たんぽぽ舎から TMM:No2652
- 2015年 12月 2日
- 交流の広場
- たんぽぽ舎
たんぽぽ舎です。【TMM:No2652】
2015年12月2日(水)地震と原発事故情報-1つの情報をお知らせします
転送歓迎
┏┓
┗■1.安保法制議論と劣化ウラン弾をめぐる奇怪な国会議論
| 「劣化ウランを運ばない」安保法案議論で噴出する政府のウソ
└──── 山崎久隆(たんぽぽ舎)
【初出:「DU WATCH」
劣化ウラン研究会ニュースレター第31号(2015/11)】
1.〔はじめに〕
今や人道支援の現場が、かつてない危険にさらされている。安保法制(戦争法)が
施行されればさらにそれが大きくなる。
『安保法案によって、日本はイラク戦争のようなアメリカが行う戦争に、もっと積極
的に、それも軍事的手段を以て加担することになりますから、NGOは高いリスクを背
負って現場に行かざるを得ないことになります。つまり安保法案の「駆けつけ警護」の
議論は、「日本人を守る」という美名の裏で、実際には人道支援NGOを危険な状態に
追い込むという御為(おため)ごかしの何ものでもありません。』
(平和学会のブログより)
人道支援団体メンバーは、これまで日本が軍事的に中立であるだけでなく、非武装で
あり「敵対行動はしない」として現地政府や武装勢力などから見られ信頼されていたこ
とが、最も大きく安全に寄与していたと証言している。
万一、軍事的脅威を感じるような「突発的な武力衝突」が生じた場合、日本政府が主張
するような「駆けつけ警護」自体が実施が困難であるだけでなく、極めて危険であること
を指摘している。
例えばイラクで多発した人道支援団体やジャーナリストの誘拐、襲撃事件を見れば明ら
かであろう。それは米英などの軍事的な存在(プレゼンス)があった場面でも起きてい
る。人質奪還どころか誘拐襲撃事件を事前に察知することも難しかった。
では、人道支援団体のメンバーはどうやって危機を回避しているのだろうか。
実際にイラクなどで活動している人々が異口同音に語るのは、現地の人たちや援助
団体同士が密かに情報を集めて警戒し、危険な場合は地元の人々の協力を得て安全な地
域に退避するしかないということだ。
非武装であれば、むしろ攻撃されるリスクは減る。武装している軍隊が近くにいる方
が遙かに危険であるという。
2.安保法制議論と劣化ウラン弾を巡る奇怪な国会答弁
「劣化ウランを運ばない」安保法案議論で噴出する政府のウソ
安全保障関連法案では、自衛隊による他国軍の武器・弾薬の輸送ができるとされる。
ただ、何を輸送できるのかについて明文規定がないため、野党が批判していた。
国会でも核兵器や劣化ウランと安保法制が議論になった。民主党の白眞勲議員と社民
党の福島みずほ議員による追及が、主に中谷元防衛大臣に対して行なわれた。その結果
明らかになったことでは、防衛省は劣化ウランについての過去の議論、主に外務省と米
国や、国連を舞台としてのNGOやイラクなどの被害を受けた国々の議論について、そ
れを全くフォローしていないばかりか、そもそも劣化ウランの軍事的な位置づけやNG
Oと外務省などとの議論さえも全く知らなかったことが露呈した。
劣化ウラン問題は与党議員が言うような、装備の一部の些末な話題などでは決してない。
日本政府が、イラク政府や人権団体などから国際人道法上の違法兵器と見なされる劣化ウ
ランやクラスター爆弾を、どのように考え、それに対処しようとしているのかを見るこ
とで、軍事力を国外に持ち出すことの真の問題を理解、把握しているかどうかがわかる
のである。
結論は、この問題について全く無知であるだけでなく危険極まりない姿勢であること
がはっきりしてきた。
ではまず、参議院の戦争法案特別委でのやりとりを福島みずほ議員の質疑記録の抜粋
から見ることにする。
-------------------
2015年9月9日(水)の安保特別委員会における「戦争法案」の質疑の一部
○福島 大臣は発進する戦闘機に関してクラスター爆弾や劣化ウラン弾が載らないよう
に協議し、かつチェックをすると、私の質問におっしゃいました。しかし、白眞勲さん
の質問に対しては、核兵器や核爆弾が発進する戦闘機に載ることについては法文上除外
されていないとおっしゃっています。これは法律論と政策論ですが、つまり、発進する
戦闘機に核兵器、劣化ウラン弾、クラスター爆弾、核爆弾が搭載されるということは法
文上除外されないということでよろしいですね。
○中谷元 核兵器などの大量破壊兵器、これは累次お話をいたしておりますが、運ぶこ
とはありません。
また……(発言する者あり)それから、劣化ウランとかクラスター弾につきましては、
運ぶことは想定していないということでございます。
○福島 そんなこと聞いていないですよ。法文上除外されていないということですよ。
白眞勲さんのに、除外されていない、法文上入ると言ったので、劣化ウラン弾、クラス
ター爆弾も、核兵器と核爆弾が入るのにクラスター爆弾と劣化ウラン弾が法文上除外さ
れるなんということはないですから、法文上除外されませんねという質問です。発進す
る戦闘機が載っけているものです。
○中谷元 法文上は除外されておりませんけれども、クラスター弾に対する条約がござ
いますし、それを保有する予定もございませんし、また劣化ウランを搭載した戦闘機に
対する給油も想定をしていないということで、そういうことは実施はしないということ
でございます。
○福島 でたらめですよ。だって、法文上は除外されていなくて、定義上除外されてい
ないと答えているじゃないですか。じゃ、私に対してチェックするとか協議するという
のはうそじゃないですか。劣化ウラン弾を運搬する協議をしていると言って、それがう
そだったように、そんな協議は未来も起きないんですよ。うそばっかりつくなというふ
うに申し上げます。でたらめ言うなと。人によって答弁変えるのはやめてください。矛
盾しているじゃないですか。法律上除外されていないんだったら、除外されていないと
言ってくださいよ。やらない協議をやるといううそをつくのはやめてください。
でたらめな答弁で、こんな法案審議はできない、そのことを申し上げ、私の質問を終
わります。
-------------------
劣化ウラン「除外」
劣化ウラン弾を輸送対象から「除外する」議論は、この後与党と野党3党との合意
協議でも蒸し返された。「自衛隊派遣に際し国会の事前承認を要件とする範囲を広げ」
るとともに「他国軍の後方支援では、核兵器や生物兵器などの大量破壊兵器やクラスタ
ー弾、劣化ウラン弾の輸送はしない」という附帯決議をくっつけた。これで「歯止めが
掛かった」というのだが、ウソにウソを重ねることになった。
そもそも、劣化ウラン弾やクラスター爆弾を米軍は国際法上の「禁止兵器」とみなし
てはいない。クラスター爆弾禁止条約はあるものの米ロ中国は批准していない。これを
使うかどうか決めるのは最前線の指揮官にゆだねられており、日本政府や、まして自衛
隊が関与できる余地などはない。
批判される劣化ウラン兵器・劣化ウランは依然として直接禁止する条約はないが、放
射性物質を兵器に使うことについては世界各地の使用地域において現在も大きな被害が
続いていることからも、強い反対の声はある。ただし米国は健康や環境への影響を強く
否定している。
米国はアフガニスタンやイラクやシリアに戦車を主体とする大規模な地上戦闘部隊を
派遣していないから地上部隊が使うことはないと考えられるが、航空機を投入して地上
の連合軍部隊を支援している。その中には主力兵器として劣化ウラン弾を使うGAU-
8アベンジャー重機関銃を搭載するA-10サンダーボルト対地攻撃機が存在する。こ
れが劣化ウラン弾を使っていないとは言えない。いつものように米軍は劣化ウランを使
わない保証もしていないのだ。
この機体は日本周辺にも配備されている。例えば韓国の烏山(オサン)空軍基地にも
配備されており、弾薬の供給は日本の第五空軍なども行う。つまり嘉手納や横田を使い
運ばれていると考えられる。
この補給網(サプライチェーン)を日本が担えば、自然と劣化ウラン弾を含む軍需物
資を取り扱うことになる。
3.劣化ウラン弾の運用実態
劣化ウラン弾は、A10サンダーボルト攻撃機の場合、複数の種類の銃弾を組み合わ
せて使用される。これは「コンバット・ミックス」と呼ばれる。高性能爆薬焼夷弾(P
GU-13/B HEI)と装甲貫徹用焼夷弾(PGU-14/B API)が混合され
ている。劣化ウラン弾は「API」である。これが4対1の割合で含まれている。通常
は工場出荷段階でこれらの組み合わせで梱包されると考えられている。コンバット・ミ
ックスはA-10の主要な軍需品であり、わざわざ日本の安保法制(戦争法)のために
これを崩して輸送するなど考えられない。
軍事的な合理性がないからだ。
劣化ウラン弾は主に対戦車兵器であり、相手に戦車のような堅固な兵器がなければ使
われないと思われたが、実際に1999年に劣化ウラン弾が使用されたサラエボ共和国ハ
ジッチ村の調査を、地元のサラエボ政府が実施した際、戦車や装甲車が配備されてい
なかった地域でも劣化ウラン弾が使われていたことが分かっている。そういう意味でも、
対戦車兵器であっても地上支援用に使用されるケースが存在している。
なお、現在のアフガニスタンにはタリバンは装甲車を持っている程度だがイラクやシ
リアのイスラム国には政府軍から略奪したソ連製戦車がある。これに対する攻撃に使用
される可能性が高い。
日本が米軍の物資輸送を担えば、当然ながらこれら弾薬が、輸送する物資に含まれる
ことになる。
4.日米安保と劣化ウラン弾
劣化ウランを特別に除外するためには、米軍が運用を変えなければならない。
例えばコンバット・ミックスを日米安全保障条約上の「事前協議」の対象とし、米国
が「拒否」するならば、銃弾の輸送を拒否しなければならない。日本の要求に従うなら
ば、コンバット・ミックスをわざわざ分解して劣化ウランとそれ以外に分割して梱包し
輸送する必要が生ずる。
一方、米軍は劣化ウラン弾の存在そのものを秘密とし、例えば嘉手納弾薬庫地区に存
在している(いた)かを含めて回答を拒否している。これは日本政府に対しても答えて
いない。
ところが安保法制の議論で、劣化ウランやクラスター爆弾の輸送、補給が自衛隊の任
務になりそうだとわかると、政府与党と3野党の土壇場の協議で「附帯決議」を付ける
ことになった。そのうち劣化ウランなどにかかわる内容は次のようなものだ。「他国軍の
後方支援のケースで、核兵器・生物兵器・化学兵器といった大量破壊兵器や、クラスタ
ー弾、劣化ウラン弾の輸送は行わないこと」
およそ自衛隊が輸送する可能性のある軍隊で、このような兵器を保有するのは米軍以
外あり得ないが、その中で「化学兵器、生物兵器」は明文条約により禁じられた兵器で
ある。これを運ぶ以前に、米国がそのような兵器を配備しているだけで国際法違反であ
り、支援どころか国際的な制裁対象になる話だ。これと「今のところは」明文で禁じら
れていない核兵器を同列に書く神経がわからない。
さらに、劣化ウラン弾とクラスター爆弾を同列にしているのも理解に苦しむ。
いずれも日本は保有、配備をしていない兵器体系であるから拒否をするというならば、
第一日本国内に貯蔵、配備を拒否するべきであり、その前段として存在そのものを問わ
なければならない。それがなくていきなり「運ぶのはダメ」といってみても、何も始ま
らない。
そもそも米軍が、輸送される梱包を一つ一つ「これは何何」と日本側に説明をすると
でも思っているのだろうか。
軍需品はその内容や構成そのものが軍事機密であることが多く、それは友軍に対して
も変わらない。米軍内部でさえよほどのことがなければ明らかにされていない。
米軍内部の規制が厳しいから日本が運ぶことはないという考え方も、本当にそうなの
かは誰も検証していないから分からないのだ。
5.戦争法案答弁書
加えて政府は、8月18日にこういった答弁書を作っている。
朝日新聞同日の記事から引用する。
『安倍内閣は18日の閣議で、「核兵器を始めとする大量破壊兵器を自衛隊が輸送するこ
とはあり得ない」などとする答弁書を決定した。民主党の山井和則衆院議員の質問主意書
に答えた。
答弁書は、他国軍への後方支援について「(法案には)特定の物品の輸送を禁じる規定
はない。(輸送実施は)自衛隊として主体的に実施の可否を判断する」とした。その上で、
日本が非核三原則を堅持し、大量破壊兵器の拡散防止にも取り組んでいることから、核
兵器を含む大量破壊兵器の輸送はあり得ないと結論づけた。劣化ウラン弾についても、
「安全に輸送するために必要な知見がないため自衛隊が輸送することはあり得ない」と
した。
安全保障関連法案では、自衛隊による他国軍の武器・弾薬の輸送ができるとされる。た
だ、何を輸送するのか明文規定がないため、野党が批判していた。』
やはり「あり得ない」答弁書である。実際に集団的自衛権の行使容認がなされてし
まえば、こんなことは誰も検証できないとたかをくくった内容だ。
これが実際に可能だというのならば米軍は装備の全貌を日本に対して事前に伝えるこ
とになるからだ。核兵器さえ伝えることをしなかった米軍が、そんなことをすると思う
のか。米軍から冷笑されている姿が目に浮かぶのだ。
6.解説:GAU-8アヴェンジャーAN/GAU-8
30ミリ機関砲であるアベンジャーは、7本の銃身を持つガトリング機関砲(銃身が
回転して次々に弾を撃ち出す。発射速度が極めて早い。)である。航空機では唯一、A-
10攻撃機に搭載された。対地強化目標攻撃と戦車破壊の任務を持つ。この攻撃機は戦車
・装甲車や車両などの地上の脅威を攻撃するため、近接航空支援として使用され、また地
上の脅威を監視し、目標に対する前線における空爆を指示するための航空監視警戒機と
しても機能する。30ミリ機関砲はマーティン・マリエッタ兵器システム(元ゼネラルエ
レクトリック)によって生産されている。
──────────
☆ひきつづき、たんぽぽ舎の活動・日刊メルマガ=「地震と原発事故情報」
へのカンパを受け付けていますので、よろしくお願い致します。
郵便振込 加入者名 たんぽぽ舎 口座番号 00180-1-403856
【編集部より】
メルマガ読者からの集会・デモ・講演会のお知らせ、その他投稿歓迎。
1.「集会・デモ・講演会等のお知らせ」に関しては、平等に掲載するため
日時、会場、タイトル及び内容、主催者、主催者の連絡先などを400文字
以内でお送り下さい。件名に「イベント案内掲載希望」と明記して下さい。
2.集会や行動の参加報告等に関しては600文字以内で、タイトル(見出し)及
び本文をお送り下さい。件名に「メルマガ掲載希望」と明記して下さい。
送付先は「 nonukes@tanpoposya.net」です。
なお、お送り頂いた投稿は集会・デモ・講演会のお知らせを含めて紙面の
都合上すべてを掲載できない場合があります。
たんぽぽ舎の会員からの掲載希望を優先させていただく場合もあります。
予めご了承ください。
──────────
◆このメールマガジンのバックナンバーは、ホームページの「新着記事」を
ご参照下さい。
◆メールマガジンをお送りします
たんぽぽ舎では、「地震と原発事故情報」(メールマガジン)を
発信しています。
ご希望の方は、件名を「メルマガ受信希望」としてご自身のEメールアド
レスからご氏名とともにたんぽぽ舎あてにメールを送ってください。
違うアドレスから「このアドレスに送って」ということは間違いの元と
なりますのでやめて下さい。登録できしだい発信致します。
たんぽぽ舎のメールアドレス: nonukes@tanpoposya.net
◆携帯電話への送信は、容量が多いためか全文表示できない例があります。
──────────
たんぽぽ舎は、月曜~土曜13:00~20:00オープン、日曜・休日はお休みです。
〒101-0061 東京都千代田区三崎町2-6-2ダイナミックビル5F
TEL 03-3238-9035 FAX 03-3238-0797
郵便振込 加入者名 たんぽぽ舎 口座番号 00180-1-403856
HP http://www.tanpoposya.net/
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。