史上最悪の国際協定=TPP 瞬間風速情報:日本農業を安楽死させ、日本の「食」を破壊する & 「TPP協定の全体像とその問題点 ― 市民団体による分析報告 ―」
- 2016年 2月 7日
- 評論・紹介・意見
- TPP田中一郎
史上最悪の国際協定=TPPの「瞬間風速情報」です。まず最初に、昨日(2/5:
金)、東京・水道橋の韓国YMCAにおきまして「報告集会:TPP協定の全体像と
その問題点 ― 市民団体による分析報告 ―」が開催されました。下記はその際に集
会を司会された内田聖子さんからのメールの転送です。まずはこれをご覧ください。
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●(メール転送です)内田聖子のTPP交渉ウォッチ!vol.12
「TPP協定署名」―新たな闘いのスタート―
2015年10月の大筋合意後、条文案の公開を経て2016年2月4日、ニュージーラ
ンドにてTPP協定の署名式が行なわれた。参加国閣僚が出席する中、日本からは現
金授受問題で辞任した甘利明経済再生担当相の代わりに、高鳥修一内閣府副大臣が参
加した。甘利氏の後任・石原伸晃氏も高鳥氏も2年前までは「TPP断固反対」を掲
げていたにもかかわらず、である。
署名式の前からニュージーランドには現地の団体・個人はじめ 米国やオーストラ
リアなど各国の市民団体が入り、署名式の行なわれたホテル前で大規模な抗議デモを
行なった。先住民族マオリの人びとも参加しながら、「TPP署名は許されない!」
と訴えるデモは最大で2万人規模となった。
5年以上にわたる交渉の結果至った署名は、各国の人びとの反対や懸念の声を無視
する形で無理やり作られたものと言える。どの国でも正確でフェアな影響評価や詳し
い説明責任を求める声はさらに高まっている。そんな中で署名だけが進んでしまった
わけだが、今後は否応なく、各国内での批准手続きというプロセスに入っていかざる
を得ない。ニュージーランドでのデモに呼応する形で、各国市民は「新たな闘いの始
まり」を宣言した。
日本では今国会での批准審議が予定されている。しかし米国では少なくとも11月の
大統領選挙後にならなければ議会にTPP協定が諮られる目処は立っていない。国会
での十分な議論が必要であることは言うまでもないが、急ぐ必要のない批准を早々に
済ませたいと渇望する安倍政権の姿は、世界の目から見れば異常である(さらに言え
ば中身の議論もないまま対策予算だけを通してしまった国など他にはない)。
TPPの中身はもちろんのこと、私たちはこの非民主的な手続き自体に対しても強
く批判していかなければならない。「国会軽視」は他のどのイシューにも共通する問
題だからだ。改めて、TPP批准阻止に向けて、多くの方々にもっと関心を持ってい
ただき、様々な行動や発信をご一緒したいと強く 願います。
●なおTPP協定文の分析レポートはPARCの下記サイトからダウンロードページ
できます。
http://www.parc-jp.org/teigen/2016/tpptext201601.html
http://www.parc-jp.org/teigen/2016/TPPtextanalysis_ver.1.pdf
(本報告書はご自由にダウンロード・コピーいただいて結構です)
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(田中一郎コメント)
この日本では、上記記載の「署名式の前からニュージーランドには現地の団体・個
人はじめ 米国やオーストラリアなど各国の市民団体が入り、署名式の行なわれたホ
テル前で大規模な抗議デモを行なった。先住民族マオリの人びとも参加しながら、
「TPP署名は許されない!」と訴えるデモは最大で2万人規模となった。」を報道
したマスコミがあったでしょうか? こんな国でTPP協定を破棄させていくことは
容易なことではありません。もちろん政治のことも含めて、自覚した市民が知恵も力
も振り絞って頑張るしかありません。このままいくと、日本はアメリカの植民地とな
り、アメリカの多国籍型巨大企業と、それとタイアップして事業を進める悪質な日本
の巨大企業とによって、徹底して「搾り取られる」ことになるでしょう。言い換えれ
ば、国が事実上、滅び去ることを意味しています。断固として、これに立ちはだかる
ことが求められているのです。
(1)TPP 万全の国内対策を(農業協同組合新聞 2016.1.30)
(2)TPP12ヵ国署名 農業 大幅自由化へ(日本農業 2016.2.5)
(3)「TPP的世界」から守るべき大切なこと(農文協論説委員会『現代農業
2015.12』)
(4)TPP反対は次世代への責任(農文協論説委員会『現代農業 2016.3』)
(5)TPP このまま批准させてはいけない(鈴木宣弘東京大学大学院教授『現代
農業 2016.3)』
(6)TPP協定案全文から読み取れる恐るべき暴力性(内田聖子『現代農業 2016.
3』)
(7)TPP「48時間通関制度」、脅かされる食の安全(小倉正行『食べもの通信
2016.2』)
(8)TPP協定案 弁護士ら分析、全農産品 関税撤廃の恐れ、除外規定なし 国も
認める(東京 2016.2.2)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201602/CK2016020202000136.
html
≪関連サイト>
(1)TPP反対は次世代への責任 この国の医・食・農・労働を守る16氏の提言
-農山漁村文化協会/編 金子勝/〔ほか執筆〕 本・コミック : オンライン書店
e-hon
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033394054&Acti
on_id=121&Sza_id=B0
(2)【ご案内】2-5(金)報告集会 TPP協定の全体像とその問題点 ―市民団体によ
る分析報告― TPP交渉差止・違憲訴訟の会
http://tpphantai.com/info/20160201-announcement-of-tpp-analysis-report/
(3)山田正彦氏オフィシャルブログ
http://ameblo.jp/yamada-masahiko/entry-12121699233.html
(田中一郎コメント)
今回ご紹介した各情報は、特に難しいことはありませんので、それぞれご覧いただ
ければと思います。まず、特にご注目いただきたいのは、上記の「(4)TPP反対
は次世代への責任(農文協論説委員会『現代農業 2016.3』)」です。ここにある石
川県の農家・西田栄喜さんの言葉を抜き出してみます。私たち都会に住んで、いわゆ
る飽食状況の中で愚かな消費選択を続けている消費者とはちがい、生産者・農家が感
じ取るTPP協定の本質は鋭いものがあります。とても貴重な発言だと思います。
(一部抜粋)
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「大筋合意を受けて日本のマスコミは農産物が安くなるの大号令。まるで既成事実を
急いで作るかのように。そして国もまだ正式合意ではないのに対策をすでに打ち出し
ています。畜産対策や備蓄米を増やす等々。その道に進んでおいて対策なんて、意味
がわかりません。ただ見えてくるのは金で解決すればいいという発想です。農産物を
金の観点だけで語っていいのでしょうか。人は食べないと生きていけません。食べも
のが「高い」とか「安い」とかいうのは食が溢れていて選べる立場だからこそ。そん
な状況がずっと続くと信じて疑っていないところが悲しくもなってきます」
「TPPが正式合意されても日本の農家がすぐにつぶれてしまうということはないか
もしれません。それでも遺伝子組み換え作物や、成長ホルモン剤がたっぷり入った肉
がこれまで以上に入ってくることでしょう。私が一番危倶しているのはタネの特許を
おさえられ、遺伝子組み換え作物しか育てられなくなる、そして家庭菜園すら自由に
できない時代が来るかもしれないということです。こんなことは誇大妄想であってほ
しいと思いますが、実際にアメリカではそういったことが進行しています。TPPの
問題は、(今と将来をつなげて考える)想像力の問題でもあります。いざ何かあって
も一度失った農地をすぐ取り戻すことはできません」
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私は、この西田さんのことばに非常に共感を覚えます。農業を農産物生産工場くら
いにしか認識していない今の多くの「飽食」日本人の耳に、拡声器でねじ込んでやり
たいくらいの重要な格言です。次に、同じ論文の中にある安田節子さんのTPPと食
の安全に関する部分もご覧ください。少し長いですが、これもまた非常に重要です。
史上最悪の国際協定TPPとは、日本農業を時間をかけて安楽死させるとともに、同
時並行で、私たちの「食」を「安全性」「健康」「栄養」「持続可能性」「循環性」
「生物多様性」などの「食の根源」のところから破壊していく、とんでもない「悪魔
の協定」であることがわかります。
そして、もちろん、TPP協定は農業だけに関係するのではありません。私たちの
全生活・全存在が、アメリカの多国籍型大企業とその下僕たち(日本の大企業など)
に生贄としてささげられる、「食いもの」にされる、「草刈り場」とされることを意
味しているのです。TPP協定を進める売国奴たち、この連中を一刻も早く政治や官
僚の世界、あるいはマスコミや学者の世界から追放する必要があります。自国を愚か
にも喜びながら破壊していく「自殺願望」とでもいうべきもの、それが市場原理主義
アホダラ教のお囃子に乗って踊り狂いを始めているのです。
(一部抜粋)
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本書ではこの間題について安田節子さん(食政策センター・ビジョン21代表)が恐る
べき実態を報告している。代表的な例をいくつか紹介すると、
(1)ポスト・ハーベスト農薬
日本ではポスト・ハーベスト(PH)農薬は禁止されているが、TPP日米協議の
交換文書によれば、防カピ剤をPH農薬として容認することが義務づけられた。今
後、国内残留基準と比べて5倍から200倍も高い(国立医薬品食品衛生研究所「米
固と日本の農薬使用基準の対比」による)PH容認の米国基準を次々受け入れさせら
れる危険性が高い。
(2)牛肉の成長ホルモン剤
米豪両国では牛に合成成長ホルモンが使用されている。世界的には合成ホルモン剤
残留牛肉の輸入禁止がEU、ロシア、中固などを筆頭に広がっている。日本は国内措
置として禁止だが、検疫検査はされていない。そのため先進国で最大のホルモン剤汚
染牛肉の輸入国なのだ。2009年日本癌治療学会学術集会で藤田博正医師らが発表した
食肉中の成長ホルモン(エストロゲン)調査では、米国産牛肉の脂身には日本の140
倍、赤身では600倍の残留だった。牛肉消費量最多の米国では乳ガン、前立腺ガンの
発症数が極めて高い。日本も輸入牛肉の消費量と並行するように乳ガン、前立腺ガン
を含むホルモン依存性ガンが急速に増加している。牛肉関税引き下げにより、日本国
民は汚染牛肉の一層の消費を押し付けられることになる。
(3)赤身増量の飼料添加物 塩酸ラクトパミン
牛や豚の成長促進剤で肉の赤身が増える飼料添加物「塩酸ヲクトパミン」がTPP
参加国の米国・カナダ・メキシコ・豪州で広く使用されている。米国食品医薬品局
(FDA)の報告書では、2002年から11年の九年潤でヲクトパミン添加の飼料により
死亡した豚の数は約22万頭に上っている。人間にも吐き気、めまい、無気力、手が震
えるなどの中毒症状が出たり、心臓病や高血圧患者への影響が大きく、長期摂取で悪
性腫蕩が誘発されるなどとして世界160カ国では使用禁止輸入規制となっている。日
本は国内使用を認めておらず、輸入肉には残留基準値を設定しているが、検疫検査は
されていない。ほとんどのベーコン・ハムなどは輸入豚肉を原料としており、残留が
懸念される。
(4)養殖魚 チリ産サケなど
家庭での購入が一番多い輸入サケ・マスの総量の四割を占めるチリ産サケ。チリの
現場ではエサの大量投入の残滓や尿尿などによる海洋汚染、海ジラミに対する殺虫剤
やウイルス、バクテリア感染対策の殺菌剤・抗生物質の投与が行なわれている。2005
年コーネル大学は、養殖サーモンが天然サーモンよりダイオキシンなどの有害物質を
はるかに多く蓄積しており、食べ続けると幼児にIQの低下や発育障害をもたらす恐
れがあると発表、年六回以上は食べないよう警告した。
(5)遺伝子組み換え(GM)食品のさらなる拡大
このたび政府が発表した「TPP協定の概要」では、GMの承認促進や違法なGM
種の混入について緩和を図ること、またパイオ企業が作業部会に参加することを規定
している。今後、規制撤廃で外資を含む企業が日本の農地でGM作物生産を始めれ
ば、国産優位は失せてしまう。そして「知的財産権強化」のルールのもとで、農家は
交雑であっても遺伝子特許侵害として訴訟の餌食にされる可能性が出てきた。企業は
特許権を盾に、安全審査のデータを「非開示」にすることがまかり通るようになる。
(6)GM表示
「TPP協定の概要」のTBT(貿易の技術的障害)章には、安全性評価手続きの
作成に利害関係者(=米国企業ら)が参加することを認めるとあり、参加する作業部
会の規格・安全性評価手続きは米国企業の意向に沿うものになるだろう。政府はGM
表示は変わらないと説明する。しかし米国企業が日本の任意表示「遺伝子紐み換え不
使用」によってGMが避けるべき悪いものとされ不利益を被るとしてISDS条項に
よる提訴やTBT条項を使って撤廃させる可能性があることを政府は否定していな
い。市中に出回る食品のGM表示はほとんどが「不使用表示」だ。これが消費者の選
択の目安となっている。これがなくなれば選択権を奪われる。日本のGM表示は今で
は発展途上国よりも遅れている。食用油はじめ異性化糖などGM使用なのに表示され
ない食品が多数ある。しかし表示の拡充はTPPで絶望的になる。
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なお、安田節子さんのサイトは下記です。
●安田節子ドットコム
●安田節子氏「食の安全はいま」@TPPに反対する人々の運動(2014.10.
14) – YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=4iPeb5126H0
●安田節子氏緊急講演!TPPでどうなる?遺伝子組み換え食品 – Facebook
https://www.facebook.com/events/1401970560084217/
●安田節子さんの著書
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/List?cnt=1&mode=speed&spKeyword=%88%C0%93%63%9
0%DF%8E%71&pageNumber=0&totalCnt=11&dispCnt=20&target=1&button=btnSpeed
それから、最後に申し上げておきたいのは、上記の別添PDFファイルの文献のう
ち、(1)と(2)は農協系統のものであり、(3)~(7)は非農協系統のもので
す。一見してお分かりいただけるように、農協系統は、まだTPPが批准もされてい
ないうちから「万全の国内対策を」だとか「農業 大幅自由化へ」などと、いったい
どっちを向いているのかわからない、まるで自民党のTPP推進を側面から応援する
ような報道=生産者・農家組合員向けの情報伝達を、10月のいわゆる「大筋合意」以
降、ずっと続けているのです。そのココロは、おそらくは、自分たち農協組織の温
存・存続を最優先とし、支配政党である自民党にくっついていることが自分たちの組
織にとっては最も「有利」であると認識しているということを意味しています。
そして、その場合、肝心の日本農業や日本の生産者・農家組合員は二の次にされ、
所詮は自分たち農協組織の商売や事業の相手=お客様程度にしか認識されていないの
です。TPPが日本農業を安楽死させ、日本の「食」を根底から掘り崩し崩壊させ、
従ってまた、今日の大半の生産者・農家を没落させ、または離農させていく、そうい
う最悪の国際協定であるにもかかわらず、もはや「TPP協定破棄」を主張しないと
いうわけです。もちろん、農業への十分な政策補助さえあればいい、という態度です
から、TPP協定が農業以外の分野(特に医療、労働、環境、保険・金融、地域振興
などの分野が深刻)に対しても決定的にネガティブな影響を与え、日本という「国の
かたち」を変えてしまうかもしれないと言われているにもかかわらず、そんなことは
ドーデモエーかのごとく、農業への(というよりは農協が関与できる農業政策への)
十分な財政支援が最重要だと主張するのです。これでほんとうに地域や生産者・農家
の協同組合=協同と共同の組織と言えるでしょうか。
農協は全国に700近くありますから、上記で申し上げたことは、全国すべての農
協にくまなく当てはまることではありません。今の全中を先頭とする農協系統のTP
P協定に対する方針ややり方を、必ずしもいいとは思っていない農協も少なくありま
せん。私は一刻も早く、そういうホンモノの農協が力を合わせ、農協系統内に存在す
る、今日の安倍・自民党にへばりついて甘い汁を吸おうとたくらむ日本農業への配信
者たちを退けてほしいと願っています。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5888:160207〕
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