「NHKスペシャル|廃炉への道 2015核燃料デブリ 未知なる闘い」を見ました 感想です
- 2015年 5月 18日
- 交流の広場
- 田中一郎
とりあえず,見たばかりで,熱いうちに,お送りします。
腹が立っていますので,ぞんざいな言葉ですみません。
●NHKスペシャル|廃炉への道 2015核燃料デブリ 未知なる闘い
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2015/0517/
最初の方を見逃したけど,だいたい見ました。再放送が火曜日の真夜中=水曜日午前零時ごろにあるので,それを再度見る予定。
現段階での話ですが,溶け落ちた核燃料デブリ(がれき)が格納容器下部のコンクリートと反応して,上部は,ホウ酸割合が多いデブリ,下部はウラン割合が多いデブリの固まりになって両者は2つに分離できるくらいにくっきりと分かれているらしい。
そして,その下部にあるウランの固まりには,核分裂反応の連鎖を止めるホウ酸の割合が少ないため,下手をすると,再臨界=再びの核分裂反応の連鎖=原子炉に火がつく がありうるのだというのだ。(ホウ酸はウランなどから出てくる中性子を吸収して,核分裂反応の連鎖に対してブレーキになる)
この話,ジョーダンではないぞ,
少し整理して話をいたしましょう。
実は私は,この番組を見ていて,腹が立ってしようがなかった。こいつら,いったい何やってんだ!! NHKも,無批判に,何を放送してんだ,という印象です。
1.まず,廃炉=核燃料の取り出しがあたかも可能であるかのごとく放送されているが,核燃料デブリがどこにあるのかもわからない状態の技術水準で,そんなことができるはずもないではないのか。できもせんことを,まじめな顔をして,深刻なポーズをとって,あたかもできる可能性が高いかのようなふりをして,興味本位にやり,費用は全部税金で賄うから,原子力ムラ関係者は廃炉で「ボーズ丸儲け」である。
「少しでも再臨界の危険を減らし,万が一にも,そうしたことが起きないような何十もの慎重な対応をする」てなことを,TV画面に出ていた研究者の一人が言っていた。うそつけ,このヤローである。何故か?
2.福島第1原発に対して,真っ先にやらなければいけないことは
二次災害の防止=次の大地震・大津波に備えること
福島第1原発事故の実態の解明と事故原因の徹底究明である。
この重要な2つについて,東京電力も原子力規制委員会・規制庁も経済産業省も政府も国際原子力機関(IAEA)も,原子力ムラ諸君の誰も,一切着手しようとしない。まさに,何をやってんだ,お前ら,ということだ。
しかし,今回の番組で明らかになったことは,溶け落ちて,格納容器のコンクリートと反応して混ざり合った核燃料デブリは,ウランを高い濃度で含む部分が下部にあって,それが再臨界の可能性を持っているということだ。
そして,大事なことは,その再臨界は,なにも廃炉目的の核燃料デブリ取り出しの際にだけ,その時に限ってだけ,再臨界を起こすというような約束はしてくれていない。言い換えれば,福島第1原発1~3号機の格納容器内の現状の環境条件がちょっと変わっただけでも,再臨界の危険性はある,ということを意味している。事実,多くの科学者は,再臨界はちょっとしたことで起きると言っている。
実際,核燃料デブリ取り出しのために,デブリを切断したり,動かしたりすると,再臨界するかも知れないと,TVに搭乗していた科学者らし気人間が発言していた。
そして,そのちょっとした条件変化は,福島第1原発を再度の大地震・大津波が襲った時が可能性として高いのではないか,と考えるのは自然だろう。
しかし,この再度の大地震・大津波に対して,福島第1原発はどのような対応・対策をしているのか。海辺の岸壁に,わずかばかりの土のうを積み上げているだけではないか。まるで,アメリカ軍に追い詰められた大日本帝国が,太平洋岸に壕を掘って,そこに土のうを積み上げたようにだ。
「少しでも再臨界の危険を減らし,万が一にも,そうしたことが起きないような何十もの慎重な対応をする」と本気で考えるなら,まずやるべきことは,核燃デブリ取り出し対策ではなくて,この,大地震・大津波で福島第1原発に二次災害が起きないようにすることだ。にもかかわらず,何にもしとらんではないか。柏崎刈羽原発から,防波堤を直ちに福島第1原発へ移設するくらい,さっさとやれよ,と言いたい。
3.廃炉=核燃料デブリの取り出し とは限らない。こんなものに,あたかも希望があるかのごとく放送するのはおかしい,NHKと原子力ムラの共謀罪だ。共謀罪はこういう連中を逮捕せよ。
実際,番組が終わって,この番組の制作に協力した団体の名前の字幕を見た時,そのほぼ全部が,原子力ムラ連合軍だった。つまり,NHKは原子力ムラの広報として,この番組を放送している。この番組は,マユを唾だらけにして見ておく必要がある。
廃炉の方法は,たとえば小出裕章京都大学原子炉実験所助教がおっしゃるように,石棺にするのがいいのではないか。石棺にする前に,小出裕章さんがおっしゃるように,デブリの場所をはっきりさせて,それを金属の粉(鉄や鉛など)で包み込んで,その後,石棺化するという方法だ。何故,NHKは,こういう廃炉の方法もある,ことを放送しないのか?
格納容器も壊れていて,冷却水がジャジャ漏れになっている。この状態で,核燃料デブリを原子炉の上からつまみあげて取り出すのは難しいし,格納容器を横から穴をあけて,そこからデブリを取り出すというのも,あまりに危険である。格納容器を壊してしまったら,元も子もないかもしれない。
結局,せんでもいいような核燃料デブリの取り出し研究などはやめて,上記の2つと,安定した石棺化の研究をした方がよさそうだ。少なくとも,NHKは小出裕章京都大学原子炉実験所助教と原子力ムラの論争くらいは放送しろよ,と申し上げたい。
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