5.17沖縄県民集会 -本土はどう呼応するか-
- 2015年 5月 21日
- 時代をみる
- 宮里政充沖縄
5月17(日)午後1時から「沖縄セルラースタジアム那覇」で、「戦後70年止めよう辺野古新基地建設! 沖縄県民大会」が開かれた。主宰者側発表で3万5000人が参加した。17日の地元新聞は社説のほか、総合面、地域面、社会面で大々的に関連記事を載せた。際立っているのは本土に住む著名人・有識者・学者・アーティストたちの顔写真入りの応援メッセージが紙面を埋め尽くしていることである。
名護市辺野古の新基地建設に反対するための「辺野古基金」の共同代表としてスタジオジブリの宮崎駿氏や、シンクタンク「新外交イニシアチブ(ND)」の理事として沖縄の基地問題に取り組んでいる鳥越俊太郎氏の名前は早くから報道されていたが、この2氏のほかに宮崎駿氏と同じスタジオジブリの高畑勲監督、元首相の村山富市氏、評論家の佐高信氏、東大教授の小森陽一氏、作家の澤地久枝さん、精神科医の香山リカさん、歌手の加藤登紀子さんなど三十数名に及ぶそうそうたるメンバーが「辺野古新基地建設にNO」に応援を送っているのである。いま、それらの中から2人のメッセージを紹介する。いずれも「沖縄タイムス」の記事である。
ルポライターの鎌田慧氏:沖縄の悲劇にたいする無知はわたしたちの恥です。沖縄の屈辱に無関心なのはわたしたちの罪です。わたしたちは無知と無関心とで沖縄を苦しめてきました。沖縄の怒りを全身に受けて、わたしたちは安倍内閣の悪政と戦います。
イラク支援ボランティアの高遠菜穂子さん:米軍に「平和」をばら撒かれたイラクでは、私の友人が殺されている。憎しみを拡散する米軍にテロは撲滅できない。辺野古に基地を造らせないことは「名誉ある地位を占めたいと思ふ」われらの念願を叶(かな)える一歩だ。
沖縄県民の「オール沖縄」の流れだけでなく、このようなかつてないヤマトゥンチューの応援が多くなってきた背景には、安倍政権の強権政治があるのは確かだ。70年間続いた現憲法体制を根本から覆そうとする、国家主義的・ファッショ的思想と政治手法は日本の民主主義を崩壊させ、「美しい日本」とは真逆の「アメリカの正義に盲従する屈辱的で醜い日本」へ変貌させていく。多くの日本人がそういう危機感を抱き始めたということである。その状況下でいま最も先鋭的に挑んでいるのが沖縄なのだ。
5月18日の沖縄タイムスと琉球新報は何面にもわたって会場を埋め尽くした参加者たち
が「辺野古新基地NO」のメッセージボードを高々と掲げた写真を載せている。会場に入
りきれない人たちは場外に設置された大型モニターに見入った。
ここにおもしろい記事がある。
球場の外では民族団体の街宣車が回り、「売国奴」などと怒鳴っていた。そうした罵声を寄せ付けない気高い文化が、名護市辺野古の新基地建設に反対する3万5千人を包んだ。前日の辺野古でも、似た光景があった。日の丸と星条旗の一団が、抗議行動の現場までデモ行進し、挑発を試みた。ところが、抗議の市民は笑顔でカチャーシーを踊っていたのだった。行進団は振り上げた拳の下ろしどころがなく、なぜか「まじめにやれ」と怒った。沖縄の声はこれまでも、苦難と闘った歴史を背負うことで、深く響いた。さらに文化の誇りをまとうことで、ぶれない芯が通るようだ。2013年、「建白書」を引っさげて東京・銀座でパレードした首長たちは、想像もしなかった罵声を浴び、怒りに震えるばかりだった。あれから2年。沖縄はさらにしなやかに、強くなっている。(沖縄タイムス「大弦小弦」5.18)
県民集会は「保革を越えて私たち県民がつくり上げた新たな海鳴りは、沖縄と日本の未莱を拓(ひら)く大きな潮流に発展しつつある。県民は決して屈せず新基地建設断念まで闘う」という決議文を採択した。実行委員会の方は5月24~25日に上京して日本政府へ、27日から訪米する翁長知事一行は米側へ、この決議文を手渡すことになっている。
残念ながら、本土メディアがこれらの情報を熱く報道することはなかった。住民投票で「大阪都構想」が否決されたことの方がニュースバリューが高かったものと思われる。それは致し方のないことかもしれない。だが、私は本土の人たちのこの静けさがやはり気になるのである。ほんとうにこれからの国会で民主主義の存亡をかけた真摯で熱い議論が戦わされるであろうか。多くの国民が「なぜあの時必死に声を挙げなかったのか」と後悔することがないように、真剣な眼差しを国会に向けることができるであろうか。
私はいま、5月16、17の両日に行われた朝日新聞の電話による世論調査の結果に期待をよせてはいるのだが。
安全保障関連法案を今の国会で成立させる必要が ある23% ない60%
さて、この数字が例えば強行採決の事態に立ち至った時にどのような力を発揮するであろうか。沖縄のあのパワーがここ本土でも再現されるであろうか。(2015.5.19)
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