安保法案を阻むため今こそ国会へ - 何としても護りたい日本国憲法 -
- 2015年 9月 13日
- 時代をみる
- 安保岩垂 弘
第2次大戦後の日本を支えてきた日本国憲法が崩壊するという事態が目前に迫った。戦後民主主義の終息とも言える決定的な危機と言える。参院で審議中の安保関連法案が、自民、公明両党によって9月17日にも参院本会議で可決、成立する公算が極めて強くなったからである。私たちに残された道は、国会請願という国民の権利を駆使して国会へ向かうしかない。
安倍政権は昨年7月1日の閣議決定によって戦後の歴代政権が維持してきた「集団的自衛権は行使しない」という方針を転換し、海外派兵への道を開いた。具体的には、憲法解釈を変えて日本が攻撃されていなくても米国の戦争に参戦することを可能にしようというもので、現在、参院で審議中の安保関連法案は、それを法的に裏付けようというものである。
日本国憲法第9条には「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」とある。
この9条の規定を素直に読めば、国民の誰しも安保関連法案が9条に違反するとんでもない法案と思うはずだ。現に憲法学者の大半が「違憲」とみているほか、山口繁・元最高裁長官も朝日新聞のインタビューに対し「少なくとも集団的自衛権の行使を認める立法は違憲だと言わざるを得ない」と述べている(9月3日付朝日新聞朝刊)。複数の元内閣法制局長官も「法案は違憲」という意見だ。まさに、内閣自らが憲法を守らないどころか、憲法の規定を破壊しておのれのやりたいことを押し通そうとしているわけで、まことに常軌を逸している。
近代国家の基礎は立憲主義にある、というのが世界の常識だ。立憲主義とは、政府による統治は憲法に基づいて行われるという原理で、政府の行為は憲法の制約下にあるという考え方に他ならない。安倍政権がやろうとしていることは、憲法のなかった戦国時代や中世・近世の統治者に等しいと言える。まさに立憲主義からの逸脱である。
最新のメディア各社による世論調査の結果をみてみよう。
まず、日経新聞とテレビ東京による8月23日から30日にかけての調査では、安保関連法案を今国会で成立させることに対して「反対」が55%、「賛成」が27%。
NNN(日本テレビ系)による9月4日から6日にかけての調査では、安保関連法案を今国会で成立させることに対して「よいと思わない」が65・6%、「よいと思う」が24・5%。
JNN(TBS系)による9月5日6から6日にかけての調査では、安保関連法案を今国会で成立させることに対して「反対」が61%、「賛成」が30%だった。
民意は、すでに明白だ。国民の6割が安保関連法案に反対なのだ。なのに、安倍政権は「国会内では多数派である」として、しゃにむに同法案を成立させようとしている。多くの国民の反対を無視してまで成立を図りたい理由はいったい何だろう。これまでの国会論議での政府答弁を聞いていても、納得できる理由はついに聞けなかった。野党の質問にもまともに答えようとしなかった。それほどまでして米国議会で行った約束を果たしたいということなのか。もしそうだとしたら、自国の民意に応えない政府はもはや日本国の政府とは言えない。
「民信なくば立たず」という。政治を行う上で最も重要なものは民衆の信頼である、という意味だ。安倍首相は、この格言をご存じなんだろうか。
緊迫の度を増しつつある国会内の動きに対応して、これまで国会に向けた行動を主導してきた「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」は、9月14日(月)13時から17時まで、国会正門前で座り込みを予定している。その後、18時30分から、「戦争法案廃案!安倍政権退陣!」を掲げて9・14国会包囲行動を行う。
1960年5月から6月にかけての日米安保条約改定阻止行動では、連日、おびただしい人々が全国から国会周辺につめかけた。改定された安保条約案が衆院本会議で自民党によって強行採決され、自然承認を控えた6月18日には、これを認めまいとする人々が国会周辺を埋め尽くした。その数は主催者(安保改定阻止国民会議)の計画(20万人)を上回る33万人(主催者発表。警察庁発表では13万700人)にのぼった。それから5日後、安保条約改定を成し遂げた岸信介・自民党内閣は退陣を余儀なくされた。
さる8月30日の国会包囲行動の参加者は、主催者発表では12万人(警視庁発表は3万3000人)だった。9・14国会包囲行動は1960年6月18日の参加者数を上回ることができるかどうか。
民意を政治に反映するために今こそ市民1人ひとりに行動が求められている。
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