本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(108)
- 2015年 12月 23日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
非鉄価格の急落
現在、「非鉄」や「貴金属」の価格が急落しており、この理由としては、「悪化する中国経済」や「ドル高」などが挙げられているようである。つまり、「中国の需要が減少しているために、価格が下落している」、あるいは、「貴金属の価格は、ドルと連動している」というような意見が、大勢を占めているようだが、この点には、大きな注意が必要であり、私自身としては、今後、全く正反対の動きになるものと考えている。そして、この理由としては、「2008年のリーマンショック」などの時に、「株価が大暴落して、世界は大恐慌に陥る」というような意見と、似たような論理だとも思われるからである。
具体的には、過去数年間、あるいは、現在でも、頻繁に、「大恐慌の再来」が叫ばれ続けているが、実際のところは、全く根拠のない意見であり、現実は、まったく反対の動きとなっているのである。つまり、いまだに定説が存在しない「1929年の大恐慌」の原因として「アメリカの間違った金融政策」が指摘できるが、実際には、「金本位制の下で、アメリカに大量に流入した金(ゴールド)の処理を誤った状況」が考えられるのである。
より具体的には、「1923年」に発生した「ドイツのハイパーインフレ」に怯えて、「金融引き締め」を実施し、その結果として、「世界的な民間銀行の連鎖倒産」が発生したわけだが、一方で、「国家の債務状態」については、現在と違い、きわめて健全な状態でもあったのである。つまり、当時は、「国家を救って、民間銀行を潰した」という状況だったが、現在では、全く正反対であり、実際には、「大銀行が救済されたものの、一方で、国家財政が、きわめて危機的な状況」となっているのである。
しかも、現在では、大量の資金が、世界に存在するために、将来的には、この資金が、「非鉄」や「貴金属」、あるいは、「原油」などの市場に、殺到するものと思われるために、決して、現在の「商品価格の急落」については、悲観的にならないことをお勧めする次第である。つまり、これからの「金融大混乱」を想定すると、現在では、「日本人だけが、全く備えの無い状態」とも考えられるのである。
このように、「国家財政の破綻」については、過去に頻繁に起こったことであり、この時には、必ず、「ハイパーインフレ」が伴ったが、現在の日本では、この点が、ほとんど無視されているのである。そして、「国債」や「預金」などが、最も重要視されているようだが、実際には、これから想定される「本当のインフレ」の時に、「貴金属などを持たずして、日本人は、どのようにして生き延びるのだろうか?」と憂慮せざるを得ないのである。(2015.11.25)
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パリのテロ事件
11月13日に発生した「パリの同時多発テロ事件」については、実に厄介な問題でもあるようだが、その理由としては、今までのような「遠くの戦争」から、今回は、「近くの戦争」へと変化した可能性があるからだ。つまり、今までは、「シリア」などを空爆することが、主な戦争方法だったが、現在では、「大都市でのテロ攻撃」に対しての「備え」までもが必要となったのである。そして、このような状況下で考えなければいけないことは、「どちらが優位に立っているのか?」ということであり、実際には、「どちらの陣営の方が、守るものが多いのか?」ということでもあるようだ。
つまり、「文明法則史学」が教えることは、「800年に一度」の「東西文明の交代期」において、「巨大都市」などの完熟文明が、きわめて短期間の内に崩壊し、「民族の大移動」が発生するということである。そのために、「今回も、このような事態が繰り返されるのか?」について、真剣に考えなければいけない状況のようにも思われるが、実際には、「絶滅した恐竜」のように、「巨大化した現代文明が、今後、大混乱に陥る可能性」を考慮する必要性が出て来たようにも感じられるのである。
そして、この時に脅威となるのが、「テロ攻撃」の恐怖よりも、「内部崩壊」や「内部分裂」の危機だと思われるが、実際に、「日米欧の国々」では、さまざまな「分裂」や「崩壊」が始まっているようにも感じられるのである。具体的には、「ロシアとトルコのいがみ合い」や、あるいは、「沖縄の辺野古基地問題」のように、「国家」と「沖縄県」とが「訴訟合戦」を行っている状況のことであり、また、先日の「安保法案」では、多くの国民が、デモを実施したことも、人々の記憶に新しいものと思われるのである。
しかも、この時に、「若干の利上げ」により、「日銀のバランスシート」が、大きな危機に遭遇する可能性も高まっているようだが、現在では、「約240兆円もの当座預金」と「約310兆円もの国債」が存在するのである。つまり、「短期借り、長期貸し」という、「金融機関としては、最も避けるべき事態」となっており、今後、「アメリカの利上げ」が実施された時には、たいへん脆い状態になることも、容易に想像できるのである。
つまり、「1991年のソ連」と、たいへん似た状況となっているようだが、かりに、今後の日本で、同様の事態が発生すると、「国家の財政破綻」や「ハイパーインフレ」の危機と同時に、「約4000万人」とも言われる「年金受給者」が、「どのような状態に陥るのか?」も、たいへん気に掛かる状況とも考えられるのである。(2015.11.25)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion5823:151223〕
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