【集団的自衛権問題研究会 News&Review :特別版 第5号】 (2015年6月13日)
- 2015年 6月 14日
- 評論・紹介・意見
- 杉原浩司
昨日6月12日の特別委員会の審議ダイジェストをお送りします。この日の
審議は、民主党、共産党が反対する中、浜田委員長がまたも職権(乱用!)
により強引に開催を決めたものです。そして、それに維新の党が協力した
ことも重大です。審議では、永田町の業界用語で「空回し」と呼ばれる信
じられない運営(ダイジェスト参照)も行われました。
今後の審議日程ですが、週明け15日(月)の午前10時に委員会がセットさ
れていますが、質疑者は不明です。より一層の厳しい監視が必要です。
◆衆議院インターネット中継 http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php
※右のカレンダーの日付をクリックして、委員会名をクリックするとアー
カイブも見られます。
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【6月12日(金)「安全保障法制」審議ダイジェスト】
一般質疑(首相出席なし、NHK中継なし)
◆若宮健嗣(自民)
「国際法違反の武力攻撃を支持するかのような議論が行われているが?」
岸田外相「我が国は国際法に違反する武力行使を支持することは全くあり
ません。我が国として米国が違法な武力行使を行うことは考えておりませ
ん」
◆若宮健嗣(自民)
「重要影響事態と国際平和共同対処事態との優先関係は? 国際平和支援
法から重要影響事態安全確保法へ変更しなければならない場合もあるだろ
う。こうした状況の推移の中、本当にシームレスに対応できるか?」
中谷防衛相「まずは重要影響事態法の適用を検討し、それが適用できない
場合にのみ国際平和支援法の適用を検討する。状況の推移によっては、国
際平和支援法から、基本計画の策定、国会承認等の必要な手続きを経て、
重要影響事態法に切り替える場合もある」
◆若宮健嗣(自民)
「法整備により日豪、日米豪でどのような協力ができるようになるのか?」
中谷「日米豪3ヵ国で共同訓練、人道支援、災害救援、海洋安全保障、能
力構築支援等で地域諸国と協力することを確認した。法整備により、グレ
ーゾーン事態での米軍等の武器等防護、国際平和共同対処事態における協
力支援、重要影響事態における後方支援、存立危機事態・武力攻撃事態に
おける支援で、法律に明記されてはいないが、ニーズが一致し要件を満た
せば、日豪、日米豪の運用協力が可能となる」
※この後、佐藤茂樹議員(公明)が質疑。終了後、民主党の割当時間に入
ったものの抗議して欠席。浜田委員長は「理事をしてご出席いたさせるよ
う要請させます」とのパフォーマンス。その後、質疑者がいないにも関わ
らず、そのまま予定時間いっぱい時計を回し続けました。これは「空回し」
と言われ、審議時間を稼ぐための慣習とのこと。私語と雑談で費やされる
時間が、審議時間として算入されてしまうのはどう考えてもおかしいと思
います。こうした悪しき慣習を改めさせることも必要でしょう。
◆牧義夫(維新)
「自衛官が入隊した時の大前提は専守防衛で、民間ならば労働契約法違反。
自衛隊法第40条に、防衛大臣は最小限度必要な期間、退職の承認を制限で
きるとあるが、無理やり首に縄をつけて連れていかれるのか?」
横畠法制局長官「限定的な集団的自衛権行使は我が国防衛のためで、隊員
の宣誓にある大前提は変わらない。退職制限は一般職の公務員にもある」
◆足立康史(維新)「民主がいないのは残念。ここにはいないが厚生労働
委員会には55年体制の亡霊が徘徊していた。与党と維新で議論を深めたい。
大阪都構想の住民投票の際も、学者と名乗る百人以上が反対していた。私
は数じゃないと思う。憲法学者の意見をどう受け止めるのか?」
中谷「幅広い方々にご意見を聞く、その参考の一助だろう」
◆足立康史(維新)
「今まで自衛隊員は訓練等で1874人死亡している。車両事故353件、航空
機事故586件、艦船事故41件、演習事故394件、他500件。これまで海外の
公務で亡くなる人が出ていないのは”僥倖”との声があるが、法成立で海外
で隊員が命を落とすことを想定しているか?」
中谷「海外の公務での死亡は4名。少ないのは大変な努力の結果」「起こ
らないよう最善を尽くすが、オペレーションを通じてあらゆる準備をして
いる。ご遺体の輸送の用意を含め様々な準備をしているが、具体的内容や
要領は自衛隊の脅威の見積もりなどを推察されることになるので差し控え
る」
◆足立康史(維新)
「自衛隊員のリスクについて、大臣の見解は?」
中谷「法律に伴うリスクが増える可能性はあるが、いかなる任務をさせる
のか、その中で特に運用、管理の面でリスクを極小化させる」
◆河野正美(維新)
「仮に最高裁で違憲とされたら政府はどう対応するか?」
横畠長官「違憲判決は想定し難いが、判断されれば法の適用ができない。
ただ当該事件にのみ効力持ち、法自体を違憲無効とは判断しない。どの条
項が問題になり、どういう判断が示されるのか、個々の内容を見ないと対
応は決められないが、司法判断は尊重し適切に対応する」
◆河野正美(維新)
「上陸作戦能力は以前は海外派兵につながるとタブーだった。離島防衛に
ついて、どのような議論や経過があったのか?」
中谷「水陸機動団を速やかに新編できるよう、水陸両用車の取得や教育訓
練施設の整備、要員養成により早期の戦力化に努めていく」
◆河野正美(維新)
「今後、水陸機動団のような能力は他国から求められるのではないか?
南シナ海、スプラトリー諸島、南沙諸島で中国とフィリピン、米国の間で
緊張が高まっている。同盟国の米国、フィリピンが攻撃を受ける可能性も
ある。この場合、法的にどんな対応ができるか?」
中谷「限られた前提条件だけで、特定地域をあげての仮定の問いには答え
を差し控える」
◆河野正美(維新)
「私も精神科医師として隊員のメンタルヘルスを見てきた。隊員の心身の
健康への対策は?」
塚原防衛省大臣官房衛生官「これまでメンタルヘルス強化月間、教育資材
配布、カウンセリング、自殺発生後のアフターケア、部外有識者・部内専
門家による教育などを実施してきた。継続して取り組んでいきたい」
※維新の3人の議員の質疑が終了後、浜田委員長はまたも「共産党のご出
席が得られません。再度理事をしてご出席を要請させます」と。当然かな
わず、「これより共産党の質疑時間に入ります」と述べ、予定時刻まで、
私語と雑談による審議時間の消化が行われました。
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<2つの政府見解に関するコメント>
6月10日 川崎哲(集団的自衛権問題研究会代表)
http://www.sjmk.org/?page_id=217
<特別版 第4号(6月10日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=226
<特別版 第3号(政府見解等を掲載)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=207
<特別版 第2号(6月5日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=187
<特別版 第1号(6月1日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=136
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発行:集団的自衛権問題研究会
代表・発行人:川崎哲
News&Review特別版 編集長:杉原浩司
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<本研究会のご紹介>
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◇『世界』7月号、6月号に当研究会の論考が掲載されました。
http://www.sjmk.org/?p=194
http://www.sjmk.org/?p=118
◇集団的自衛権問題研究会News & Review
第9号の内容
● 歯止め無き対米支援法制は「国民を守る」か(川崎哲)
● 新「日米ガイドライン」は何を狙うか(吉田遼)
http://www.sjmk.org/?p=130
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5408:150614〕
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