新年になりました、今年もよろしくお願い申し上げます:元旦のメールは、国際放射線防護委員会(ICRP)や放射線ムラの「学説」の根拠となっている広島・長崎の被爆者データ(LSS)がいかに問題の多い過小評価されたものかのお話です
- 2016年 1月 2日
- 評論・紹介・意見
- 田中一郎
みなさま、新しい年となりました。今年こそ、みんなの力でいい年にしていきましょう。今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、新年元旦の今日のメールは、国際放射線防護委員会(ICRP)や日本の放射線ムラの御用学者たちの「嘘八百」の基礎となっている実証データの広島・長崎の被爆者データに関する基礎知識です。既に過去にも数回、みなさまにご案内したことがありますので、あああれか、とお思いの方も多いことと存じます。しかしながら、今日お送りすることは、現在の日本や世界の放射線被曝ゴマカシの基礎の基礎、捻じ曲げられ歪曲された「似非実証データ」としての、「原爆傷害調査委員会(ABCC)」(のちの放射線影響研究所(RERF)・広島)により統括された「LSS:ライフ・スパン・スタディ」に関することですので、まだご存じない方は必ずご覧になっていただければと思います。
別添PDFファイル(省略)は、その中核部分を、下記にご紹介申し上げます名著『(増補)放射線被曝の歴史』(中川保雄:明石書店)の中の広島・長崎データに関する記述から切り取ったものです。そして、よろしければ、別添PDFファイルのみならず、この名著全部をお読みいただければと思います。一読してお分かりいただけることは、放射線被曝の歴史とは、原子力・核の利用=核兵器利用の邪魔になる放射線被曝の危険性を一貫して歪曲・矮小化し、ご都合主義的に隠蔽し、虚偽の公表を行って政策的に軽視・無視していく歴史の繰り返しでした。そうした非人間的・反人間的な「悪事」の裏側で、多くの被曝者が切り捨てられ踏みつけられてきたのです。それはもちろん、今でも続いています。今日の福島第1原発事故後の福島県をはじめとする、あまりに無邪気で無責任ともいえる放射線被曝の危険性の軽視・無視は、こうした過去を振り返った時に、その愚かさと将来へ向けての大変な負の遺産を残していくであろうことは、ほぼ明らかではないかと思えます。今や、この名著が現代を生きていく上での必読の書となっているわけです(腹立たしい限りですが)。
恐縮ですが、結論だけを先に申し上げます。広島・長崎の原爆被爆者データは、様々な形で歪曲・矮小化され、被ばく影響が小さく出るような形で「作為」された「インチキデータベース」です。かようなもので放射線被曝の評価を行うことは、被ばくに対して大変な過小評価となるとともに、将来へ向けて大きな危険性を抱え込んでしまうことになり、下手をすれば「種の破壊」を含む、全人類・全生物の滅亡へつながりかねません。
更に、広島・長崎のデータは、ご都合主義的に取捨選択されて公表され、言い換えれば、まだ多くのデータが広島の放射線影響研究所(RERF)の倉庫に非公開のまま隠されています。放射線被曝の危険性の真のデータは日米の「原子力ムラ」「放射線ムラ」の支配者たちに握られているといっても過言ではありません。そして更には、その真のデータをもってしても、内部被曝を中心に、人間や生物への放射線被曝の影響やその危険性については、実証研究が戦後一貫して政治的に歪められたり妨害されたりしてきましたから、きちんとした研究がなされないまま今日に至っています。つまり、内部被曝を中心に、放射線被曝の危険性は実証科学的に解明さえなされていないということを意味しています。今日、福島第1原発事故を受けて「安全・安心」を笑顔で振りまいている似非アカデミズムの権威者・学者どもは、すべて「大ウソつき」と言ってもいいと思われます。違うというのなら、その実証的根拠を見せよ、ということです。
幸いにしてと申し上げるのはふさわしくありませんが(何故なら、それらのデータの背後にはチェルノブイリ原発事故の被害者をはじめ、放射線被曝の犠牲となった方々がたくさんおられるからです)、それでも、世界の科学者・医学者・医者の不屈の良心は、徐々にではありますが、広島・長崎データに代わる多くの放射線被曝に関する実証データや疫学データの積み上げ・公表を行ってきていて、それらが示すところは、少なくとも国際放射線防護委員会(ICRP)などが広島・長崎のLSSデータを根拠に主張する危険性と比較して、格段に放射線被曝が危険であることを示しています。もちろん、100ミリシーベルト以下の被ばく線量であってもです。つまり「原子力ムラ」「放射線ムラ」の嘘八百とご都合主義の化けの皮がはがれ始めているということです。
それから、国際放射線防護委員会(ICRP)などの国際原子力マフィア=「放射線ムラ」の人間たちは、放射線被曝の管理に関する考え方も、被ばく評価の方法論とともに公表をし続けてきています。この辺のことは「広島2人デモ」の方がお書きになった下記レポートが非常に適切によくまとまっていますので、併せてご紹介しておきます(これも以前に私のメールでご紹介しています)。
放射線被曝に関して大事なことはたくさんありますが、私は次の4点を挙げておきたいと思います。
(1)脱原発=脱被ばく=被害者完全救済は「三位一体」として進められなければなりません。脱原発は賛成だが、脱被ばくは消極的です、などという態度はニセモノ、あるいは不勉強で、将来大きな後悔を招きますし、被害者を無視・軽視した脱原発や脱被ばくなどありえません。「脱原発」とは「原発レジーム」からの脱却を意味しており、その中の最も重要な課題の一つが「被害者を完全な形で救済する」ということです(「原発レジーム」からの脱却がなければ、原発を止めても、またしばらくすると再稼働・再利用されてしまいます)。
(2)国際放射線防護委員会(ICRP)や「放射線ムラ」=その代表格が、東京大学、長崎大学、広島大学、放射線医学総合研究所、放射線影響研究所(RERF)などです、の言うことを「疑いの目」で見ること。必ずその主張の根拠の実証性(実験・経験データで裏付けられているのか)を徹底して問いということです。そして、チャンスがあれば、彼らの発言や主張を追及してください。
(3)外部被曝と内部被曝は別物です。ニセモノの放射線被曝評価単位の「シーベルト」で、両者を足し合わせたりしてはいけません。いや、それどころか、内部被曝を「シーベルト」という評価単位で評価してはいけないのです(あくまで放射性物質の量の単位である「ベクレル」で見てください)。それは内部被曝に対する大きな過小評価につながります。そして、放射線被曝は徹底して避けましょう。外部被曝に加えて、食べものと呼吸による内部被曝、この3つが重要です。恒常的な低線量被曝(外部被爆・内部被曝)は非常に危険であるという意識を強く持ち、放射能・放射線からは、逃げて、逃げて、逃げて、徹底して逃げ回りましょう。そして、そうした放射線被曝を押し付けてくる勢力(政治勢力を含む)を、可能なすべての手段を行使して、追い払いましょう。多くの有権者・国民・市民がその気になれば、簡単にできることです。そうすることで、放射線被曝評価と対策の適正化を図ることができ、原発・核・放射能の呪縛から解放されるのです。
(4)放射線被曝、特に内部被曝の健康被害は、ガンや白血病に限りません。内部被曝によってDNA・遺伝子が傷つけられて云々の話も、生物学的・医学的に見れば一面的です。放射線被曝は、人間や生物の体のすべてを破壊します。細胞レベルのミクロの世界で申し上げれば、DNA・遺伝子(細胞核だけでなく、ミトコンドリアという細胞内の器官にもありますから要注意です)のみならず、それらを制御している細胞内外の生命秩序トータル(エピジェネティクス現象を含む)が放射線による巨大なエネルギーによって不可逆的に破壊されるのです。ですから、放射線被曝の健康被害は、ガンや白血病に限らず、ありとあらゆる病気や健康障害につながり、更に恐ろしいことに、遺伝子やエピジェネティクス生命秩序を破壊することによって遺伝的な障害まで招いてしまうのです。核と人類、放射能と生命が共存できない理由がここにあるのです。
<別添PDFファイル>
●広島・長崎での放射線障害の過小評価(中川保雄『(増補)放射線被曝の歴史』)
<ご推薦申し上げる名著>
●『(増補)放射線被曝の歴史』(中川保雄:明石書店)
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032660915&Action_id=121&Sza_id=C0
<ご推薦申し上げるレポート>
●低線量内部被曝の危険を⼈々から覆い隠すICRP学説の起源(第128回広島2人デモ 2015.5.1)
http://www.inaco.co.jp/hiroshima_2_demo/pdf/20150501.pdf
<ご参考>
(1)(増補版) 放射線被ばく評価の単位 「シーベルト」 への疑問 いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/post-9ead.html
(2)放射線被曝の単位「シーベルト」はどのようにインチキなのか? いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2013/11/post-1ba9.html
(3)ICRP国内メンバーによる内部被曝論はいかなるものか いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-2747.html
(4)『放射線健康障害の真実 がんセンター院長が語る』(西尾正道:旬報社)
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032747179&Action_id=121&Sza_id=C0
(5)『隠された被曝』(矢ケ崎克馬:新日本出版)
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032454729&Action_id=121&Sza_id=C0
<別添PDFファイル『広島・長崎での放射線障害の過小評価(中川保雄『(増補)放射線被曝の歴史』)』の一部抜粋>
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(中略)ABCCは、広島・長崎の原爆被爆者を対象とした放射線の晩発的影響に関する研究は、10万人規模の集団を30年以上の長期間にわたって追跡調査した唯一無二にして精級な研究であると誇ってきた。しかしそれはすでに見たように、数々の問題点を含んでいる。改めて整理するならば、
第一に、被爆後数年の間に放射線被爆の影響で高い死亡率を示した被爆者の存在がすべて除外されている。
第二に、爆心地近くで被爆し、その後長く市外に移住することを余儀なくされた高線量被爆者が除外されている。
第三に、ABCCが調査対象とした直接被爆者は1950年の時点で把握されていた直接被爆者数、28万3500人のおよそ1/4ほどでしかなかった。しかも、調査の重点は2キロメートル以内の被爆者におかれ、遠距離の低線量被爆者の大部分は調査の対象とすらされなかった。
第四に、そのうえでABCCは高線量被爆者と低線量被爆者とを比較対照するという誤った方法を採用して、放射線の影響を調査したのであった。
第五に、年齢構成の点においてもABCCが調査対象とした集団は、若年層の欠けた年齢的に片寄った集団であった。
以上のようにABCCが行った紋射線の晩発的影響の調査は、きわめて片寄った集団を対象としたものであったと言わざるをえない。そのような片寄った集団を対象として得られた放射線被爆線量とガン・白血病の発生率や死亡率との関係、すなわち線量影響関係から求められたリスクはきわめて過小評価されたものとならざるをえないのである。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5838:160102〕
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