放射線被ばくの影響を一ケタ過小評価していませんか? -放影研原爆データ(LSSデータ)を検証する-
- 2015年 4月 26日
- 評論・紹介・意見
- 田中一郎
北海道の松崎道幸先生より,直近ご執筆の放射線被曝に関する論文を頂戴いたしましたので拡散いたします。非常に貴重な文献と思われますので,
みなさま,どうぞご覧下さいませ。
●「放射線被ばくの影響を一ケタ過小評価していませんか? -放影研原爆データ(LSSデータ)を検証する-」
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(一部抜粋)
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Q:ずっと前から疑問だったことがある。それは、放射線被ばくでどれくらいがんが起きるかを、何を根拠にして決めたのかということだ。
A:それはポイントを突いた質問だ。実は、日本の原爆被ばく者の追跡調査(LSS)が元になっているんだ。原子力ムラの一員である財団法人原子力
データセンターが運営する「原子力百科事典ATOMICA」にこう書いてある。(↓)
ATOMICAは、放影研による原爆被ばく者の追跡調査(LSS)が「放射線の影響に関する世界で最も有益な疫学調査」であると自認しているんだ。「世
界で最も有益」などという表現は、めったなことでは使われない。データの内容によほど自信があるんだろう。
Q:へえー、日本のデータが、世界中の放射線防護の基準になっているとは、初めて知った。原爆データが、世界中の放射線被ばく問題を考える基
準になっているんだ。
A:データがまともならね。
Q:えっ!? まともじゃないの?
A:そうなんだ。ふたつの大きな問題がある。ひとつ目は調査のスタートが遅かったということ。原爆はいつ投下されたか知っている?
Q:1945年8月6日と9日だよね。
A:LSSが始まったのは、その5年後の1950年。
Q:ということは、原爆投下の最初の5年間は調査が行われていなかった?
A:そうなんだ。調査は、1950年の時点で生き残った被ばく者を対象に開始された。それ以前に亡くなった人は、調査の対象となっていない。被ば
くから5年後に生存している人々は、放射線被ばくに「強い」人々である可能性が高い。だから、原爆データは、「被ばくに強い」人々のデータに
偏っているという批判が大きいんだ。
Q:原爆の影響が小さく見積もられてしまうね。
A:ところが、その問題のほかに、もうひとつ大きな問題がある。
Q:何?どんな問題?
A:放射線被ばくがどれくらい健康に影響するかを調べるためには、被ばくのない人々と被ばくした人々の病気の違いを比べなければならない。
Q:それは疫学調査のジョーシキでしょう。
A:ところが、実際は、爆心地から遠い被ばく者の被ばく線量がとても小さいと言う前提で、爆心地から遠い被ばく者と近い被ばく者の健康状態を
比べたんだ。
Q:爆心地から遠い被ばく者ってどういうこと?
A:爆心地から2.5km~10km離れた被ばく者ということ。直爆線量はとても低い人々だ。でも、爆心地から遠く離れた人々でも、脱毛などが発
生しており、直爆の外部被ばくだけでは全く説明できない多量の被ばくがあることが明らかになっている。全身被ばくで頭の毛が抜けおちる線量っ
てどれくらいか知っているかな?
Q:えーっと。わからない。教えてよ。
A:厚労省の会議で出された資料がある。「脱毛」は3グレイ(3000mSv)以上の全身被ばくを受けた時の症状なんだ。腸の粘膜細胞が傷ついておき
る「下痢」も何千mSvも被ばくした時の症状なんだ。
(以下,続く)
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なお,この問題については下記の名著にも詳しいですので,併せてご覧になることをお勧めいたします。
●『(増補)放射線被曝の歴史 アメリカ原爆開発から福島原発事故まで』(中川保雄/著:明石書店)
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032660915&Action_id=121&Sza_id=C0
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5308:150426〕
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