辺野古問題で沖縄県民への連帯を強めよう -世界平和アピール七人委員会が訴え-
- 2015年 4月 22日
- 時代をみる
- 伊藤力司沖縄
世界平和アピール七人委員会は4月22日、「辺野古問題を直視し、沖縄の人たちとの連帯を強めよう」と題するアピールを発表した。
アピールは、昨年沖縄で行われた名護市長選、沖縄県知事選、衆議院選挙の3選挙で示された民意に沿って辺野古反対を主張する翁長沖縄県知事に対し、安倍首相が説明抜きで「辺野古は普天間基地代替の唯一の解決策」としていることを「民主主義の根本の否定」と厳しく批判している。
アピールはまた、日本政府が沖縄県民の「平和に生存する権利」を無視して強権的な手段を用いることに強く抗議し、沖縄県民への連帯を強めるよう訴えている。
世界平和アピール七人委員会は、1955年、世界連邦建設同盟理事長で平凡社社長の下中弥三郎の提唱で、人道主義と平和主義に立つ不偏不党の有志の集まりとして結成され、国際間の紛争は武力で解決しないことを原則に、日本国憲法の擁護、核兵器禁止、世界平和などについて内外に向けアピールを発表してきた。今回のアピールは116回目。
七人委員会の発足時のメンバーは、下中のほか、茅誠司(東京大学総長)、平塚らいてう(日本婦人団体連合会会長)、湯川秀樹(ノーベル賞受賞者、京都大学教授)らだったが、現在のメンバーは、武者小路公秀(国際政治学者、元国連大学副学長)、土山秀夫(病理学者、長崎大学名誉教授、元長崎大学学長)、大石芳野(写真家)、小沼通二(物理学者、慶應義塾大学名誉教授)、池内了(宇宙論・宇宙物理学者、総合研究大学院大学名誉教授)、池辺晋一郎(作曲家、東京音楽大学客員教授)、髙村薫(作家)の各氏。
アピールの全文は以下の通り。
辺野古問題を直視し、沖縄の人たちとの連帯を強めよう
2015年4月22日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晉一郎 髙村薫
沖縄県名護市の辺野古の海を埋め立てて米軍基地を新設しようという日米政府の計画に、大多数の沖縄県民が一致して反対の意志を繰り返し明白にしている。それにもかかわらず現在の事態は大きな困難を迎えている。
2014年1月の名護市長選挙、11月の沖縄県知事選挙、12月の衆議院議員選挙の沖縄の結果を見れば、どれも辺野古の基地問題が最大の争点だったが、圧倒的多数で当選したのは、すべて「オール沖縄」で一致した辺野古基地反対派の候補だった。
先週の4月17日には、昨年(2014年)12月10日の翁長雄志沖縄県知事の就任以来かたくなに面会を断ってきた安倍晋三首相が初めて知事と面会した。首相は「率直に意見を交換したい」といいながら辺野古移転をなぜ普天間基地の唯一の代替案と考えているかの根拠には一切説明せず、知事が賛成できない具体的理由を丁寧に述べててもそれに対し何ら反論せず、「辺野古が唯一の解決策だ」と繰り返すばかりだった。
日本政府は沖縄が置かれている現状に目を向けることなく、民意に耳を傾けることもなく、日米官僚が1979年につくった辺野古移設案にしがみついているとしか思えない。
安倍政権は、憲法違反の集団的自衛権行使の法制化を目指して与党内であいまいな抜け道のある合意をまとめ、国会の野党の意見を無視し、主権者である国民の存在を無視し、国際的既成事実づくりを狙って非民主的な行動を重ねている。沖縄の米軍基地についても、このような非民主的行動を重ねる事態が続けば、残念ながら日本の周辺国とも、米国自身とも、安定した友好関係を築き上げることはできない。
現在の事態を憂慮しているのは沖縄県民だけではない。地方公共団体は中央政府の意向を無批判に実施するための組織ではない。実際、政府の意に沿わないとして沖縄県の意見を無視し続けている政府の行動を危惧し、地方自治の尊重を求める意見書を、長野県の白馬村議会(満場一致)、愛知県岩倉市議会(賛成多数)などが地方自治法に基づいて日本政府に提出している。私たちも民意に基づく知事の意見を政府が無視するのは民主主義の根本の否定だと考える。
私たち世界平和アピール七人委員会は2011年10月25日と2014年1月7日のアピールで、歴史を踏まえ、将来を目指して辺野古の米軍基地を建設してはならないと意見を述べてきた。
沖縄防衛局が海上工事に関係して海底に投下した20~45トンのコンクリートブロックは、沖縄県が権限に基づいて2014年8月に認可した岩礁破壊の範囲を大きく超えており、サンゴを破壊しているとして翁長知事は3月23日に海面変更作業を7日以内に停止するように指示した。これに対し林芳正農林水産相は30日、翁長知事の指示を無効とする「執行停止」の決定書を沖縄県と沖縄防衛局に送った。これも、自然環境破壊の有無と無関係に、問答無用とする強権的な決定であり、現内閣の体質を表している。
現在辺野古の新基地建設に向けた海上工事の強行に対して沖縄県民は、名護市と国頭郡宜野座村にまたがる在日米軍海兵隊のキャンプ・シュワブのゲート前で座り込みを続け、海上ではカヤックでボーリング反対を続けている。私たちは、沖縄県民の抗議行動の徹底した非暴力主義に強い敬意を払うものである。一方米軍、警察、海上保安庁が暴力的嫌がらせと排除を続け、けが人や逮捕者がでていることは、日本憲法第21条に規定された基本的権利である表現の自由の侵害であることが明らかであり、強く抗議する。
普天間基地について、1996年に当時の橋本竜太郎首相とモンデール駐日米大使が5年から7年以内に全面返還をめざすとこに合意したのは、現在の日本政府も認めている大きな危険を抱えているためであった。今後事故は起きないという根拠のない楽観論に頼ることなく、直ちに普天間基地の閉鎖を実施しなければならない。軍事基地の縮小・廃止は、国際緊張の緩和に必ず役立つことを歴史が示している。
琉球は15世紀から19世紀まで独立国として存在し、琉米修好条約(1854年7月11日)琉仏修好条約(1855年11月24日)、琉蘭修好条約(1859年7月6日)を締結していた。それを1609年に薩摩藩が琉球侵攻をおこない、1879年に明治政府が武力を背景にしたいわゆる琉球処分によって日本に編入した。
国土の僅か0.6%の沖縄に在日米軍基地の74%が存在する異常な差別を直視し、沖縄の基地増設を止めなければならない。そしてジュゴンと珊瑚とウミガメの住む美しい辺野古の海の自然の破壊を止めさせなければならない。
世界平和アピール七人委員会は、日本政府が沖縄県民の「平和に生存する権利」を無視し強権的な手段をもちいていることに強く抗議、あらためて沖縄県民への連帯を強めるよう本土の人びとに訴える。
連絡先 世界平和アピール七人委員会事務局長 小沼通二
mkonuma254@m4.dion.ne.jp 080-5463-3454
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