沖縄の過重な基地負担は本土の無関心と無視から -京都新聞記者がコラムで訴え-
- 2010年 12月 24日
- 評論・紹介・意見
- 京都新聞岩垂 弘普天間問題沖縄
米軍普天間飛行場がある沖縄県宜野湾市に住む知り合いのジヤーナリストから「ぜひ読んでほしい」と、新聞の切り抜きが届いた。沖縄県知事選(11月28日)直後の12月3日付琉球新報に載った記事だ。同知事選の結果について書かれたものだが、私には、ここには、米軍普天間飛行場の移設問題、ひいては在沖米軍基地に対する沖縄の人たちの考え方が如実に表明されているように思われた。それは、私たち本土に住む者に向けられた鋭い問いかけと言ってよかった。
知り合いのジヤーナリストが私に送ってきた新聞記事は、沖縄の地元紙の一つ、琉球新報の記事だが、実は京都市で発行されている京都新聞に載ったコラムであった。12月1日付の同紙7面「ニュースの現場から」のコラム「取材ノートから」で、筆者は同紙の新里健記者。
同記者は沖縄県西原町出身。1977年生まれ。2002年に京都新聞社へ入社、社会報道部などを経て2009年から洛西総局勤務。コラムの見出しは「沖縄知事選 普天間 痛み分かつ覚悟を」。琉球新報の記事は、京都新聞の協力を得てこれを転載したものだった。転載にあたり、記事の見出しは「県知事選 本土の人々の覚悟問う」「沖縄直視――ほんのわずかな想像力だ」となっていた。
西里記者のコラムは、京阪神に在住する沖縄県系人の、沖縄県知事選結果と米軍普天間飛行場移設問題への受け止め方を紹介したものだ。
同記者はまず、「普天間飛行場の移設先が争点となった沖縄県知事選は『県外』を訴えた現職の仲井真弘多氏が当選した。京都や大阪と縁がある『沖縄2世』からは、『ヤマトゥンチュ(本土の人)に高みの見物は許されない』『本土に移設して基地負担を平等にすべきだ』と、本土の人々の覚悟を問う声が強まっている」と書き出し、2人の「沖縄2世」の声を伝えている。
1人は、大阪市大正区に住む主婦(62歳)。彼女の母親は、日米両国政府の合意で普天間飛行場の移設先とされた名護市辺野古の出身。戦前、大阪の紡績工場へ出稼ぎに来て、京都市出身の男性と結婚、沖縄出身者が多い大正区に移り住んだ。主婦自身は大正区で生まれ、育った。
主婦は県知事選期間中、本土の人から「誰が勝ちそうなの」と面白半分で聞かれる度にいらだちを覚えた。「高みの見物を決め込むなら納得いかない。ヤマトゥンチュは観客ではなく、振る舞いが問われる主役のはずなのに」と主婦。
主婦は地元で開かれる普天間問題を考える学習会に参加している。「関空や神戸空港は沖縄と違って近くに民家はない。(普天間飛行場を)移せる」「日米安保条約の条文には、基地を沖縄に置くとはどこにも書かれていない」「朝鮮半島情勢が気になるなら、基地は北陸に置いた方が近い」「移設候補地のグアムは沖縄と同じ『大国の植民地』。マイノリティーである島民に負担を押し付けるのは良くない」。沖縄にルーツをもつ参加者からはそんな意見も出るという。
そして、こう語る。「日本を守るために基地が必要だとヤマトゥンチュが考えるなら、ウチナーンチュ(沖縄人)ばかりに基地を押し付けず、自分で引き受けてほしい」
もう1人は、この学習会の企画に携わる沖縄2世の「関西沖縄文庫」主宰者(57歳)。この主宰者は、県知事選の真の争点は本土の人たちの心性だったと、こう振り返る。「本土移設は、ヤマトゥンチュが普天間移設を自分の問題として考える際の具体策の一つ。基地が集中する沖縄の現状を黙認してウチナーンチュへの差別を続けるのか、自ら引き受けて差別をやめるのか。仲井真氏の当選によって、一層鋭くヤマトゥンチュの覚悟が問われるようになった」
2人の発言を受けて、新里記者はこのコラムを次のように締めくくる。
「人口が集中する洛中(京都市中心部)に基地が移設されたら。湖国(滋賀県)の住民が愛する琵琶湖を埋め立てて基地が造られたら。その時も『日米同盟は重要』と胸を張って言い切れるか―。沖縄人が長く過重な基地負担を強いられてきた主因は、京都、滋賀を含む本土の人々の無関心や『無視』にある。沖縄を直視するために必要なのは、ほんのわずかな想像力だ」
私たち本土の人間は、こうした沖縄の人たちからの問いかけを受け止めつつあるだろうか。「ほんのわずかな想像力」を働かせ始めているだろうか。
本土の地方紙が、沖縄の人たちの真の声を伝え始めたことに注目したい。新里記者のコラム「取材ノート」からは京都新聞のホームページの「記事バックナンバー」で閲覧することができる。
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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