黄信号が点灯した日本経済と国会論戦
- 2015年 8月 2日
- 評論・紹介・意見
- 熊王信之
安倍政権は、憲法違反の新戦争法案を、衆議院での強行採決で通過させて、参議院でも言葉数ばかりが多くて内容のない答弁で時間を空費するばかりで、後は、万一の場合には、衆議院で再度強行採決さえすれば良い、とのふてぶてしい態度であるが、足許の日本経済を傍観していても良いのか。 アホノミクスの化けの皮が剥がれてしまい、景気後退局面の恐れが出て来ているのだから。
「輸出・生産の大幅な下振れを起点に、日本経済は回復期待が一転して景気後退懸念に変わってきた。民間調査機関は4─6月期の国内総生産(GDP)成長率について、当初のプラス成長から、年率1─2%台の大幅マイナス成長へ見通しを下方修正させた。」とロイターが報じたところである。
実体経済に黄信号が点滅しているのに、景気回復シナリオを前提に物価や成長、財政再建の道筋を描いても、捕らぬ狸に何とやら、である。 日銀に国債を買わせてバラマキをする企みも新国立競技場の建設費のような無尽蔵なバラマキは国民の怒りを買い、国の借金を増やすばかりである。
焦点:4─6月マイナス成長の公算、構造問題置き去りで長期停滞懸念 ロイター Business | 2015年 07月 30日 16:28 JST
国民の眼を謀る株高も、所詮は、官製相場である。
「株高」の正体はただの「官制相場」:「GPIF」改革見送りの問題点 磯山友幸 新潮社Foresight 2015年2月24日
厚生年金と国民年金の積立金126.6兆円を、資産構成比率の見直しで株式運用に投入する割合を高めている年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF )に、歩調を合わせるが如く51兆円を運用する共済年金も株式運用比率を高めている。 昨年の日銀の追加緩和は、その間隙を埋める役割を担ったもの、との指摘もある。
GPIFの新資産構成に51兆円共済が追随、国内債減・日本株 Bloomberg.co.jp 2014/08/05 13:30 JST
追加緩和が実施された本当の理由-増税後押し、GPIFと連携 Bloomberg.co.jp 2014/11/01 00:01 JST
国民にとっては、良い面の皮である。 強制的に蛸が我が脚を喰わされているようなものである。 我が年金資産を空虚な株高を設える資金にされてしまっているのだから。 人の銭で株高を演出し、その間隙を縫って自衛隊を「他衛隊」に編成替えして米国へ差し出す法案を強行採決する等という非道を犯した政権には引導を渡さねばならない。
議会の追及に関わっては他にも論があるが、法案が憲法との整合性を持たねばならないのは、立憲主義に依って立つ国家として余りにも当然の正論である。 であるからには、論議の焦点は、只の一つである。 他に論議するには及ばない。 法案は憲法に違うのである。 その正論を正々堂々と説き尽くすべきである。
安倍政権は、防衛上の必要性を論拠としている。 であるならば、他の憲法上の規定も、時の政権が必要と云えば「解釈の変更」に依り、無視されよう。 例えば、「言論の自由」はどうか。 テロの危険防止の必要上で言論の自由が封止される、と時の政権が解釈すれば、如何なる言論の自由の干犯も許さるのか。
時の政権が事情の変更を理由として憲法の解釈を変えることにより、如何なる法律であっても制定出来るのであれば、憲法は無きに等しいこととなる。 それは、無法者が統治する国家である。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5547:150802〕
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