再確認:アベノミクスはアホノミクス=新旧「三本の矢」の合計6本の矢は、みなマスごみと御用学者がもてはやした「大ウソ」の毒矢だった=市場原理主義アホダラ教がもたらした経済政策の空白ないしはネガティブ・バイアスは25年も続いている
- 2015年 11月 11日
- 交流の広場
- 田中一郎
みなさまご承知の通り、安倍晋三・自公政権は、憲法違反の戦争法制を強行採決し、安全性を無視した原発再稼働に邁進するなど、有権者・国民・市民の圧倒的多数の意向を無視した暴走政治を続けています。およそこの政権が行うことはロクなことがなく、バブル崩壊以降の日本の転落の速度を従来以上に速める作為を、これでもか、これでもか、と続けています。他方では、政権維持のため、御用学者やマスごみを総動員して、内閣支持率の維持に全力を挙げてはいるものの、このままでは支持率低下の勢いが増すばかりなので、この辺で起死回生とばかりに打ち出してきたのが新「アベノミクス」ならぬ新「三本の矢」と「TPP概ね妥結」(それ自体嘘八百)です。
それはまるで、今から55年ほど前に、60年安保での有権者・国民の大規模な抗議行動を受けて退陣した岸内閣の後の池田内閣が、自民党のイメージチェンジと支持率継続を狙って政治的に打ち出した、経済中心の「所得倍増計画」政策の焼き直しの様な観があります。当時の日本は高度経済成長の時代で、政策的に誘導するまでもなく日本経済は右肩上がりに拡大再生産をとげ、所得は倍増どころか数倍にもなっていきました。自民党政権の政策や霞が関の官僚どもが優秀だったというよりは、日本経済の担い手が優秀で熱心・勤勉(更にはエコノミック・アニマルの狂気人間達)であったのと、経済成長の時代にたまたま遭遇した、ということの方が大きな要因だったのでしょう。
しかし、平成の世の今日では、2匹目のどじょうは「アベノミクス」の下にはいません。いやそれどころか、1980年代半ば以降、愚かにもずっと続けられてきた市場原理主義政策や、バブル崩壊後の経済政策の失敗(不良債権処理の隠ぺいと先送りなど)の連続により、ガタガタ・ボロボロになってしまった日本経済を更に新たな泥沼に突き落とす、愚かの上塗りのような政策が「アベノミクス」に他なりません。小泉・竹中改革のグロテスク継続版と言ってもいいでしょう。「アベノミクス」がうまくいくというのなら、小泉・竹中改革も成功裏に終わって、日本はリーマンショックなどに左右されずに、今頃は元気な経済と豊かで安定した国民生活が実現できていたはずです。
しかし、事態はその真逆の状態で我々の眼前に現れているのであって、その小泉・竹中改革を、中身を少し変えて、もっと極端にヘビーにやったところで、事態が改善するはずもないのです。1991年のバブル崩壊以降、政治が我々有権者・国民の生活や仕事をよくしてくれるようなことがありましたか? 市場原理主義政策をやっている限り、そんなものはあり得ない話です。喜ぶのは一握りの巨大企業とその幹部たち、そして資産家・富裕層です。「朕はたらふく食っておるから、なんじ貧民飢えて死ね」が市場原理主義政策の「原理」なのです。
まず、「三本の矢」の新旧を並べておきます。
(旧)http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seichosenryaku/sanbonnoya.html
(新)http://www.nikkei.com/article/DGXZZO92034300U5A920C1000000/
(関連サイト)
●【アベノミクス第二幕】介護離職ゼロなど「新三本の矢」を発表!GDP600兆円を目標に!日米安保条約時の所得倍増計画を再現か? – 真実を探すブログ
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-8136.html?sp
<旧「三本の矢」>
(1)大胆な金融政策
(2)機動的な財政政策
(3)民間投資を喚起する成長戦略
<新「三本の矢」>
(1)希望を生み出す強い経済で「名目GDP600兆円」
(2)夢を紡ぐ子育て支援(希望出生率1.8)
(3)安心につながる社会保障で「介護離職ゼロ」
(1)「新三本の矢」の詐欺的手法(金子勝『週刊金曜日 2015.10.23』)
(2)世界同時株安で年金基金9兆円消失か(『週刊金曜日 2015.10.23』)
(3)物価目標 再び先送り 日銀総裁(日経 2015.10.31)
(4)新三本の矢「介護離職ゼロ」は的外れ(東京 2015.11.6)
(5)世界は商品ではない(竹田茂夫 東京 2015.10.15)
(6)特集ワイド:アベノミクスは統制経済か(毎日 2015.10.30)
まず、旧「三本の矢」の(1)金融政策と(2)財政政策だが、これは1991年のバブル崩壊以降、約25年もの間、出来ては消え、消えては出来た政権が、あれやこれやと使い尽くして結局今日に至り、結果として、巨額の財政赤字と超低金利・じゃぶじゃぶの金融緩和状態をもたらしただけに終わっている。もういい加減に、これまでの金融政策や財政政策の「失敗」を認めて、それのどこがダメだったかを徹底して反省すべき時なのに、それをしたくない、それをする能力もない、ために、今までのやり方は悪くなかったが、力が足りなかった、やり方が不十分で中途半端だった、今度は政治的な妥協などせずに、量的に破格に巨大・巨額にして、今までと同じことを繰り返さねばならない、とばかりに猪突猛進しているのが「アベノミクス」なのである。いわゆる「馬鹿の一つ覚え」なりだ。
「アベノミクス」の「第1の矢」である金融政策について簡単に言えば、いくら中央銀行の日銀が短期金融市場のオペや国債買入、あるいはリスク金融商品の買入など、中央銀行の「禁じ手」まで使って銀行や金融市場に資金供給をしても、その銀行や金融市場の「じゃぶじゃぶ状態」のお金を借りて使ってくれる企業や事業者が現れなければ、この金融政策が景気回復や投資増の経済成長につながるわけではないことは、もう、この25年近い極端な金融緩和政策でわかったであろうに。いつまでやっとるのか、ということだ。金融政策については、何十年も前のケインズの時代から、不況期や景気後退期には金融政策は役に立たない、金融政策が効果を発揮するのは景気過熱時の引締め政策だ、という「金融政策=ヒモ理論」が一般的に理解されていた。それを全く無視するマネタリズムという、事実認識の歪んだ市場原理主義アホダラ教の信者達が、経験から学ぶことなく、従ってまた、非社会科学的に金融政策をもてあそんでいる状態が今日の事態を招いている(「流動性の罠」などという、偏ったわかりにくい概念で不況期の金融政策の無効を説明するから訳が分からなくなるのだ)。
そして、よろしくないことに、ここまで日銀の市場からの買入を増やして資産を膨らませてしまうと、今度はこの愚かな超金融緩和政策を方向転換する際に、容易には日銀の資産の売却が進められないという事態に陥ってしまう。資産を膨らませていたアメリカFRB・連邦準備銀行も同様に買入で資産が膨張してしまって、従来の政策転換が容易ではなくなってしまっている。いわゆる「出口政策」を見失うまでに金融緩和政策を膨張させてしまっているのが今の黒田日銀なのである。誰が金融政策の大失敗を招いたのか=それは現日銀の黒田が「クロだ」。
他方、財政政策についても、単純に財政支出を増やして、たとえば土建事業やハコモノ、あるいは軍事・武器装備品などを政府調達しても、日本の経済がよくなるわけがない。原発輸出や武器輸出も同様だ。スペンディング・ポリシーと言われる財政政策で「乗数効果」(一の財政支出がその数倍の景気上昇効果を持つこと)を狙うのであれば、企業や経済の仕組み・構造を変え、平成の時代にあった、将来の日本のニーズを取り込むような、国民の生活を豊かにしていく、発展性のある分野に、財政支出を集中させなければならない。
また、大企業や資産家・富裕層への減税を繰り返したことにより、租税制度が穴だらけになって「課税標準」がやせ細ってしまっている。これでは、いくら景気が回復しても税収は回復せず、財政危機が解消することはない。従って、大胆で機動的な財政政策はいつまでたっても採用することは困難となる。財政政策についていえば、財政支出の構造とともに、税制についても、公正性・公平性を十分に尊重した形での抜本的な本格的改正が必要不可欠である。
にもかかわらず、「アベノミクス」は、法人税減税のための消費税増税という、上記で申し上げたこととは全く逆の市場原理主義的税制を更に邁進させ、返す刀で「国土強靭化」などとネーミングしたゼネコン強靭化・自民党土建利権族強靭化政策を、オリンピックや災害復興などを名目にグロテスクにも大展開しているのである。かような政策が、およそ日本経済の回復や国民生活の改善につながるはずもないのである。つまり、金融緩和政策は現状では役に立たない、財政政策は量ではなくて質を考え直せ、財政を立て直すには税制を抜本改革して愚かな減税の積み重ねをご破算にせよ、規制緩和ではなくて規制改革こそ重要だ、ということだ。
生産は所得を生み出すが、その所得は生産されたものを買い取る資金源になるもの、その所得を特定の限られた特権層に集中させるようなことをしていては、せっかく生産したものも売れなくなって、あるいは買える所得がなくて、結局は、経済の縮小再生産=負のスパイラルへと突入してしまうことになる。所得の再配分という財政政策の重要な役割を忘却することで、日本に「貧困」と過剰生産・過剰資本が蔓延していることに、もっと留意した方がいいのである。国民総生産=国民総所得=国民総支出(総需要)という「三面等価」の経済原則を忘れてはいけない。
まさに政策の「質」=内容を問い直せ、というのが、「アベノミクス」でいえば「第3の矢」の「成長戦略」であるはずであった。書き出すと長くなるので、以下簡単に申し上げておけば、要するに「アベノミクス」の成長戦略とは、安倍晋三・自公政権や現在の霞が関官僚たちの政策策定能力の欠如・政権担当能力のなさ=つまりは無為無策無能無力状態をよく現す、バカバカしい限りのお粗末政策の集合体と言えるのではないか。「アベノミクス」の「成長戦略」を具体的に批判するのは今更の観があるので、下記では、私が対案として考える成長戦略的政策のいくつかの「柱」を箇条書きにしておこう。一つ一つが詳細に説明が必要なので、ここでは「柱の略記」にとどめておく。
(1)脱原発と再生可能エネルギー開発、天然ガス燃料活用やコジェネなど新エネルギー技術の利用拡大と、エネルギー消費構造の抜本的な改造(分散型社会の実現)
(2)労働法制の抜本改善と正社員増大政策の強力な推進(労働法制抜本改革・最賃UP、地域振興のための新公社での大量正社員採用と地域定着など)
(3)TPP破棄と市場原理主義政策との決別、公的サービスや第三ファクター・市民ビジネスの充実施策とその民主的監視
(4)老朽化するインフラ対策の強化と地域密着の地場産業・生活関連基盤インフラの重視(たとえば、下水道見直し、低家賃の公営住宅の積極的な建設など)
(5)カジノ資本主義を抑え込む金融政策とTAXヘイブン対応=国際納税回避行為の根絶
(6)高齢化と人口減時代の「まちづくり」政策=都市計画法・建築基準法の抜本改正
(7)専守防衛の安全保障政策、防衛省の防衛庁への格下げと、自衛隊の災害救助サンダーバード隊への改組
(8)農林水産業復活のための抜本政策の展開=地場食品産業や関連産業とのセット推進政策
(9)首都移転と地方分権自治改革、平成の合併市町村の解体、都道府県の基礎自治体補完機能の強化
(10)環境規制強化と環境産業振興とのセット政策
そして、最後の新「三本の矢」については、3つとも「これを目標にします」と言っているだけのことで、こんなものが政策であるはずがない。金子勝慶應義塾大学教授がこの辺のことを上記にご紹介の『週刊金曜日』論文で詳述されているので、ぜひご覧いただきたい。それにしても、日本には、もはやまともな経済学者は金子勝慶應義塾大学教授しかいなくなったのか。金子勝慶應義塾大学教授は、自分自身を「経済学者ではない」と自称しているので、そうすると日本には、まともな経済学者は1人もいない、ということになるが、はたしてそうなのか。
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1.「新三本の矢」の詐欺的手法(金子勝『週刊金曜日 2015.10.23』)
http://www.kinyobi.co.jp/tokushu/001825.php
(なかなか歯切れがいい、わかりやすい論文です。必ず原本を入手してお読みください。:田中一郎)
2.世界同時株安で年金基金9兆円消失か(『週刊金曜日 2015.10.23』)
http://www.kinyobi.co.jp/tokushu/001825.php
3.物価目標 再び先送り 日銀総裁(日経 2015.10.31)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGF30H19_Q5A031C1MM8000/
4.新三本の矢「介護離職ゼロ」は的外れ(東京 2015.11.6)
http://www.asyura2.com/15/senkyo196/msg/218.html
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2015110602000145.html
5.世界は商品ではない(竹田茂夫 東京 2015.10.15)
http://kaminogesanpo.at.webry.info/201510/article_194.html
http://blogs.yahoo.co.jp/hatiland/36880321.html
http://sasakitosi.exblog.jp/22337282/
6.特集ワイド:アベノミクスは統制経済か(毎日 2015.10.30)
http://mainichi.jp/shimen/news/20151030dde012020003000c.html
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