日本でも、同じ状況ではありましたが、早い段階で、「マスコミに載らない海外記事」のブログでは、「パリで行進を率いたとされる“世界の指導者達”は、実際は壮大なでっち上げの写真撮影に集まっていただけである」ことを暴露する海外記事を引用されて報じられ、私の居抱いた疑惑が正しかったことを立証して頂きました。
世界指導者連中、パリでポチョムキン村大集合 マスコミに載らない海外記事 2015年1月16日 (金)
因みに、上記記事の原文は、以下のとおりです。
A Potemkin gathering of world leaders in Paris By Bill Van Auken
14 January 2015
デッチ上げ官制デモも酷いものですが、もっと酷いものは、「言論の自由」を持ち出して、欧米のイスラム差別とIS(イスラム国)攻撃を合理化する動きでしょう。 何の疑問も持たずに、それに同調する日本人が多いことにも驚かされましたが、事ほど左様に、欧米に媚び諂う日本人が多いのでしょう。
私は欧州で暮らしたことが無く、自分の専門を通してしかフランスの状況を見ることが出来ません。 その知識に依っては、フランスは、ダブルスタンダードでイスラム移民、ひいては中東世界の民衆を遇している、と云えますし、彼等フランス人が云う「自由、博愛」はイスラム世界を排除したものであると言えるのです。 言論の自由を云々する前に、法の前の平等と、人としての平等を云わねばならないのが現フランス社会(EU全体も)です。
その例証としては、公共の場所でのブルカ禁止を謳ったイスラム差別立法を挙げるだけで足りるでしょう。 まるで、「猫の鼠いびり」並みの立法でイスラム差別の無知な一般国民迎合を図る政権には吐気がする程ですが、これが今のEUでは差別にはならないのです。 差別法を人権無視で訴えた移民に対して、フランスとEUの裁判所は、冷たく敗訴を申し渡したのですから。
ブルカ禁止を支持する意外な判決 Newsweek 2014年7月10日(木)13時16分
さて、国民のイスラム差別に油を注ぎ、原子力航空母艦まで派遣して有志連合に肩入れして爆撃に励む覚悟のフランス政府ですが、IS戦闘要員を輩出している各国は以下の通りにEU諸国で多数に上るのですから、遠くまで遠征せずに自国を爆撃されては如何でしょうか。 差別と偏見で移民を二流国民として遇する余りに積年の恨みがつのりISへ参加する者が出るのですから、テロは自国の責めであるのです。 因果応報と言えましょう。
2014年 10月 21日発行の東京海上日動リスクコンサルティング株式会社の「イスラム国(IS)空爆で高まる世界各地のテロリスク」にある「図2 世界各国からシリア内戦へ参加する外国人の国・地域別推定人数」では、フランスからのIS(イスラム国)戦闘員参加推定数は、421人、ドイツ240人、イギリス488人、ベルギー296人、オランダ152人、スウェーデン80人、デンマーク84人、スペイン95人、オーストリア60人、イタリア50人、ウクライナ50人、米国130人、トルコ400人、アルバニア148人、等々、以下は略します。 幸い、日本からの参加者は今のところゼロです。
それにしてもこの物語には、終わりがありません。 何故なら、EUと米国の軍産複合体とISは、相互補完の関係にある双頭の鷲であり、本籍は同じです。 例え、ISが滅亡しても、不死鳥の如く、片方には、又もや、頭が蘇るのです。 そして、爆撃の対象と選定には困ることは無いのです。 潰えたISの足元には、産み落とされたテロの新生児が多数地獄の雄叫びを挙げることでしょう。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5147:150131〕
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