国庫は赤字、それでも税金は庶民が払い、大金持ちは払う必要なし!
- 2015年 7月 26日
- 評論・紹介・意見
- 合澤清
国庫は赤字、それでも税金は庶民が払い、大金持ちは払う必要なし!
書評・紹介:『タックス・ヘイブンの闇―世界の富は盗まれている!』ニコラス・シャクソン著 藤井清美訳(朝日新聞出版2012)
„Treasure Islands: Tax Havens and the Men Who Stole the World” by Nicholas Shaxson
1.「税金は庶民が払うものだ」
この書評の見出し(タイトル)をご覧になった方の多くが、「何というきわどいタイトルだ。」と憤慨されたことと思う。いや、私自身そう思いたい。こんなことが現実にあるとすればそれこそ一大事だからだ。
しかし、驚くべき事に、これが現実の姿であり、実際にはもっとえげつない現実が厳然として存在していることが、この本を読むにつれて分かってきた。
この本を紹介して下さったのは、専修大学名誉教授の内田弘先生である。先生のご専門は、言うまでもなく経済学である。その先生に、「面白いから読んでみたら」と言われて気軽に手に取ってみた。
最初の序文を読んだ途端に、大袈裟ではなく「総毛立った」。それほどすごい衝撃があった。
これを書いたのはイギリスのジャーナリストである。脚注の参考文献を見れば分かる通り、膨大な資料を駆使して、しかも多方面からの脅しにも屈せず(この本の中でも、一部の叙述に関しては、これ以上書けば身の危険がありうる、というニュアンスの箇所があったが)、よくぞこれだけの秘匿事項を暴いたものと、心から敬意を表したい。
しかし、このわずかな分量の書評の中では、到底この本の中身を総ざらいすることはできない。ここでは、表題でふれた事に関係する限りでのみ、抜き取って論じ、一緒に考えたいと思う。さらに深く興味をお持ちの方はぜひこの本に直接当たられることをお勧めしたい。
「「税金は庶民が払うものだ」(ニューヨークの大富豪、レオナ・ヘルムズリー)」(p.20)
これは、2008年に87歳で亡くなったニューヨークのホテル王(女王)のレオナ・ヘルムズリーが脱税容疑裁判で述べた有名な台詞である。彼女は、その遺産の一部(約14億円といわれる)をペットのマルチーズ(犬)に残したことでも知られる。
しかし、これだけではこの厭味な大金持ちが、われわれにとっては全く「鼻もちならない」台詞を吐いただけではないかと思われるかもしれない。それでは次の箇所をお読みになって頂きたい。
「アメリカの納税者の上位0.1%にとっては、1960年代には60%だった実効税率が、所得の増大にもかかわらず、2007年には33%に低下していた。上位0.1%が1960年代の税率で所得税を払っていたら、連邦政府の2007年の税収は2810億ドル以上増えていただろう。億万長者のウォーレン・バフェットが自分の会社について調べた時、受付係を含む全社員の中で彼の税金が最も低いことが分かった。全体を見渡すと、税金は全般的に下がっているわけではない。実際に起きているのは豊かな人々の払う額が減っており、他の全ての人がその減少分を負担しなければならなくなっている、という変化なのだ。」(p.41)
wikipediaによれば、「ウォーレン・バフェットは米国の著名な投資家、経営者、資産家、慈善活動家。世界最大の投資持株会社であるパークシャー・ハサウェイの筆頭株主であり、同社の会長兼CEO」とある。
何でも、2008年にはかのビル・ゲイツを抜いて世界一の金持ちになったとか。その金融資産だけで6兆円を超えるという人物をして、納税額が「受付係」よりも、他の誰よりも低かったというのである。まさに「唖然」として開いた口がふさがらない思いがする。しかもかかる人物が「慈善家」として知られているのである。「慈善家」の裏の顔を見る思いだ。
それでもなお、ここに挙げた事例は高々アメリカだけのもので、他の国ではそんなことはありえないのではないかと疑う方がいるかもしれない。次の長いが極めて興味深い引用をお読みいただきたい。
「イギリスの最も富裕な一族のメンバーで、世界最大の食肉小売会社の創業者で、個人としては史上最大規模の脱税を行ったウィリアムとエドモンドのヴェスティ兄弟はグローバル企業のパイオニアだった。彼らの事業の第一歩は、1897年、シカゴで買い付けたくず肉を故郷のリバプールで販売したことだった。彼らは既にリバプールに冷凍倉庫を建設していたので、競争相手より優位に立つことができた。…彼らの成功の秘訣は、彼らが本質的に独占主義者だったことにある。彼らは自分たちの会社に様々な名前を付けてヴェスティの会社とはわからないようにし、競争相手を買収した。」(pp.54-55)
「(1920年、王立委員会がヴェスティ兄弟の意見聴取をした際のウイリアムの主張は)「このような事業では、一つの国でどれだけの利益が生み出され、別の国でどれだけの利益が生み出されたのか判別することはできない」「肉牛を処分し、その牛から取れた製品が50か国で販売される。どれだけの利益がイギリスで生み出され、どれだけが外国で生み出されたのか判別することはできない」」(p.60)
「「私がアルゼンチンで動物を処分し、その動物から取れた製品をスペインで販売したら、イギリスはその事業から全く税金を得ることはできない」…自分の求めるもの(十分な利益)が得られないなら、自分の事業とそれが生み出している何千人分もの雇用を海外に移すと、彼は脅しをかけた。」(p.63)
「アルゼンチンの食肉産業に関する細かい情報を詰め込んだ報告書が作成されたにもかかわらず、委員会はヴェスティの帳簿を調べることはできなかった。…「ヴェスティ帝国の秘密主義を突き破る地点に誰よりも近づいていた男、デ・ラ・トーレ上院議員は、1939年1月5日、人類の全般的行動に対する落胆を表明する遺書を残して拳銃自殺した」(p.72)
当時世界で最も敬意を払われていた新聞の一つ、『サンデー・タイムズ』紙が、ヴェスティ家所有のイギリスの食肉小売チェーン、デュハーストが、1978年に230万ポンド強の利益に対して10ポンドの税金しか払わなかったことを明らかにした。税率0.0004%である。…不快なことだが、この記事に対する読者のコメントの大多数が、ヴェスティ家を支持するものだった。…1993年に、国民の強い抗議を受けて女王がついに所得税を払い始めた時、当代のヴェスティ卿はにっこり笑ってこうのたもうた。「さてこれで私が最後の一人になったわけだ」」(pp.73-74)
ヴェスティの蓄財にはアルゼンチン政府が関与していたとみなされているが、いまだ不明である。そしてこのような事例は決して米国や英国だけに見られる特有なものではない。更にひどい実情(事例)が、この書の中ではいくつも挙げられている。ここではこれ以上詳しく語るわけにはいかないが、例えば、アフリカのガボン(その終身大統領だったオマール・ボンゴ)と旧宗主国フランスの政財界エリートが結託した巨大な裏金作り(エルフ事件)が実名をもって登場する。ナチスと親密な関係にあった当時の世界最大の化学会社ファルベンなどがその大量な裏金資金をスイスに預金していた事実、この資金が「ナチス再興のための軍資金」になるはずだったことにも触れられている。
スイスはヒトラーの「金庫」だったが故に、ドイツ軍はここに侵攻しなかったことが分かる。
「…スイスは政治的庇護を軸とするアドルフ・ヒトラーの腐敗システムに直接かつ積極的に加担していたようだ。1941年、ナチス・ドイツの金の備蓄と外貨準備が底をつくと、スイス政府は8億5000万スイス・フランの融資を行い、スイスのメーカーが武器や計器を供給した。スイスの独立専門家委員会の報告が2001~2年に断定したように、「スイスはドイツの戦争遂行費用を賄う手助けをしたのである」。…バーゼルのアメリカ領事によれば、スイスの銀行家たちは「新ファシストの金融事業者」と化していた。」(pp.87-88)
2.「タックス・ヘイブン」
ざっと触れただけでもこれだけの恐るべき事例が出て来る。この闇の深さは計り知れない。
それでは、こういう不正な蓄財の資金洗浄(トンネル)はいかにして可能なのであろうか。
そのカラクリとして挙げられているのが「タックス・ヘイブン」(Taxhaven:租税回避地(港))である。
「タックス・ヘイブン」とは、一般的にいえば、外国企業に対して非課税かまたは極端に低率の課税しか行わない国や地域の事で、多国籍企業や個人資産家、あるいは曰く付きの資金(マフィアのカネなど)の課税逃れに利用される場合が多い。
従来「タックス・ヘイブン」として名高かったのは、イギリス王室属領のジャージー、ガーンジー、マン島と、ケイマン諸島などのイギリスの海外領土、パナマ、バハマ・バミューダ諸島などであった。しかし、今やその様相はがらりと変わっている。
「世界の最も重要なタックス・ヘイブンは、多くの人が思っているようなヤシの木に囲まれたエキゾチックな島々ではなく、世界の最も強力な国々だ。守秘法域の著名な支持者であるマーシャル・ランガーは、この認識と現実のギャップをうまく表現している。「世界で最も重要なタックス・ヘイブンは島だといっても誰も驚かない。だが、その島の名はマンハッタンだと言ったら、人々はびっくりする。さらに言うと、世界で二番目に重要なタックス・ヘイブンは島にある。それはイギリスのロンドンと呼ばれる都市だ」」(p.36)
アメリカはかつて、「タックス・ヘイブン」に反対であったという。1961年、ケネディはタックス・ヘイブン「消滅」の法律制定を議会に要請したが、それが無理だと判断し、その考えを変更、逆にこれを積極的に利用しようとするようになった。
「アメリカの影響下にあるタックス・ヘイブンで最も大きいのはパナマである。パナマは1919年に、スタンダード・オイルがアメリカの課税や規制を逃れる手助けをするために、外国船舶の登記を開始した。1927年にはオフショア金融に乗り出した。ウォール街が手を貸してパナマに制約の緩い会社設立法を制定させ、これによって、二、三の質問に答えるだけで誰でも税金のかからない匿名の会社を設立できるようになったのだ。「自由貿易圏というブラックホールによって、パナマは世界で最も汚い資金洗浄の場になったのだ」…オフショア金融はネオコンの構想の中心にひそかに位置づけられてきた。」(p.35)
日本はどうか。この本では残念ながら日本の事例としては、サラ金の武富士の「生前贈与」を受けた海外資産への課税問題の裁判に少しふれられただけ(ご存じのように、香港を「タックス・ヘイブン」として活用したことが脱税に当たるかどうかが争われ、結局は国税庁が敗訴。総額約2000億円を還付した)で、それ以外には詳しく語られてはいない。しかし、次の指摘は注目されるべきだ。
「日本は1986年にIBFをモデルに自前のオフショア市場を生み出して、アメリカの後を追った。それはちょうど巨大な信用ブームが始まった時期で、その後に当時は史上最大規模だった資産市場の暴落が続いた。このローラーコースター現象には様々な要因があったが、たった24か月の間に東京市場に押し寄せて、日本の銀行に金融自由化とはどういうものかを実感させた4000億ドルの資金も、推進要因の一つだった。この年はシティにおける決定的に重要な規制緩和、いわゆるビッグバンの年でもあり、それはウォール街に金融規制からの新しい大きな逃げ道を提供した。」(p.190)
ここでIBFとはインターナショナル・バンキング・ファシリティの略で、1981年6月、ロナルド・レーガンの大統領就任からおよそ半年ぐらいで、アメリカは新しいオフショアの形態を承認。「IBFは、オフショア・ユーロ市場の一種の簡易バージョンだ。それはアメリカの銀行が、従来はロンドンやチューリッヒやナッソーのような場所でしかできなかったこと-準備金規定にも市税や収税にも縛られずに外国人に融資すること-を国内で行えるようにした。」
3.税金逃れのテクニック
一般的に知られている税金逃れのテクニックとしては、
1.二重課税問題-国際的に二重課税にブレーキがかけられていることを楯に、出来るだけ租税の安いところ(出来ればゼロの場所)を選び、そこに名目だけの会社を作り、しり抜けする手法。
2.オフショア・システム-最も高い守秘性、最も緩い規制-有名なのはスイスの銀行、ロンドンのシティの銀行など。
3.移転価格操作-「タックス・ヘイブン」を利用して価格を操作し、税金を免れる手法。「多国籍企業が世界各地のタックス・ヘイブンの口座間で資金を移動させて、帳簿上の利益を税率の低い国に、コストを税率の高い国に移すことをいう。」(p.180)
4.「「繰り延べ税金」…オフショア・システムの極めて重要な要素である。企業は自社の利益をいつまででもオフショアにおくことができ、株主に配当するために自国に持ち帰ったときはじめて課税されるのだ。イギリスの税監視団体、タックス・リサーチUKのリチャード・マーフィーは、繰り延べ税金―(公正な世界では)今年納めるべきだが企業が納付を遅らせることを選んだ税金―を「返済期限のない、政府からの無税の融資」といいあらわしている。繰り延べ税金は多国籍企業の資本コストを大幅に低下させ―特に何年も蓄積される場合は莫大な得になる―それによって多国籍企業に、より小規模な国内企業に対する大きな競争優位を与える。」(p.186)
要するにどういうことかといえば、…
「多国籍企業は一つの子会社が別の子会社から購入した商品の価格を調整することで、サプライチェーンの最も都合の良い場所に利益を移すことができる。「そして、最も都合の良い場所は、当然税金が最も少ないところ、出来ればゼロのところだ」」(p.62)
影の銀行(Shadowbanking)やヘッジ・ファンドなどと、この「タックス・ヘイブン」やオフショア・システムが密接に関連しているのは今更指摘するまでもない。
企業ばかりではない。今日の信用バブルの巨大化の要因の一つに、「資金の額の巨大化(GDPという経済のフローよりも、資産などのストック=個人の金融資産の総計の方が規模が大きくなっている)」があると言われる。「その巨大資金が少しでも有利な投資先を求めて世界中どこにでも流れ込み、一瞬のうちに引き上げる(年金などの資産運用)。このような資金の流れをどこの政府も管理できない。」(pp.31-32)(『静かなる大恐慌』柴山桂太(集英社新書2012)))
大蔵省主税局国際租税課長を務め、国際租税の専門家で現在弁護士をしている志賀櫻はその著『タックス・ヘイブン―逃げていく税金』(岩波新書2013)の中で次のように言う。
「クレディ・スイスの試算によると、5000万ドル(約40億円)以上の純資産を持つ富裕層は、一位がアメリカで38000人、二位は中国で4700人、3位はドイツで4000人、四位は日本で3400人となっている。」(p.64)
「投機マネーによって破壊されつつある金融システムを守るべく政府が動員できる資金は、ヘッジ・ファンドなどのマーケットが動かす資金の規模に比べれば微々たるものにすぎない。政府とマーケットの資金規模の差は、為替相場への介入を見れば一目瞭然である。政府資金の介入だけで為替相場をコントロールできないのはなぜか。政府資金とマーケットとの間に、動かせる資金規模に圧倒的な差があるからである。政府資金で為替相場をコントロールできるならば、そもそも変動相場制になるはずがない。ヘッジ・ファンドなどが動員する投機マネーは、一国の経済を飲み込むことができるばかりか、世界経済をも震撼させるだけの規模があるのである。ヘッジ・ファンドは、調達してきた大量の資金を元手に借り入れをしてレバレッジを利かせる。そうして、非常に危険であるが極めて高いリターン・レートの投資、というよりは投機を行っている。そのレートは、実物資産に対する投資レートをはるかに上回る。そのため、本来ならば実物資産に向かうはずの投資にカネが回らなくなる。」志賀:同上(pp.152-153)
4.結論に代えて
既にしてかなりの分量の「書評・紹介」となってしまった。大急ぎで結論らしきものを書いてこの拙い論を終えたい。この本の結論は、国家による、あるいは国連などによる法規制の強化と言うことになる。しかしこのような法規制の強化が、資本主義体制という枠の中で果たして可能であろうかと言う点で、私自身は大いに疑問を持つ。
資本の本源的な性格である「世界性」、また「資本の自由」(投資)という名の「アナーキー性」は、資本主義体制の宿命(根源的性格=成立根拠)であり、これを完全に規制することは、資本主義そのものの廃絶となるのではないだろうか?
「企業も法的には国家から生まれるものだ。「国家は企業を生み出すことができる世界でただ一つの機関である」(『ザ・コーポレーション』ジョエル・ベイカン著(早川書房))「国家だけが企業に対して法人格や有限責任などの基本的権利を与えることができる。国家がなければ企業は存在しない。文字通り『存在しない』のだ」。企業に対する課税は窃盗だという主張は完全な循環論法である。」(p.293)
「民主主義国はアダム・スミスが説明したような累進課税の原則を長年支持してきた。「裕福なものが公の費用を、単に自分の収入に比例してではなく、それよりいくらか多く負担することは、さほど不合理なことではない」…だが、アメリカでは、―他の多くの国でも同様だが―この原則が消え失せている。2009年には、最も豊かな1%のアメリカ人は、連邦所得税の総額の40%強しか払わなかった。…2009年には、この1%がこの国の全ての金融資産のほぼ半分を保有していたのであり、しかもその割合は上昇しているのである。これは富裕層に対する高率の課税という問題ではなく、富の集中と格差の拡大という問題なのだ。しかも、40%という割合は所得税だけの話だ。富裕層は通常、所得のほとんどをキャピタルゲイン(株や土地売買による所得)に転換しており、キャピタルゲインの税率は勤労所得よりはるかに低い。さらに、社会保障税や州税があり、これらの税は中・低所得層の人々の肩に、富裕層の場合より重くのしかかる傾向がある。アメリカの最も富裕な400人については、彼らの事実上の税率ははるかに低く、わずか17.2%だ。しかも、この割合は低下している。所得税統計には表れないオフショアを使った富裕層の脱税を計算に入れると、この歪みはさらに大きくなる。」(p.300)
「金融資本は唯一の資本ではない。社会資本の方が重要だ。…経済学者のマーティン・ウルフは「重要なのは、社会的・人的資本、それに全体的な政策態勢だ」。これらはもちろん税金を必要とするものだ課税は歳入だけを目的とするものではない。歳入(revenue)は課税の四つの機能の一つにすぎない。再分配(redistribution)、代表(representation)―市民から税を徴収するためには支配者は市民と交渉しなければならない―説明責任や代議制のことを指す、価格改定(repricing)、例えば喫煙を減らすといった目的のために税率を変更すること…」(pp.301-302)(*『平等社会』リチャード・ウィルキンソン、ケイト・ピケット著 東洋経済新報社)
「国境を超えた違法な資金フローに関する最も包括的な調査は、ワシントンのシンクタンク、センター・フォー・インターナショナル・ポリシーで、レイモンド・ベイカー率いるグローバル・ファイナンシャル・インテグリティ(GFI)プログラムが行ったものだ。GFIは2009年に、途上国は違法な資金フローによって2006年に8500億ドルから1兆ドルの資金を失ったと―しかもその額は年率18%のペースで増大していると―推定した。これを途上国への援助の年間総額1000億ドルと比較すると、「…(我々は)援助1ドルごとに、約10ドルの違法な資金をテーブルの下で取り戻してきた…」…この調査以前の2005年に行われ、その後世界銀行によって支持された調査では、ベイカーは違法な資金フローの推定額を三つのカテゴリーに分けて示した。犯罪マネー―麻薬密輸、偽造品、ゆすりなどで得たカネ―が、合計3300億~3500億ドルで、総額の三分の一、汚職マネー―海外に送金された賄賂や海外で支払われた賄賂―が、合計300億ドル~500億ドルで、3%。三分の二を構成する三つ目のカテゴリーは、国境を越えた商取引だった。…麻薬密輸業者やテロリストなどの犯罪者は、企業が使っているのと全く同じオフショアの仕組みや隠れ蓑-シェルバンク、信託、ダミー会社―を使っている。システム全体に立ち向かわない限り、テロリストや麻薬密売業者を打ちのめすことはできない。それはつまり、脱税や租税回避や金融規制逃れを含めたオフショアの道具立て全体に取り組まなければならないということだ。この点を考えると、アメリカが犯罪マネーの押収に成功する率は0.1%だ…」(pp.45-46)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5523:150726〕
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