IPPNWドイツ支部-Fukushima Newsletter (2015年12月号): ストンチウムが歯中と骨中に
- 2015年 12月 27日
- 時代をみる
- グローガー理恵
原文(ドイツ語)へのリンク:Hohe Strontium-Konzentrationen in Zähnen und Knochen
高濃度のストンチウムが歯中と骨中に
新しい研究結果
(和訳:グローガー理恵)
ストロンチウム-90は、半減期が28.8年のベータ線のみを放出する”向骨性 ”の放射性同位元素であり、核災害における最も危険な放射物の一つである。ストロンチウム-90 はカルシウムと似ていて、体内に吸収されると骨中に蓄積され、そこで敏感な骨髄を傷つけ白血病を誘発することがある。
この非常に測定困難なアイソトープは、仙台の東北大学の一つの博士論文*が示しているように、放射能汚染地域の土壌サンプルの中に検出されたばかりでなく、損壊された福島原発周辺の避難区域の若年牛の歯中にも見つかった ー 検出されたストロンチウム-90の放射能濃度はおよそ【150Bq/kg】である。
何よりも警戒すべきことは、放射能汚染度の比較的低い地域からの牛にもストロンチウム-90が検出されたことである。このストロンチウム-90の問題は、これまで想定されてきたよりも、はるかに深刻な問題なのかもしれない。とりわけストロンチウムはセシウムよりも容易に栽培植物から取り入れられる可能性があり、検査されたサンプルの中には、ストロンチウムの濃度がセシウムよりも高い場合が幾つかあった。
また、避難区域のみがストロンチウム-90で汚染されているということは決してない。例えば、福島原発から北部の40キロ離れた沿岸区域にある相馬市に非常に濃度の高いストロンチウム-90が検出されている。さらに、福島原発から195キロ離れた、東京の北部30キロほどのところに位置する千葉県の柏市や福島から244キロ離れた大都市/横浜で、また東京首都圏でも、土壌に低い濃度のストロンチウムが見つかったのである。
放射性ストロンチウムを吸収したのは牛や家畜ばかりでなく、ヒトも、その相当量を空気、水、食べ物を通し吸収したという懸念が大きい。それゆえに、フクシマ問題に真剣に取り組んでいる日本の科学者たちは、ストロンチウムを検出調査するために、日本中の子どもたちの乳歯を集める活動を開始した。1960年代に米国で類似した研究調査が実施されたが、その結果、アメリカの子どもたちの乳歯中に非常に高い濃度のストロンチウムが検出され、この調査結果は、世界中の地上核兵器実験を禁止することに寄与したのだった。
乳歯保存プロジェクトを進める日本人科学者たちは、今後の研究調査を通して日本国内の放射能汚染区域における健康リスクに関するデータを得られることを期待している。
以上
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【訳注】
東北大学の一つの博士論文 :二瓶英和氏が作成した論文 ’’ 福島第一原子力発電所警戒区域内被災家畜の歯中の放射性ストロンチウムとセシウムの測定 ”
http://ir.library.tohoku.ac.jp/re/bitstream/10097/56711/1/nihei-2794.pdf 3ページ
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye3185:151227〕
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