核連鎖内の軍事核産業と民間核産業との切り離されない密接な結びつき
- 2015年 4月 28日
- 時代をみる
- グローガー理恵
1980年に設立されたIPPNW (核戦争防止国際医師団会議)は、その名の通り、核戦争を医師としての立場から防止する活動を行うための国際組織です。しかし、2011年のIPPNW役員会において、「核兵器なき世界」を目指すためにIPPNWのスタンスをもっと包括的に広げるべきであるとの提案が可決さ れ、IPPNWは、全地球的な規模で核問題を考え、核連鎖に関する一部だけを対象とするのではなく、核連鎖全体を対象に立ち向かい取り組んでいこうとの活 動方針を打ち出しました。原子力問題に取り組んでいくこともIPPNWの重要な活動のひとつとなったのです。*
下記にご紹介させて頂きます2点の記事、「原子力が原子爆弾に力を与えている」と「核連鎖」は、IPPNWとリンクされた’NUCLEAR-RISKS’サイトに掲載されてあるものです。
原文(英文)へのリンク: http://www.nuclear-risks.org/en/home.html
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〈 281anti-nukeギャラリーから許可を得て転載 〉
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1. 原子力が核爆弾に力を与える (Nuclear Power powers the Bomb)
核連鎖がその機能を果たしている
(和訳: グローガー理恵)
1945年8月6日、一発の原爆は広島市を完全に倒壊させるのに十分だった。 その後、数十年の間に何度か、世界は核による壊滅の危機に瀕したが、運良く、もしくは偶然から、核戦争を危機一髪で逃れたのだった。 冷戦中の軍需品保有量は、核弾頭の総数6万5千発に及んだ。 現在は1万6千発の核弾頭が残っている。 ー これは未だ、全世界を一度以上破壊できるほどの量である。 そして、その核弾頭のうちの何千発かは、警報に備えて発射への準備ができており何分内に発射できる用意が整っている。
この事が果たして核エネルギー(原子力)の民間利用とどんな関係があるというのだろうか? その回答:大いに関係あり。
核連鎖における全ての部門 – それがウラン採掘であっても、原子炉であっても、研究用原子炉であっても、ウラン濃縮工場であっても – これら全ての核連鎖は、今日において、多くの国々が技術的に核兵器をほんの短い期間で開発できる選択を持っているという事実に、大いに寄与してきたのである。 すでに数ヶ国が核兵器開発を行った。 – 公然と、またはこっそりと…。
いわゆる「原子力平和利用」と呼ばれるものが、核兵器生産に必要な物質を広める原因となっているのである。 核兵器プログラムは容易に原子力プログラムの蔭に潜めさせることができる。 核エネルギーの民間利用と軍事利用は切り離せないほど密接に結び付いている、表裏一体のものである:核の民間利用も軍事利用も、共に 核と火遊びをしているのである。
以上
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2. 核連鎖 (Nuclear Chain)
(和訳:グローガー理恵)
ウラン利用のために必要なウラン加工における様々な工程は、よく ”核燃料サイクル”と呼ばれている。 しかし、これは現実として、リサイクリングとは全く関係ないものであり、ウラン資源から始まって核廃棄物で終わる袋小路へと導いていく通路のようなものである。
そうであるから、我々はこのウラン加工の工程を”核連鎖” と呼ぶようにしているのである。 この核連鎖における全ての繋がりは、ウラン採掘から始まり、”イエローケーキ**”の輸送、その後には原子力または核爆弾やプルトニウムをつくるための使用済燃料棒の再加工が続き、そして、結局は核廃棄物または核爆発の放射性降下物となって終わる。 これら核連鎖における全てのチェーンは、環境そして人の健康に取り返しのつかないような害を及ぼすのである。
世界中で何百万人という人々が、民間および軍事核産業の影響により苦しんでいる。- 民間・軍事核産業は表裏一体のものであり、核連鎖の蔭に潜んでいるのである。
以上
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(注)
*ソース: 「IPPNWによるUNSCEARフクシマ報告書の批判的分析」の4ページhttp://www.fukushima-disaster.de/fileadmin/user_upload/pdf/english/Akzente_Unscear2014.pdfhttps://docs.
**イエローケーキ: ウラン精鉱ともいい、ウラン鉱石から大部分の不純物を除いたもので、酸化ウランウランU3O8を40ー80%含む。 粗精錬の製品で黄色の粉末でケーキ状のためこの名がある。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye2973:150428〕
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