本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(80)
- 2015年 3月 5日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
21世紀の資本美
最近、「ピケティ氏」による「21世紀の資本」という本が話題になっている。そして、「格差の拡大は、資本主義の宿命である」というような意見が信じられ、「格差の縮小が、現在の課題である」と考える人も増えているようである。しかし、このことは、あまりにも短絡的、かつ、一面的な見方であり、実際には、100年ほど前の「共産主義」や「社会主義」のような考え方とも言えるようである。
つまり、現在、必要なことは、「なぜ、格差が拡大したのか?」を、歴史的に考察することであり、また、「過去200年間に、どれほど、マネーの大膨張が起きたのか?」を理解することである。別の言葉では、ピケティ氏の考える「格差」は、「収入」や「財産」のことでもあるようだが、実際には、「信用創造の仕組み」や「お金の性質」を理解する必要性が存在するのである。
具体的には、「現在の金融システム自体が、巨大な『ネズミ講』ではないか?」というような意見が、最近、海外で頻繁に聞かれるが、実際に起きた事は、「市場による信用創造」により、さまざまな「金融商品」が生み出されたという事実である。そして、この時に、「持てる者」と「持たざる者」との格差が広がったのだが、今後、考えなければいけない点は、これらの金融資産は、「絵に描いた餅」にすぎず、人々の信用が無くなれば、一挙に、価値を失ってしまうということである。
別の言葉では、ピケティ氏の考える「世襲制資本主義」などということは、単なる机上の空論にすぎず、実際には、「職業の世襲制」と「資産の相続」とが混同されているようである。つまり、1800年頃から始まった、いわゆる「資本主義の時代」においては、さまざまな職業が、新たに生み出され、より多額の収入を得られる機会が増えたのだが、この結果として起きた事が、「世襲制の崩壊」だったのである。
しかし、現在では、魅力のある職業が、徐々に減少しており、実際には、「親の後を継ぐ」という「世襲制」が復活している。つまり、「経済成長」と「世襲制」との関係性が理解されておらず、また、「現代の資産」についても、ピケティ氏の場合には、大きな誤解が存在するようだが、一方で、世界中の人々が、「資本主義とは、いったい、何だったのか?」を考え始めたようにも感じられる。そして、今後は、「過去200年間」ではなく、「過去2000年間」の「人類の歴史」を考え始めるものと思われるが、その時には、現在と、全く逆の結論が出ることも想定されるようだ。(2015.2.7)
-------------------------------------------
イスラーム国を考える
「日本人捕虜の殺害事件」をキッカケにして、日本では、「イスラーム国」への関心が高まっているが、ウィキペディアによると、イスラーム国が独立宣言をしたのは、2014年6月とのことである。ただし、日本をはじめとして、多くの国々が、独立を承認しておらず、また、ご存じのとおりの「残忍な行為」により、本当の意味での「国家」と呼べるかどうかには、大きな疑問が存在するようだ。
しかし、一方では、「イラクの旧フセイン体制で政権を担っていた政治家・軍人・公務員などが、アメリカの攻撃によって政権を失い、イラクの中央での居場所を失った結果、イスラーム国の中核を担っている」とも言われており、この観点からは、国家としての役割を果たす力を持っている可能性もあるようだ。つまり、「イスラーム国」の成立には、「アメリカ」などの攻撃も深く関わっており、また、古くは、「第一次世界大戦」の後に、「オスマントルコ」が崩壊したことも、遠因となっているものと考えている。
つまり、「2001年の9・11事件」の時に言われたことが「80年の恨み」というものだった。具体的には、「欧米列強の帝国主義により、600年以上も続いたオスマントルコ帝国が崩壊した」という事実に対して、「アルカイダのビン・ラディンが、報復攻撃を仕掛けた」とも言われたのだが、その結果として、起きた事が、「アフガン」や「イラク」への攻撃だったのである。
別の言葉では、積年の「恨みの連鎖」が、今でも続いているようだが、実際には、「イラク」や「シリア」、あるいは、「アフガン」などが内戦状態となっており、この間隙をついて誕生したのが、いわゆる「イスラーム国」だったのである。そして、ご存じのとおりに、あまりにも残虐な行為を行っているが、彼らの主張としては、「欧米諸国に対する聖戦」であり、今回は、その矛先が、日本にまで向かってきたようである。
このように、現在の世界情勢は、たいへん緊迫化してきたが、この時に忘れてはいけないことが、「イスラーム国」だけに関心が集まるのではなく、反対に、「先進諸国の内部で、どのような事が起きているのか?」を考えることでもあるようだ。つまり、「800年ごとの文明交代期」に起きることは、「蛮族」や「新興勢力」の出現であり、この時に、「巨大帝国の内部崩壊」が起きることも、歴史が教えるところである。そして、本格的な混乱状態が始まった時に、一挙に、世の中が大転換することも予想されるのだが、実際に、世界の国債市場は、たいへん不気味な状況となってきたようである。(2015.1.27)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5212:150305〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。