IS支配下モスルの住民たち(2) ―「イスラム国」との戦いは国連中心で⑲
- 2015年 6月 15日
- 評論・紹介・意見
- イスラム国坂井定雄
BBC中東版2015.06.09
モスルの実状:「イスラム国(IS)」の下で、どんな生活が(1)の続き
(2)少数派への迫害
これらの映像は、モスルの民族的少数派、宗教的少数派の家々がどのように「イスラム国」に接収されたのかを示している。かつては少数派の住民が住んでいた住宅地区は、いまやほぼ空っぽだ。
マリアム(キリスト教徒の産婦人科医) 「わたしは、熱心な読書家、蔵書家として知られていました。私の蔵書は増え続けていました。(ISによる迫害を恐れ=坂井注)イラクを離れる友人たちが、わたしはこの国を離れず、本を大切にすることを知っており、蔵書を託してきたからです」
「わたしはモスルが占領される以前から、過激なスンニ派から脅迫され、嫌がらせを受けました。しかしわたしは、民族、宗派の区別なく女性たちの出産を助け続けてきました。わたしは、わたしの患者の誰もが平等に治療を受ける権利がある、と信じています」
「でもわたしは、モスルが陥落したとき、脱出しなければなりませんでした。わたしは、身体が傷つけられることなしに、逃げることができました。エルビル(クルド自治区の首都)に移った後、ショッキングな知らせを受けました。ISがわたしの家を接収し、彼らが“NASRANI”と呼ぶ、キリスト教徒を示す“N”のマークを張り付けたのです。わたしは直ちにモスルの友人たちに電話し、わたしの蔵書を救うよう頼みました」
「しかし遅すぎたのです。友人たちは、すぐに返電してきて、わたしの蔵書はすべて路上に放り出されていた、というのです。ただ、隣人たちは貴重な本の一部を拾い、隠してくれたとのことです」
(3)脅迫、懲罰、拷問
映像は、モスクや神殿が破壊された様子を示している。住民たちはISの解釈によるイスラム法を無視した人に対する、野蛮な懲罰について語っている。ISはモスル占領後まもなく、支配地全域を領土とする“カリフ国”樹立を宣言、彼らのイスラム法を実施した。(カリフ=政教一体の最高指導者)
ザイド 「ISがモスルを支配した後、彼らの“カリフ国の法”が実施されました。最低の処罰は、喫煙などを処罰するむち打ちです。
「盗人は片手を切断されます。不倫した男性は高いビルから投げ出され、不倫した女性は投石による死刑です。これらの懲罰は人々を怖がらせるために、公衆の面前で行われ、しばしば、見ることを強制されます」
「わたしは、ISに逮捕された多くの人を知っています。その一部は、親戚です。一部は軍や警察に所属していたために殺されましたが、釈放された人もいます。彼らは、獄中でISが行っている、想像もできない残酷な行為のことを話しました」
「でも、釈放された人の多くは、話したがりません。沈黙したままです。もし話せば、また逮捕されるのではないか、と恐れています」
フアド 「わたしは自宅でISに逮捕されました。彼らはわたの兄弟を探して我が家にきたのです。兄弟が見つからなかったので、わたしを監獄に連れていきました」
「彼らはわたしを拷問しました。拷問した男は、くたびれるまで止めなかった。彼は終始らいらしていて、彼の囚人が話すことを聞こうとはしませんでした。彼はわたしをケーブルでむち打ち、心理的にも拷問しました」
「わたしの兄弟が自ら出頭してきて、彼に対する罪の訴えが虚偽だと分かりましたが、彼らはわたしを釈放してもいいと判断するまで、監獄に拘留し続けました」
「わたしはケーブルでひどく痛めつけられ、その傷跡は背中にはっきり残っています」(続く)
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