(報告)原発汚染水問題に関する緊急政府交渉:「世界最高水準の原子力規制」という「世界最大水準の嘘八百」の下、「世界最低水準の原子力規制当局」のありようがよく見えた
- 2015年 3月 14日
- 交流の広場
- 田中一郎
3/12、参議院議員会館において、複数の市民団体が主催する「原発汚染水問題に関する緊急政府交渉」&院内集会が開催されました。下記は、当日の配布資料、及び関連サイトです。「世界最高水準の原子力規制」という「世界最大水準の嘘八百」の下、「世界最低水準の原子力規制当局」(原子力「寄生」委員会・「寄生」庁・経済産業省)のありようがよく見えた政府交渉でした。以下、簡単にご報告いたします。(詳細なものは、追って主催者団体のHPに掲載されると思われます)
(1)原発汚染水問題に関する緊急政府交渉:当日配布資料(「原子力規制を監視する市民の会」・美浜の会他:2015年3月12日)
(2)福島第一原子力発電所の排水路データ公表の遅れについてのお詫び(東京電力 2015.3.12)
(3)原発事故被害者の住宅・健康・保養支援の立法化と完全賠償の実現を求める請願署名(2015年3月)
(4)貯水タンクの欠陥工事(川井満さん(会場参加者)提供 2015.3.12)
<関連サイト>
(1)(当日録画)▶ 20150312 UPLAN【緊急政府交渉・前半】汚染水問題 – YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=g1kYSl-KuBI
(2)美浜の会HP
http://www.jca.apc.org/mihama/
(上から2番目:ここに政府関係省庁への事前質問書などがあります)
(3)3-12【緊急政府交渉】汚染水問題@参議院議員会館…ぜひご参加を! – 原子力規制を監視する市民の会
http://www.kiseikanshishimin.net/2015/03/05/osensui/
<簡単な田中一郎コメント>
当日の仔細は上記(1)の録画をご覧ください。また、詳細な報告は、追って主催者団体のHPに掲載されると思われますので、そちらをご覧ください(上記(2)(3))。全般的に見て、交渉に出てきた原子力「寄生」庁の役人たちは、どうしようもないほどのお粗末な発言=回答を繰り返し、おそらくは自分でも「こりゃ、ひどいなあ」と思いつつ、田中俊一原子力「寄生」委員長という「ホラ吹き・チョロ吉」(嘘八百を垂れ流しながら泉田裕彦新潟県知事や福島県民・原発立地周辺住民らからチョロチョロと逃げ回っている)のために、一生懸命、その出鱈目をエクスキューズしている様子が痛ましいほどでした。
他方、東京電力から来ていた担当者は、一応、真摯に回答していたように見受けられましたが、会社上層部・幹部の福島第1原発事故に臨む姿勢が出鱈目・なってないので、この担当者ではどうにもならない様子がうかがえました。ともかく、この汚染水問題は東京電力自身が引き起こしている問題であり(事故直後に早期に適切に対応していれば、引き起こす必然性はなかった)、それについての説明を、こうした何の権限も持たないメッセンジャーのような担当者にさせているところに、その根本姿勢の歪みがあると言わざるを得ません(例えば、「排水路からの放射能汚染水海洋排出問題が片付くまでは、タンクの汚染水を薄めて海に放出することはしないと約束できますか、との問いに対して、東京電力担当者は「答えられません」と回答した=つまり、やるかもしれない、ということです)。やはり東京電力もまた、経済産業省・資源エネルギー庁とともに「原子力・核アンシャンレジーム」の悪質組織の一つとして解体されるべきです(東京電力よ、たまには権限を持った役員クラスが交渉に出てこいよ!!)。
1.経済産業省・資源エネルギー庁:交渉のインターネット放送を拒否するこのサイテーの役所は、約20年前の大蔵省と同様に「解体」しなければいけない(この役所が解体されるかどうかが、近い将来できるであろう脱原発政権の真価を評価する1つのメルクマールとなる)。
汚染水問題に関する政府交渉の場を設けるべく、関係省庁と折衝をして下さった社民党・福島みずほ議員にさんざん説得された経済産業省・資源エネルギー庁は、インターネット放送をしない、という約束を取り付けて、やっとのことで交渉の場に登場した。福島議員によれば、最初は「ネット放送はいやや」「参加者の数を10人くらいにしてくれ」などと駄々をこねていたが、やがて前言を少し変えて「交渉の場に出るのが管理職ならいいのだけれど、今日は日程の都合でヒラ職員が出るので、ネット放送はご容赦願いたい」などと言い訳していたそうである。
2.(海に放射能を垂れ流し続けている)排水路問題
汚染水発生の原因を「2号機建屋大物搬入口屋上」の汚染に特定することはしない、との東京電力の言質は得たものの、原子力「寄生」庁の説明は次の通りだった。①雨水は原子炉等規制法の対象外で仮に放射能で汚染していても原則は管理しない、②但し、排水路等に入った汚染雨水などは管理しようと思えばできるので、それについては管理せよと約1年前に指示した、③しかし、指示した後は、東京電力がどう対応しているか(きちんと管理しているか)は確認もせず放置しておいた④指示した後、きちんと管理できるまで時間がかかるという面もあるので、約1年間は経過期間にして海に放射能が垂れ流しになっても致し方がなく、今年3月にようやくきちんと管理させる体制とすることにした、etc。
原子力「寄生」庁の役人たちの発言は「居直り」そのものというべきでしょう。規制すべき組織が「何にも専務」をして、東京電力に汚染水管理を押し付けたままにしているからこうなったのです。
3.タンク汚染水の海洋放出問題
原子力「寄生」委員会・「寄生」庁の考え方・方針は、田中俊一原子力「寄生」委員長が、何度も何度も記者会見等で発言しているように、タンク貯留の放射能汚染水は「薄めて海に捨てればいい」というもの。それでは福島県民や多くの漁業者、それに多くの有権者・国民が納得しない、と何度言っても馬耳東風で態度を改めようとしない。今回の政府交渉でも、原子力「寄生」庁の役人は、会場からの激しい抗議をもろともせず、「タンクに高濃度の汚染水を入れておく方が危険だ、排出基準以下に薄めて海に捨てればいい」を繰り返していた。東京電力や経済産業省・資源エネルギー庁の方が、逆にタンク汚染水の海への廃棄については慎重な態度を取っており、どちらが規制する側で、どちらが規制される側なのか、わけがわからなくなっている。原子力「寄生」委員会・「寄生」庁は解体すべし(設置法を廃止する法律を国会が議決すればいい)ということは、この1点でも見て取れる。交渉主催者側の市民団体からは、濃度規制ではなく(排出される放射能の)総量規制を導入せよ・早く検討せよ、との申し入れを厳重に原子力「寄生」庁の役人たちに伝えていた。
それともう一つ、東京電力が言っている「放射性ストロンチウム(だけを)処理した」とされる汚染水ですが、処理前の放射性ストロンチウムの汚染濃度は「4×10の6乗ベクレル/リットル」で、処理後になると「1.7×10の6乗ベクレル/リットル」だそうです。もちろん放射性ストロンチウム以外の放射性物質は、有毒トリチウムを含めてたっぷり入っていますし、いわゆるALPSによる処理済み水にしたところで、有毒トリチウムがたんまり含まれています(それどころか、どうもALPSでは、複数の種類の放射性核種は除去できないようです)。こんなものは「処理済み」とは言わない(「処理途中」と表現せよ)。
●3-12【緊急政府交渉】汚染水問題@参議院議員会館…ぜひご参加を! – 原子力規制を監視する市民の会
http://www.tepco.co.jp/cc/press/2015/1248573_6818.html
4.高浜原発再稼働問題と汚染水対策
高浜原発3,4号炉の再稼働がもくろまれ、今現在、工事計画等の認可手続きが進んでいるが、福島第1原発事故の大きな教訓の一つというべき汚染水対策が全然手についていない。原発過酷事故を起こし炉心溶融が起きると、一方では、炉心を洗った汚染水が格納容器から漏れ出して来ることに加え、今般、新たに追加された「砲水」によって格納容器に外から「砲水」された水が敷地に落ちて、それが汚染水となって海に流れ出ていくという、新たな汚染水源が生まれている(ちなみに、この「砲水」の目的は、過酷事故時の放射能の拡散防止だそうです。こんなもので放射能の拡散が防止できるとは思えませんがね)。この2つの汚染水に対して、高浜原発はどういう「汚染水対策」をとっているのかを市民団体側が追及した。根拠は下記の「設置許可基準規則55条」である。
原子力「寄生」委員会・「寄生」庁が定めている「設置許可基準規則55条」(工場等外への放射性物質の拡散を抑制するための設備)には次のように書かれている。「第五十五条 発電用原子炉施設には、炉心の著しい損傷及び原子炉格納容器又は貯蔵槽内燃料体等の著しい損傷に至った場合において、工場等外への放射件物質の拡散を抑制するために必要な設備を設けなければならない。」
これに対して原子力「寄生」庁の役人は「シルトフェンス」の設置でOKとしたと回答。市民団体側から、シルトフェンスは網の目が大きなザルのようなもの、どの程度(何割程度)、汚染水の拡散が防げるのか、実証的な数字を示せ、と迫ったが、原子力「寄生」庁は「そんなものはない、シルトフェンスが設置されるから、必要な設備は設けられている」と居直った。再び唖然である。会場からは、実証的な根拠のないシルトフェンス設置でいいというのなら、私たちの家庭で使っているザルでも何でもいいということか、とヤジが飛んだ。家庭用のザルもシルトフェンスも、汚染水を止められないことには変わりはない。
●<福島第一原発ルポ>新型タンクや高性能ALPS……汚染水対策の現状は THE PAGE(ザ・ページ)
<私から発言したこと>
当日、会場から発言できる時間があったので、下記を発言しました。
(1)福島第1原発の専用港の防潮堤はテトラポットを積み上げたようなラフなもので、その港湾内に汚染水が排出されても、まもなく外洋に出て行ってしまう。港湾の内と外では、常に海水は入れ替わっている。港湾内に排出すれば比較的安全だ、などとは思わない方がいい。逆に、港湾を取り囲む防潮堤を、港湾内汚染水を外洋に出ていかないような頑丈なものに造りかえさせる必要がある。
(2)地下水は福島第1原発敷地の地下深くを流れ、専用港の真下の地下を通って海底に出て、沖合で湧水していると思われる。今建設中の「遮水壁」は、この放射能汚染地下水の海底での湧水をどれだけ防げるものなのか。地下深くの、地下水に混じった汚染水の海へ出ていく流れを止められるのか。
(3)東京電力は、福島第1原発事故で環境にまき散らした放射能が降雨によって汚染水になっても、降雨は自分たちの管理するものではない、などという、信じがたいような「降下放射能並びに降雨による汚染水は無主物である」との見解を取り続け、原子力「寄生」委員会・「寄生」庁は、それを追認するような形で、汚染水管理の指示通達を出している様子がうかがえる。許されない態度だ。
(4)ALPSはトリチウムを除く62種類の放射性物質を除去すると言われているが、実はALPSでは除去できない放射性核種がトリチウム以外に数種類あるようだ(東京新聞記事より)。それがいったい何の核種で、どれくらいの量なのかを知りたい。また、ALPSが放射性物質を除去するというのは、どういう原理を利用したものか、その仕組みが知りたい。
(5)高浜原発3,4号炉の運転差し止め仮処分の判決が、今月下旬にありそうだというメールが井戸謙一弁護士より来ている。福井地裁の樋口裁判長が、高浜の仮処分判決は自分が判決を下すとおっしゃっていて、今般結審となった。樋口裁判長は、この判決を出した後、転勤となる。他方、大飯原発3,4号炉の方は裁判継続で、次回の公判は5月20日となった。高浜原発仮処分判決の日程は、決まり次第ご連絡したい。
●『大飯原発の再稼働認めず!』樋口英明裁判長の判決要旨の全文です。ぜひ読んでください! – ウィンザー通信
http://blog.goo.ne.jp/mayumilehr/e/c23cee97b8aefb95b510b0505f9c6072
<会場参加者(川井満さん)の重要発言>
汚染水を貯めてあるタンクが手抜き工事で危険である旨の発言があった(別添PDFファイル)。私も同感である。このたくさんのタンク群は、基礎工事がいい加減なまま、手抜き工事で安上がりにつくられているものと思われ、直下型地震をはじめ、大きな地震や津波が来ると、ほぼ間違いなく二次災害を引き起こすものと考えられる。私は、再び津波に襲われた福島第1原発から、高濃度汚染水の入れられたタンクが、次々と、どんぶらこ、どんぶらこ、と海に流れ出ていき、やがてその汚染水が全部海に流出して「一巻の終わり」となるような気がしてならない。
ひょっとすると、原子力「寄生」委員会・「寄生」庁や安倍晋三・自民党政権は、そうなってくれることを密かに祈願しているのかもしれない。太平洋に汚染水が流れ出れば充分に薄まるだろうから、彼らの思惑通りということだ。しかし、たとえば放射能は生物体内で濃縮されるということを忘れてはいけないし、そもそも放射能は、薄めようが、どうしようが、消えてなくなることは絶対にない。物理的な法則に従って、気の遠くなるような時間をかけて減衰していくだけである、ということも常に念頭に置いておかなければいけない。
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