バーニー・サンダースの善戦健闘 - 安倍政権を撃つための教訓に -
- 2016年 2月 12日
- 時代をみる
- アメリカ大統領選半澤健市
《今日ここから政治革命が始まった》
私はバーニー・サンダースの演説をCNNテレビのナマ中継で観ていた。2016年2月10日昼頃(日本時間)のことである。前日に行われた米大統領選挙ニューハンプシャー(NH)州予備投票の、民主党勝利者として74歳の「民主的社会主義者」は、NH州の支援者に対して、また一人27ドルの献金で彼を支援する全米の人々に対して、謝辞を述べた。そしてこの国に「政治革命が始まった」ことを強調した。大喝采であった。アイオワ州でヒラリー・クリントンに惜敗した時と同じである。
会場で彼を囲む熱狂的な支持者は殆どが若者である。これより先ヒラリーの敗北演説もみた。女帝は平静を装っていたが、サンダース陣営の活気はなかった。続いて現れた共和党予備選の勝利者ドナルド・トランプの演説は、構成も内容も、非論理的で感情的なものであった。
《非主流こそ主流ではないか》
日本メディアは、トランプとサンダースの二人を、極右・極左として、いずれ有権者は穏健な主流へ回帰するだろうと予想している。そうであろうか。
サンダースの唱える富裕層への増税、所得格差是正、公立大学の学費無償化、メガバンクの解体などは、穏健な社会民主主義で極めて常識的である。ウォール街批判の内容も、銀行業務と証券業務を分離する「グラス・スティーガル体制」への完全復帰を基調とするものである。ヒラリーとの論争でも、サンダースが批判したのは、彼女が金融機関から数千万円の講演料を何度も貰ったり、ウォール街から巨額の政治献金を受けていることへであった。こんな姿勢ではウォール街の支配を打破できぬというのである。
《彼らへの支持はどこからくるか》
米メディアは、出口調査などで若年層のサンダース支持率が80%を超えていること、女性のサンダース支持率がクリントンに優っていること、政治家として信頼性もサンダースが優位にあること、を伝えている。これは驚くに足る事実である。
人々はオバマ政治の8年が、中東紛争解決、金融緩和の出口政策、ウォール街改革、格差是正などに、十分な成果を挙げ得なかったことを知った。このことが、若者と女性からのサンダースへの期待と支持をもたらしているのである。
一方、トランプはどう評価されるのか。
オバマ政権の失政で、閉塞感に苛まれた人々に対して、彼は「強いアメリカ」、「世界一のアメリカ」の復活、それを妨害する者の排除をうたう。それだけを言っている。ナショナリズムの論理に乗っている。典型的な右からのポピュリズムである。
「強い日本」をいう安倍晋三は、トランプに嬉しい友人を見つけることができるだろうか。そうは行かない。NH州の勝利宣言で、トランプは「中国をやっつけろ」、「日本をやっつけろ」、「メキシコをやっつけろ」、「彼らは米国から雇用を奪っている」と叫んだ。
「トランプ大統領」にとって、日本は Beat Japan といってやっつけるべき敵である。一貫して「強い日本」をスローガンとし、「価値観を共にする日米両国」という歴史認識をもつ安倍晋三は、トランプと価値を共有できるのだろうか。
《善戦を希望と教訓にする》
米国の有権者も幻想家ではない。前記調査でサンダースを支持するアメリカ市民も最終的に大統領候補になる可能性はクリントンの方が大きいと答えている。同時にクリントンへの既視感に対して冷酷な眼差しを向けている。
「マイナス金利」は、昨日まで日本の庶民大衆は誰も知らぬ言葉だった。大波乱が予想される今年の世界経済である。経済も政治も一寸先は闇である。今年は何が起こるか分からない年である。
バーニー・サンダースの善戦健闘は我々に希望と教訓を示していないであろうか。(2016/02/11)
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