【集団的自衛権問題研究会 News&Review :特別版 第34号】 (2015年9月10日)
- 2015年 9月 10日
- 評論・紹介・意見
- 杉原浩司
9月9日に行われた参議院特別委員会の一般質疑のダイジェストをお送りし
ます。ぜひご一読、ご活用ください。
9日の質疑は、中谷大臣のお馴染みの答弁撤回と陳謝から始まり、速記が
止まる中断もついに参議院で100回を超えました。衆議院を上回るハイペ
ースです。質疑が進めば進むほど政府答弁は破綻を極めています。とうに
ドクターストップがかかっている状態にも関わらず、当然実施すべき地方
公聴会すらすっ飛ばして強行採決に突き進むさまは、絵に描いたような権
力の暴走そのものです。
8日の抜き打ちでの中央公聴会の強行議決を受けて開かれた、9日の委員会
前の理事会では、鴻池委員長や与党理事から、陳謝と「今後このような運
営はしない」との発言があり、11日(金)に安倍首相出席の3時間の集中
質疑、14日(月)に首相出席の7時間の集中質疑が提案され、野党も了解
しました。15日(火)13時からの中央公聴会の公述人も、与党2人、野党4
人で開催する見込み。野党は16日(火)に地方参考人会(公聴会)を開く
よう強く求めており、折衝中とのことです。
順序は逆ですが、地方公聴会を必ず行い、全国各地、複数ヶ所で開催する
ように、また陳述人も広く公募し、一般参加者が参加できるよう広い会場
で実施するように、大至急求めていく必要があります。また、野党は河野
克俊統合幕僚長の参考人招致を一致して要求しました。これについても市
民による更なる後押しが重要です。
※9月11日(金)13時~16時の安倍首相出席、NHK中継入りの集中質疑は、
質疑者は未確定ですが、自民23分、民主55分、公明20分、維新17分、共産
17分、元気8分、次代8分、無ク8分、社民8分、生活8分、改革8分の予定。
朝鮮半島有事、防衛相「米戦闘機も防護可能」 存立危機なら(9月9日、日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS09H4Z_Z00C15A9PP8000/
安保法案で“イラク派遣”依然あいまいに(9月9日、TBS Newsi)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2583249.html
安保法案、16日採決で攻防=与党、来週成立譲らず(9月9日、時事)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201509/2015090900785&g=pol
安保法案:「16日成立」確認 自公幹事長が会談(9月9日、毎日)
http://mainichi.jp/select/news/20150909k0000e010229000c.html?inb=tw
【動画】安保法案 与党幹事長ら会談、16日に特別委で採決の方針確認
(9月9日、FNN)
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00302579.html
【動画】東京・日比谷:雨の中、平和と護憲訴える(9月9日、毎日)
http://mainichi.jp/movie/movie.html?id=896952996002
【動画】ふかぼり:国民の多くが反対 安保法案成立は是か非か
(9月9日、FNN みんなのニュース)※SEALDsの奥田愛基さんが出演
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00302544.html
【資料】参議院安保法制特別委員会(計45人)メンバーの要請先一覧
http://www.sjmk.org/?page_id=349
※FAX、電話での要請にお役立てください!
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【復活】
News & Review 通常版の第10号を配信しました!
http://www.sjmk.org/?p=412
2本の論考、
◆広がるデモ、迷走する答弁、迫る採決(川崎哲)
◆安保法制と文民統制の危機(吉田遼) をお送りします。
ぜひご一読ください。
【紹介】
日本平和学会が、ホームページ上で「安保法制100の論点」を発表して
います。まだ作業途上ですが、日々続々と更新していくそうです。ご覧の
上ご活用ください。
http://bit.ly/1hBZAgO
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【9月9日(水)参議院戦争法案特別委員会 一般質疑ダイジェスト】
※4時間、首相出席なし、NHK中継なし。
ネット中継アーカイブ
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
※カレンダーの日付(9日)をクリックしてご覧ください。
◆冒頭、中谷大臣が8月11日(大塚耕平議員)、9月2日(白眞勲議員)
の自身の答弁「劣化ウラン弾を運ぶとなりますと、相当自衛隊は危険で
ありますので、これは当然運ばないということで協議をしております」
を撤回。「我が国として劣化ウラン弾は当然輸送しないとの前提に立っ
て米国との間で平和安全法制全体を協議している」に差し替えてお詫び。
◆大野元裕(民主)
「中谷大臣、再三再四のおわびと撤回、お疲れ様です。昨日、場内協議
で全く合意がないのに質疑後、休憩に入り、合意もないのに理事会を開
き中央公聴会を議決した。総理の「国民に丁寧に説明する」は偽りだ。
政府与党は採決を見すえて国民無視で進めるのか?」
菅「国会が決めることであり、政府としてコメントは控える」
大野「政府は「地方を大事にする」と言っている。地方公聴会を立てて
ほしい」
◆大野元裕
「なぜ弾道ミサイル防衛(BMD)能力を持たない米イージス艦を守るか?」
中谷「能力を有しない艦も防護能力の低下した他艦を防護する」「E2D
早期警戒機やTPY2(Xバンド)レーダーなど相まっている全ての部分を
防護する」
大野「相まっていれば空母艦載のFA18戦闘機も守るのか?」
中谷「BMDの一帯に入っているか、日米協議しながら対処する」
中谷「FA18戦闘機も守るのか?」
中谷「存立危機事態との認定にたてばFA18は該当する」
◆大野元裕
「空中給油機や司令艦も守るのか?」
中谷「米軍への攻撃は存立危機武力攻撃に当たり含まれる」
大野「総理は「BMD能力を持つBMD艦を守り限定的だ」と。実際は横須賀
基地に配備された艦船を丸ごと守るものだ」
大野「空中給油機から衛星まで全部防護できると。総理の「限定的」が
全く理解できなくなった。「相まって機能」として際限なく守る対象が
拡大する。法案は朝鮮半島有事に米軍を丸ごと守るもので、自衛隊を米
軍の下請けにするものだ」
中谷「(BMDは)わかりやすい一事例。米軍システム全体の防護が必要」
◆藤末健三(民主)
「PKO協力法改正で2004年のイラク・サマーワと同じ状況での人道復興
支援はできるのか?」
中谷「ノーです。停戦合意がなくできない」
藤末「イラク特措法のような法律を作って対応するのか?」
中谷「特措法での対応は考えていない」
藤末「サマーワのような場合は対応しないのか?」
中谷「改正PKO法で実施する以外のことは考えていない」
◆藤末健三「サマーワのような場合、支援しないというなら、切れ目が
できますよ」
中谷「あくまでも法律の範囲内で対応する」
藤末「シームレスではないのか?」
中谷「改正PKO法の範囲以上は実施しない」
藤末「評価されたイラクでの活動ができなくなるがいいのか?」
中谷「範囲内で活動する」
注)改正PKO法には「紛争当事者が存在しない」と見なせば「停戦合意」
がなくても自衛隊を派遣できる規定が新設されている。
◆藤末健三
「法案は自衛隊員を大きく危険にさらす。「安全確保業務」という名の
治安維持で、ドイツはアフガニスタンで55人死亡した。米兵の死者3529
人中、大規模作戦中は109人、治安維持活動中が3420人。治安維持は非
常に危険だ。人道復興支援は行わず、検問やパトロールに送り込むのは
大問題。「国際戦争支援法」と呼んでも差し支えないものだ」
◆藤末健三
「大森元法制局長官は発進準備中の航空機への給油を「違憲」と述べた。
長官当時、「法制局の参事官は「典型的な武力行使との一体化事例だ」
と。外務省が給油を強く主張し、表面上「ニーズがない」で収めた」と。
事実はどうか?」
岸田「後方支援は国連憲章に照らして武力行使に該当しない。憲法違反
にも当たらない」
横畠長官「平成11年の大森長官答弁は「絶対クロだと認定はしていない。
今も憲法上の適否に慎重な検討を要する」と。私もその通りの認識だ。
周辺事態法からの除外はニーズがなかったからで、憲法上からではない」
◆藤末健三
「自衛隊の内部資料の図で、もし海上自衛隊の潜水艦がA国のヘリに攻
撃を受け、B国のヘリ空母がそのヘリに給油している場合、自衛隊はB国
のヘリ空母を攻撃できるか?」
中谷「B国艦船は武力攻撃を構成していないならできない」
藤末「自衛隊員の命を守るうえで問題だ。危険にさらす答弁だ」
◆真山勇一(維新)
「新ガイドラインと97年のものを比べると、97年は「(米軍は)打撃力
の使用を伴うような作戦を含め、自衛隊の能力を補完するための作戦を
実施」と。今回は言い回しが変わり、「米軍は自衛隊の作戦を支援し及
び補完するための作戦を実施」となっている。日本が主で米が従と読め
る。自衛隊も攻撃的作戦ができるのか?」
黒江防衛政策局長「同様の作戦を行うのではない。97年と役割は同じだ」
◆井上哲士(共産)
「河野統幕長が訪米時の文書を「防衛省において同一のものは確認でき
ず。記録は存在する」と。報道では「一字一句同じものは存在しない。
資料には誤字が含まれていた」とも。大臣、どこがどう違うのか?」
黒江局長「同一でなかった。米国との会談記録であり公表を前提として
おらず、明らかにできない」
◆井上哲士
「(統幕長の記録が)ほぼ同一のものだと事実上認めた。本人に聞く以
外にない。国会招致が改めて必要だ」「イラクの人道復興支援では、当
時イラク全土に停戦合意がないとみなしたが、停戦合意のある特定地域
が対象のミッションなら、PKO改正法による自衛隊派遣は可能か?」
中谷「国連などが特定した地域で条件に合えばできる」
◆井上哲士
「南スーダンPKOは情勢が悪化し、停戦合意が複数回崩れている」
中谷「反政府勢力は系統だった組織性を有していない。双方とも敵対行
為の禁止で合意している」
井上「200万人の避難民。政府の治安部隊が違法行為を行っている」
中谷「PKOの地域での武力紛争発生は考えていない」
井上「驚くべき答弁だ。こうした中で「宿営地の共同防衛」「駆けつけ
警護」をやるのか」
◆井上哲士
「JVCスーダン現地代表の今井(高樹)さんは「無防備な住民をテロか
ら守るのではなく、武装した民兵が来る。つまり境界線がない。市民に
向けて発砲する危険を含む」と述べている。認識は?」
岸田「8月17日に合意文書の署名式、8月29日に大統領令で戦闘停止」
井上「自衛隊が武力介入すれば双方から敵視され、紛争当事者になる恐
れがある。日本の平和イメージを崩し、NGOの活動が困難になる」
◆山田太郎(元気)
「なぜNSC(国家安全保障会議)の谷内局長は国会で答弁しないのか?」
中谷「局長は常時職務に当たり答弁はさせない。総理の要請があればす
ぐにブリーフィングしたり、直ちに海外対応をしたり、緊急時に事務を
迅速に対応したりするためだ」
山田「今度総理から指示して来てもらいたい」
◆福島みずほ(社民)
「河野統幕長の発言は立法府の否定であり、憲法へのクーデターだ。罷
免すべきだ」
中谷「確認できない」
福島「「夏までに成立」と言っているんでしょ?」
中谷「同一のものの存在は確認できません」
福島「そういう言葉はあるのか?」
中谷「確認できません」
福島「防衛省が持っている文書の国会提出を」
◆福島みずほ
「戦闘発進準備中の航空機への給油・整備、武器輸送などを民間企業が
行うことはできるのか?」
中谷「国から民間企業に協力依頼できるが、強制ではない。特に制限は
ないがそうした任務は自衛隊が実施する」
福島「条文上、除外規定はない。地方公務員も入るのか?」
中谷「地方公共団体は入ります」
◆福島みずほ
「昨年7月1日の閣議決定の日、全国一斉に高校3年生に自衛隊員募集の
ダイレクトメールが送られた。防衛省の指示か?」
中谷「各県の地方協力本部を中心に募集業務をしている。以前から実施」
福島「平成26年度は約2千万円の経費で、80円なら約24万通で全118万人
の約20%になるか?」
中谷「お答えは困難だ」
福島「経済的徴兵制としてやり過ぎだ。法的根拠はなくやめるべきだ」
◆主濱了(生活)
「「戦後レジームからの脱却」は戦前への回帰ではないか。1938年の海
軍大臣官房編『軍艦外務令解説』では、自衛権を行使し得る条件を「国
家またはその国民に対し、急迫せる危害あること」「他に代るべき手段
なきこと」「危害を排除するに必要なる程度を超えざること」としてい
る。いかようにも解釈でき、新3要件にかなり近い」
中谷「他に例を見ない極めて厳しい基準であり、恣意的判断の余地はない」
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5661:150910〕
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