ブラック企業大賞2015総括(内田聖子) 大賞は 株式会社セブンイレブンジャパンに
- 2015年 12月 6日
- 交流の広場
- 紅林進
ブラック企業大賞2015総括(内田聖子)
大賞は 株式会社セブンイレブンジャパンに
今年で4回目を迎える「ブラック企業大賞」。11月29日に授賞式が行なわれました。10月にノミネートした企業は6社。そのうち、今回大賞他、各賞を受賞した企業は以下の通りです。
●ブラック企業大賞: 株式会社セブンイレブンジャパン
●WEB投票賞 : 株式会社引越社関東(アリさんマークの引越社)
●ブラックバイト賞 : 株式会社明光ネットワークジャパン(明光義塾)
●特別賞 : 暁産業株式会社
●アリ得ないで賞 : 株式会社引越社関東(アリさんマークの引越社)
大賞を受賞したセブンイレブンについては、実行委員会は次のような文言の「表彰状」を差し上げました。
『貴社はフランチャイズに加盟する店主たちの「見切り販売」の権利を永年妨害し、二〇〇九年公正取引委員会から排除措置命令を受けました。この時、貴社は表向きには命令を受け入れましたが、その後も非公式に加盟店の権利を妨害していたことは、一三年八月の高裁判決と一四年一〇月の最高裁判決で証明されました。
近年コンビニ業界におけるブラックバイトの問題が深刻化していますが、その背景に、貴社に代表されるフランチャイズ本部による加盟店搾取の構造があることは店主らが証言するとおりで す。セブン&アイ・グループでは好業績が続き、社員たちがベア、定期昇給など恩恵を受けている一方で、加盟店とそこで働く従業員たちは、辛酸を嘗めさせられ続けています。
私たちブラック企業対象実行委員会は、貴社が作り出したこの支配構造は類のない歪さであり、その負の影響も絶大であると判断しました。よってここに、第4回ブラック企業大賞を授与し、貴社が言うところの「セブン-イレブン・ファミリー」が真の意味で
共存共栄できるよう、抜本的な対策を講じるよう求めます。』
コンビニに関する最大の問題の一つが、このフランチャイズ制度です。本部にのみ利益が確保され、各店舗は見切り販売なども不可能、ひたすら利益が吸い上げられて いくシステムです。このしくみはいくつかのルポなどでも指摘され、また今回も授賞式で発言してくださった現場の当事者の方々の声も挙げられていますが、改善されていません。
さらにセブンイレブンはマスメディアにも絶大な影響力を持っているため今回のノミネート・受賞式も、マスメディアで取り上げられることはほぼありませんでした(フリーランスの方や、スポーツ紙、ネットメディアは取材してくださいました)。こうしたことにも問題の根深さが感じられます。
またアリさんマークの引越社については下記のような理由で受賞しました。
『貴社は「アリさんマークの引越社」としてテレビCMを放映するなど、大変著名な引越会社です。貴社のみならず、引 越社、引越社関西とグループ会社を有し、全国展開をしています。こうした大企業であり、かつ、我が国有数の引越会社でありながら貴社の労務管理は驚くものがありました。
貴社は、同社従業員で元は営業職であったA氏をシュレッダー係に配転した上、突如としてA氏を懲戒解雇し、さらに、その懲戒解雇の事由を「罪状」などと記載し、A氏の顔写真を入れた書面(通称「罪状ペーパー」)を作成、これをグループ内の全国の店舗に掲示しました。
貴社は、A氏から裁判を起こされると懲戒解雇の理由があまりにもお粗末だったため、すぐにこれを撤回しましたがこの罪状ペーパーを貼り続けました。これに対するA氏所属の労働組合の抗議行動に対して、貴社幹部ら が、「おい、こらぁ!」「なにしとんねん、われえ!」「言うてみい、こらぁ!」などと発言する動画も話題となりました。
このほか、貴社に対しては、引越荷物の破損等に対する損害を従業員に負わせて給与から天引きしていたことから、全国各地でこれを取り戻す裁判が頻発しています。
こうした貴社の労務管理はブラック企業と称するに十分であり、通常企業ではあり得ないことの頻発でしたので、ここにアリ得ないで賞を授与いたします。一日も早く真面目にやってもらうことを求めます。』
授賞式には、当事者であるAさんが出席してくれ、ご自身の経験や思いを率直に語ってくださいました。しかし一方、授賞式の前に、「日刊SPA!」というインターネッ トメディアにて、引越社の副社長の「ブラック企業大賞は企業いじめ」というインタビューが掲載されました。
同社がAさんにした行為は棚に上げ、根拠のない反論を次々と語る同社に対してブラック企業大賞実行委員会は、ネットメディア「リテラ」のインタビューに応えるという形で対応しました。
ここまでひどいことを社員やアルバイトにしておいて、どうして平気で、「会社は悪くない、悪いのはそれを批判する側だ」・・と言えるのでしょうか。本当に理解に苦しみますが、私たちは今後も当事者が声をあげていけるよう、また声をあげた当事者を応援していけるような取り組みを続けていきたいと考えています。
(内田聖子)
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